- Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062026673
作品紹介・あらすじ
ピッツァもクリーネックスも知らなかった。アメリカへの憧れと、怠惰な日常のはざまでゆらめく30年代の青春。第1創作集!
感想・レビュー・書評
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つらくなった時に読みます。心の糧。
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年の終わりに熱を出し、横になりながら読んだ本。
内容はどちらかと言えばよくある、将来やりたいことがなくもないが、何となく踏み出す気にもなれない主人公の内面を描いたもの。こうした本は毎回必ず自分との共通点があり、世の中の男性は皆同じなのか?と考えてしまいそうになる。
今の時代で言ってしまえばニートに毛が生えたくらいに過ぎない重吉だが、喫茶店でコーヒー飲みながら読書をし、たまに翻訳をしてみたりして、通い妻のような椙枝がいるあたり、なかなかの勝ち組なのかもしれない。
タイトルの遠いアメリカ、という意味は読み進めている内に、なんとなく共感出来た。重吉のように、大学時代は無性にアメリカが気に入り、洋画や雑誌をよくみたものである。毎日がどこかつまらなく、遠いアメリカを想像することで色々考え事をしていたのかも。
こういう物語ではカップルは最後には別れてしまうことが多いが、重吉に関しては就職も上手くいって、椙枝とも結婚秒読みであり、いい気分で読み終えられて良かった。 -
文章のテンポが軽快でとてもよかった。
若い人の将来に対する不安を感傷的になりすぎずにフラットな感じで描いたいい作品だった。 -
巧いと思うけど★3つかなぁと思いながら読んで,最終盤でぐぐぐと上がった。年齢は10以上も上だけど,自分の時と重ねて考えて,嬉しいというのとは違うけど何ともいい気分。みんなそう感じるのではなかろうか。
当時の情景などすごく想像しながら読み進めたけど,それも技なのかなぁと思う。もっと映画を見ておけば,と,再び後悔。 -
デートのとき、喫茶店のカウンターに座った主人公が「今日読んだペンギンブックの小説のなかにハンバーガーとコカコーラというのが出てきたんだけれど、おいしそうなんだ。どんなものなんだろう」と言うと、恋人はもちろん喫茶店の親爺までも加わって、ああでもない、こうでもないと盛り上がるシーンがあるが、まさしくアメリカが遠かった時代を思い出させてくれる一冊である。
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96回1986年(昭和62)下直木賞受賞作。昭和日本の復興期、定職を持たずにアメリカ文学と恋人を糧にその日を生きている青年の話。アメリカナイズの言葉だらけで冒頭はとっつきにくいが、慣れてくるとそれがカッコ良く感じてくる。まるで夏目漱石の『それから』を片岡義男アレンジでかいた風を覚えた。おすすめ。ヒロイン椙枝(すぎえ)がかわいらしい。
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50年代のモラトリアム。さらっと読めて、時代の空気が伝わる。
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アメリカが、まだ憧れでもあり希望でもあった時代の青春。著者自身の軌跡でもある。なにもかもが不安定で、でも夢だけはいつでもあって、なくしたくないものを握りしめながら焦れる姿。「そういう先のことがらはすべて濃い闇の中にかくされている。明日にもこわれてしまうかもしれないことを二人は知っている」