小林秀雄対話集 (講談社文芸文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061984165

作品紹介・あらすじ

近代日本最高の知性が語る美の真実と人生の妙味

日本を代表する最高の知性・小林秀雄が、戦後に残した歴史的対話12篇――。坂口安吾、正宗白鳥、青山二郎、大岡昇平、永井龍男、河上徹太郎、三島由紀夫、江藤淳、中村光夫、福田恆存、岩田豊雄、田中美知太郎の12名を相手に、文学、美術、作家の生き方等、多彩なテーマを自由闊達に語り合い、人生の妙味と真実に迫る感銘深い1巻。格調高い精神のドラマが交響する第一級の文学史的資料。

小林秀雄
美術や音楽は、僕に文学的な余りに文学的な考えの誤りを教えてくれるだけなのだ。妙な言い方だがね。文学というものは文学者が普通考えているより、実は遥かに文学的なものではない。僕はそういう考えを持つに至った。この考え方は文学的ではないか。せいぜいそんな考えに達するのに高い価を払ったものさ。考えてみれば妙な世界だよ。――<「伝統と反逆」より>

感想・レビュー・書評

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  • 地獄の季節  ランボオ作
    小林秀雄訳
    という、岩波文庫のポケット本を、登録しようと思いましたが、無理でした〜。

  • 退屈な話が続いたと思えばいつのまにかページの端に折り目をつけたくもなる

  • これまでも優れた対談集を読んできた.その中でも素晴らしい対談集に本書は入る.本書に合わせて,これまで読んだ中でいいなと思う対談集は「吉本隆明対談選」「今西錦司の世界(残念ながら絶版)」.

    小林秀雄対話集の中で特に秀逸だったのが青山次郎との対話,大岡昇平との対話,三島由紀夫との対話,江藤淳との対話,田中美知太郎との対話.見てわかる通り,ゲスト自体が超大物.小林秀雄の対談の特徴は対談相手の知的水準,教養が群を抜いて高いこと.

    例えば,ごく普通のレベルの(例えば村上龍と誰かの対談)対談をトータルポイント100(村上 vs. 対談相手 : 60vs.40→100)とすると,

    吉本隆明の対談集だと 吉本 vs. 対談相手 : 150vs.100→300

    といった感じで相乗効果でもって,ぶっちぎった面白さになる.

    ところが小林秀雄だと 小林 vs. 対談相手 : 150vs.150→300

    という形になる.相乗効果というものについてははっきり言ってダメだ.個人が適当に話を合わせながら自分の意見を語ってるだけ.でも,個人の力がオニなだけに,凄まじい対談になっている.

    一方で面白いのが今西錦司. 今西 vs. 対談相手 : 200vs.60→260

    って感じ.今西錦司という人はともかくすごい.ぶっちぎっている.書き表すことができないほどともかくぶっちぎっている.

    小林秀雄対話集,吉本隆明対談選,今西錦司の世界 この3冊はオススメだ.ただしちょっと込み入った難しい話は眠くなっちゃう,という人にはお勧めしないけど.

  • この対談集の無類の面白さは何と言っても「教祖の文学」で小林に噛みついた坂口安吾との巻頭の対談だ。こんな真っ向勝負の本気の対談をかつて読んだことがない。文字通り口角泡を飛ばして激論する二人の形相が目に浮かぶ。それでいてお互いあっけらかんとしているのが気持ちいい。

    冒頭「俺はお前さんの何とか論って云うのを何とも思ってない」という小林の気遣いともとれる発言に対し、「あれくらい小林秀雄を褒めてるものはないんだよ」と安吾が応じているが、これは決して社交辞令ではない。二人の偽らざる気持ちだと思う。

    生身の人間を文学のど真ん中に据えた安吾と古典や美術品に沈潜する小林とでは文学観は正反対である。だから議論は噛み合わないのだが、噛み合わないところが実に噛み合っている。二人とも中途半端な妥協に目もくれず、一歩も引かないのは互いに認め合ってるからだろう。

    何を認め合っているのか。文学への情熱であり、己が血肉で文学に対峙する姿勢だ。そして二人とも文学自体を信じてはいない。信じているのは文学する心だけだ。だから文学観の違いなど大したことではない。激しくはあるが実に清々しい対決である。他の対談もそうだが、会話には文章では見えにくい人間的な魅力や度量、時に弱さが出るから面白い。小林秀雄という人は特にそうだ。

  • 退屈だからこそ気づけるものがある。
    日々を捉え直す。



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    【要約】


    【ノート】

  • 了。

  • 部分的かつ個人的な感想。批評というメソッドで、自分流の肖像画を描くことが結局達したい目標なのだと語る小林に対し、「つくるか、信仰するか、どっちかですよ。」と食ってかかる坂口安吾。いかにも彼ららしすぎて、「え、これ、誰かが妄想で書いた同人誌じゃないよね?本当にあった対談だよね?」と疑いを持ってしまった(笑)。昔、小林秀雄の書いたランボオ評を読んで、こんな風にランボオを好きになってみたい、こんな風に鑑賞したいと思ったのだが、実際原文でよんで、同じようには感じられなくて(いいとは思ったけど感動のツボが違った)、がっかりしたのだけれど、それはジヴェルニーの庭園を見ても、モネの「睡蓮」を見たときのような感動はないのと一緒で、結局私は彼のタッチが好きなのだな、と思った次第。

