危険信号

著者 :
  • 講談社
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062006170

感想・レビュー・書評

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  • 阿刀田高の秀逸ショートショート集。「冷蔵庫より愛をこめて」よりは切れ味は落ちるけど全体的にほどよく読みやすい。「女ごころ」は最後にやりとはせずにはいられなかった。これだけでも読む価値はあるかも。でも最初の「子宝温泉」がよくわからないのだが、自分の読解力がないからだろうか。

  • これも昔何度も読み返した本。
    読んでいる内に話の筋やラストをうっすらと思い出す話ばかりでした。
    何気ない話が多いんですが、意外に心に残る本だったのかな~と今回読み返して思いました。
    これも阿刀田高さんの他の多くの短編集のように、男女の機微を描いた、不思議で奇妙な話ばかり。
    全12話です。

    『子宝温泉』
    雪深い地にある「子宝温泉」。
    名前の通り、子供が授かるというふれこみの温泉で、その夜も何組かの男女が訪れていた。
    子供が欲しいと思うカップル。
    出来ると困ると思うカップル。
    その中に訳ありの一人の男がいた。
    実は彼は恋人を殺し、この地に逃げてきたのだった。

    どことなく幻想的な話です。
    「人殺しは虫のせいだよ」
    「人殺しなんかだれにでもできるものじゃないよ。血の中に虫がいるんだね」
    というある登場人物の言葉が後々きいてくる話。

    『雨あがり』
    亡くなった親友の未亡人をドライブに誘った男。
    実は彼女はかつて男の恋人だった時期があった。
    男は未亡人に未練があり、下心もあり。
    そんな二人がドライブ先に選んだのは親友の墓参りだった。
    しかし、そこには先に墓参りをする美女の姿が-。

    これは読んでる最中にオチを思い出してしまいました。
    それが全ての話とも言えるので、純粋に楽しめなかったのが残念。

    『鳩の血』
    中世のヨーロッパでは現代以上に処女性が重視されていた。
    結婚前に純潔をなくした女性たちは新婚の夫を欺くため、鳩の血を用いて偽りの証とする事があったと言う。
    良い縁談が持ち上がった主人公の女性は真面目そうな相手の男性を欺くため、中世の女性と同じ方法をとるが-。

    この本の中で私が好きなのは次の2話。
    『女ごころ』
    サラ金の返済に困っている女性。
    夫が出張のその日、本当にお金を返すあてがなくて追い詰められていた彼女は夜の街をぶらついていた。
    自分でも器量がいいと自信のある彼女。
    どこかの素敵なお金持ちが自分にお金を融通してくらないか?と思いながら・・・。
    でも、当然、そううまくいく訳はなく・・・。
    ふと予感がして足を止めた宝くじ売り場で彼女は一人の男に声をかけられる。
    そしてその男に言われるままに宝くじを一枚購入する。

    これはタイトルが絶妙な話。
    ものすごく皮肉で、「あ~あ・・・」と思ってしまう。
    宝くじが絡んでくる話って結構好きです。

    『危険信号』
    彼女にはある奇癖があった。
    身に危険が迫るような出来事があると必ず下腹が痛くなるのだ。
    そんな彼女はふと立ち寄った古本屋で一冊の本を見つける。
    それは「実用手紙読本」という本で、そこに挟んであったメモを見て、彼女はその本が知人女性のものだと知る。

    さらにある驚愕の事実に気づいてしまう。
    自分は彼女にはめられていた・・・と。

    これはそれで終わりと思う所、まだ先があり、そこに救いを感じる話。
    最終話で、これが最後の話という事で何となく小気味の良い読後感になった。
    よく出来た話だと思う。

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著者プロフィール

作家
1935年、東京生れ。早稲田大学文学部卒。国立国会図書館に勤務しながら執筆活動を続け、78年『冷蔵庫より愛をこめて』でデビュー。79年「来訪者」で日本推理作家協会賞、短編集『ナポレオン狂』で直木賞。95年『新トロイア物語』で吉川英治文学賞。日本ペンクラブ会長や文化庁文化審議会会長、山梨県立図書館長などを歴任。2018年、文化功労者。

「2019年 『私が作家になった理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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