鳴るは風鈴 木山捷平ユーモア小説選 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061982741

作品紹介・あらすじ

"桜桃忌"に出られなかった事から大宰治を回想する「玉川上水」、敗戦直後郷里に疎開した頃の日常を描き飄逸味を漂わせた「耳かき抄」。表題作をはじめ「逢びき」「下駄の腰掛」「山つつじ」「川風」「柚子」「御水取」など身近の事柄を捉えて庶民のうら哀しくも善良でしたたかな生き方を綴った諧謔とペーソス溢れる木山文学の真骨頂、私小説的作品を中心に新編集した傑作十一篇。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルからして、なんて風流で涼やかな、と思いつつ手にしたものの、風鈴が鳴る理由に意表を突かれました(笑)この外し方が木山捷平節なのではないでしょうか。そんな感じの、タイトルどおりユーモラスな短編を集めた一冊でした。
    「耳かき抄」「逢引き」「下駄の腰掛け」あたりは電車で読みながらニヤついてしまいます。(木山さんの頭の中で発想連携はどう繋がっているのだろう…と思わずには居られない)「柚子」はお気に入り。旅先で出会う女性とのなんやかやの話ではあるのですが、一般的に期待されるような展開にならずに済むのが良いです。そしてふんわりとした気持ちにさせられると云う…。

  • 解説に「・・テーマがない。・・木山捷平にとって表現行為そのものが文学なのだ」とあるが、その通りの一冊。

  • 先に詩集を読んだ際、そのあまりにダイレクトな表現に驚かされ、カルト作家としての印象を大いに植え付けられたのだけど、この短編は普通なまで普通。
    比較対象が漫画家になるのだがつげ義春的だと思った。
    クリエーターの日常を山も谷もオチもなく淡々と描いている。
    そういう空気感が一部にマニアを生んでいるのだと感じた。
    文壇のサブカルレーベル(勝手に命名)である講談社文芸文庫に収められるのも納得。
    解説でも触れられていたのだけど、とにかく「ゆるい」。
    「ゆるい」なんて解説される作家は珍しいと思う。
    この選集は私小説だけで構成されているのだが、どうも私小説というのは陰気になりがち。
    だけどこの人はのんびりしているんだ。
    貧乏で切羽詰まっているはずなのに。
    書くこともないのか同じ話を使いまわしてる感もあって、そこがまた生みの苦しみのようなこともなく。
    なぜか微笑ましく追いたくなる、そんなゆるさ。
    ただ講談社文芸文庫でも品切れ状態で、なかなか多くを読める作家ではなくなっている模様。
    このままカルト作家として消えるかもしれないのは惜しい。

  • 女の人がいきいきしている

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著者プロフィール

木山捷平(1904.3.26~1968.8.23) 小説家。岡山県生まれ。1929年、詩集『野』を自費出版。33年、太宰治等と「海豹」創刊。34年、「青い花」同人。39年、最初の作品集『抑制の日』を刊行。44年、満州国農地開発公社嘱託として長春に赴き、45年8月、現地で応召。敗戦後長春で難民となる。この間の経緯は『耳学問』『大陸の細道』(芸術選奨)『長春五馬路』等に書かれる。96年、木山捷平文学賞創設。著書は他に『苦いお茶』『茶の木』『去年今年』『木山捷平全集』全8巻(講談社)など。

「2016年 『酔いざめ日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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