  • 小林秀雄が、率直に文学を、批評を、美を、レベル高い対談相手を得て語る。
    親友:青山二郎との対談は、仲の良さがあまりに出ていてほほえましい。
    青山の話に持っていこうとするも、うまく自分自身のことを語らざるをえないようにしむけられてしまう姿。
    正宗白鳥にずいぶんご執心だったとは知らなかった。今度読んでみよう。
    解説にもあったが、三島との対談で、「才能の魔」と批評しているところはさすが鋭い。
    酔っ払いながら話しているんだろうなというところもあるが、そこもまた面白い。
    チェーホフもほめていた。読んでみよう。
    作家になれず、批評家となったことに何らかの思いはあるようではある。
    もう少し追いかけてみたい。

  • 2010/1/10図書館で借りる
    2010/

    メモ:小林秀雄(1902/4/11~1983/3/1)

    ・伝統と反逆 坂口安吾対談

    両者、何度も喧嘩口調になってます(笑

    坂口:僕はね、人間の世界というものは自由な世界じゃないと思うんだ。ほんとうの自由ということは、自由をどう料理するかというようなものじゃない。芸術なんていうものは、いかに自由を自分で料理するということが不可能であるか、それをわからせてくれる仕掛みたいなものだ。自由を与えられれば与えられるほど生きるのは辛いんだよ。縛られれば縛られるほど生きるのはやさしいんだよ。ほんとうに自分で芸術を自由に作ってゆく世界というものは、誰の力にもないよ。小林さんの評論にだってないし、また小林さんは、そこのところをよく知る人だと思うのだ。


    大作家論 正宗白鳥対談
    「形」を見る眼 青山二郎対談

    小林:たとえばどこかの作家の日常生活を見て、何も作品なんか読む必要はないと思うよ。日常生活の方が面白いのだ、自在なんだ。そういうことは大体の人において正しいね。たとえば島木健作が僕のそばにいれば、僕は島木健作の作品なんか読まない。あまり抽象的でつまらないんだ。日常生活の方が豊富だからね。
     やはりそういうふうに見ることもできる。人をそういうふうに見て楽しむということ、つまりそれが付き合いということだ。付き合いの嬉しさというのは、いつもその友達の芸術表現よりもなまなましい感情があるんだよ。それは生きるということの喜びなんだ。
     作家というものは、それで足りないんだよ。何かとんでもないあこがれをもっているのだね。何もかも自分で新しくやり直したい、やり直して、すっかり自分の手でつくったものの中に、ある世界を発見したいのだね。そういう何かまったく実生活じゃないものがある。
     まあこれも疑えば疑うことができる。つまりそういうふうな芸術の中に命を見出したいという傾向は、僕はいわゆる浪漫主義の運動から始まった一つの思想だと思う。芸術なんていうものは何でもなかった、ただ生活というもの、人生というものをどんどんよくして、喜びを増すその手段にすぎなかった。芸術なんてものは昔そういうものだったんだよ。ところがだんだん浪漫派からそうじゃなくなって、今度は芸術のために生活を犠牲にしようという思想が生じたんだ・・・・・・。僕らはそういう思想からまだ抜けずにいるんだ。だから浪漫派芸術の運動というものは非常に大きな運動で、リアリズムの運動でも、象徴派、表現派、何でもいい、あらゆるものが浪漫主義の運動の子供なのだ。そういうものが生んだ子供で、僕らはまだそういうものから抜けていない。

    小林:実感なんてものはね、人間が瞬間しか味わわれない恵みなんだよ。僕はそういうふうに見る。つまり生活そのものがもしも芸術になったら、キリストみたいになっちゃうよ(ここで私は形は違うが、三島由紀夫を思い浮かべた)。

    ・現代文学とは何か 大岡昇平対談
    批評について 永井竜男対談
    美の行脚 河上徹太郎対談
    ・美のかたち 三島由紀夫対談
    ・誤解されっぱなしの「美」 江藤淳対談
    白鳥の精神 河上徹太郎対談
    ・文学と人生 中村光夫対談 福田恒存対談
    日本の新劇 岩田豊雄対談
    教養ということ 田中美知太郎対談

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著者プロフィール

小林秀雄
一九〇二(明治三五)年、東京生まれ。文芸評論家。東京帝国大学仏文科卒業。二九(昭和四)年、雑誌『改造』の懸賞評論に「様々なる意匠」が二席入選し、批評活動に入る。第二次大戦中は古典に関する随想を執筆。七七年、大作『本居宣長』(日本文学大賞)を刊行。その他の著書に『無常といふ事』『モオツァルト』『ゴッホの手紙』『近代絵画』(野間文芸賞)など。六七年、文化勲章受章。八三(昭和五八)年、死去。

「2022年 『戦争について』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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