読書画録

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (155ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062042550

感想・レビュー・書評

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  • 読んだ本のイメージを絵にしているのではなく、作品もしくは作家に関係ある場所の現在の風景をスケッチしている。

    たとえば、樋口一葉の『たけくらべ』には「旧吉原大門あと松葉屋の脇をながめたところ」、
    表紙の絵は梶井基次郎の『檸檬』に添えられた絵で、
    「京都三条と麩屋町の交わったところ、絵の左手前の方角にもと丸善があった。『檸檬』の余韻を求めてここまでやって来た人は、さぞ多かったことだろうと思う。」とある。

    出不精の私は作品に登場する場所へわざわざ行きたいと思うことは滅多にない(浅草にはちょっと興味があるけど)。
    だから読書感想に添える絵として場所のスケッチという発想が出てこなかった。
    添えるとしたら、装丁にあるような「内容のイメージ」を描くというのしかなかった。
    でも、安野さんのスケッチを見ると、こういうのもいいなと思った(まぁそれは安野さんのスケッチだからいいのだとも思うけど...)。


    自分の尊敬する人の読書感想、とくに安野さんのように素晴しい画家さんの読書感想は興味がある。
    どんな本を読んでどんなことを感じたのか。
    期待が高かった分、この本はちょっとだけ拍子抜けした。
    作品の説明で大半を占めているものが少なくない。そしてすべて3ページで収めているからさっぱりし過ぎて物足りなさを感じた。
    さすがに『檸檬』は画家としての安野さんの心持ちが書かれていたけど、他は概要のような紹介のような印象がした。

    それでも、読んだことのない本ばかりが紹介されていて読んでみたいと思った。

  • 「読書画録」安野光雅
    読書エッセイ集。特になし。

    安野さんが読んできた文学を拾い上げ、それにまつまる小咄と、想起される風景スケッチをまとめた随筆集。
    特別なことはないけれど、本が好きで、文学の醸す雰囲気と共感してらっしゃる人生観をひしひしと感じます。
    とても穏やかな語り口は、僕が安野さんを(その絵だけでなく)好きな理由のひとつ。
    こんな小父さんになりたいなあ。

    あとがきが秀逸で、文章世界の重なりぐあい、共感度がその作品に対する私のおもしろさだということ。良く分かります。
    書いた者も読んだ者も人それぞれの感性があって、そうして文章世界を拡げて行くことができると思うのです。

    また、文章/文字が映画や地図に対してデジタルで、単なる記号でしかないという考え方。
    確かにその通りでとりたてて新奇な考え方ではないのだけれど、この文脈で取り上げられたことで非常に実感を伴います。
    デジタルな文字、単語、文章の並びから思い描く文章世界のアナログさ。言い得て妙!です。

    本作を読んで、岡倉天心『東洋の理想』、梶井基次郎の『檸檬』が読みたくなりました。
    あと、芥川龍之介『奉教人の死』の項の、脱力する俗色が、ユーモア。(4)

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著者プロフィール

安野光雅(あんの みつまさ):1926年島根県津和野生まれ。画家・絵本作家として、国際アンデルセン賞、ケイト・グリーナウェイ賞、紫綬褒章など多数受賞し、世界的に高い評価を得ている。主な著作に『ふしぎなえ』『ABCの本』『繪本平家物語』『繪本三國志』『片想い百人一首』などがある。2020年、逝去。

「2023年 『文庫手帳2024』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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