定家百首・雪月花(抄) (講談社文芸文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061984578

作品紹介・あらすじ

戦後、リアリズム至上の伝統歌壇に激震を起した前衛歌人の中でも歌と詩論両輪の異才で光芒を放つカリスマ塚本邦雄。非在の境に虚の美を幻視する塚本は自らの詩的血脈を遡行、心灼かれた唯一の存在として宿敵・藤原定家を見出す。選び抜いた秀歌百首に逐語訳を排した散文詞と評釈を対置、言葉を刃に真剣勝負を挑む「定家百首」に加え、『雪月花』から藤原良経の項を抄録。塚本邦雄の真髄を表す二評論。

感想・レビュー・書評

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  • 無人島に1冊だけ本を携えて行くならば…実に難しい問いなのだが、これを選ぶかもしれない。少なくても最有力候補の1冊である。人麻呂歌の雄渾、あるいは石見挽歌の慟哭もわからないではないが、歌はやはり定家に極まる。妖艶、繊細さを突き抜けた抒情、無限の彼方を指向する象徴性、有心。塚本邦雄の鑑賞文も、歌詠みならではの、しかも当代第1流の解釈者としてのそれである。あらためて、新古今の、そして定家の到達した歌としての境地の高さを思う。「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ」に見られる「非在の美」。

  •        -2005.12.08記
    塚本邦雄の「定家百首-良夜爛漫」は見事な書だ。
    「拾遺愚草」3564首を含む藤原定家全作品四千数百首の中から選びぬいた秀歌百首に、歌人塚本邦雄が渾身の解釈を試みる。
    邦雄氏の本領が夙に発揮されるのは、一首々々に添えられた詩的断章だ。
    一首とそれに添えられた詩章とのコレスポンデンス=照応は、凡百の解釈などよりよほど鑑賞を深めてくれる。
    たとえば、百首中の第1首ではこうなる。
    「見渡せば花ももみぢもなかりけり浦のとまやのあきの夕ぐれ」
      上巻「二見浦百首」の中、「秋二十首」より。新古今入選。
       はなやかなものはことごとく消え失せた
       この季節のたそがれ
       彼方に 漁夫の草屋は傾き
       心は非在の境にいざなはれる
       美とは 虚無のまたの名であったろうか
    以下、成立背景なり、古来からの評釈なりに、時に応じ言及しつつも、あくまで一首の表象世界にこだわりぬいた歌人塚本邦雄ならではのコトバのタペストリー=織物が眼も綾に綴られていく。

  • 定家から選んでいるが、ほぼ塚本邦雄氏の世界観が全面に出ている感じがする。正岡子規とか読むと新古今とか読むのためらうが、こういうのがあるとまた安心。

  • 塚本邦雄は歌を詠む人であり、そして、それと同等に歌を見出す名人でもある、というのは前から聞いてはいたけれど、これほどまでとは!という驚嘆が大半を占めてしまう。そしてアツい!暑苦しいほどにアツい!
    と、普段なら避けている言葉遣いをしてしまうほどに、うたを愛している、定家のうたを憎むほどに愛している、ということがひしひしと伝わってくる本。

  • 定家の真髄がわかる。
    後鳥羽院より定家派です。

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著者プロフィール

1920年生まれ。2005年没。歌人。51年、第1歌集『水葬物語』刊行、以後、岡井隆、寺山修司らと前衛短歌運動を展開。現代歌人協会賞、詩歌文学館賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞、現代短歌大賞など受賞。

「2023年 『夏至遺文 トレドの葵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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