少女ソフィアの夏

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制作 : Tove Jansson  渡部 翠 
  • 講談社 (1993年11月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062066914

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少女ソフィアの夏の感想・レビュー・書評

  • 少女ソフィアとおばあさんの日常を綴った物語です。舞台はフィンランドの湾に浮かぶ多島群の中の小島。著者自身、30年近くバルト海に浮かぶ小島で暮らしていたことは、映画や書物で紹介されているので、ご承知の方も多いと思います。
    このお話にはモデルが存在します。ソフィアの父親がトーベ・ヤンソンの弟ラルス、おばあさんは画家であった著者の母親、ソフィアは姪っ子(ラルスの娘)なんだそうです。その他の登場人物についても、著者の身近な人々とエピソードがもとになっていると思われる箇所が、いくつか見受けられます。
    毎年夏の間、ソフィアの家族はフィンランドの多島海域にある小島で過ごします。物語は母親を亡くした幼い少女ソフィアとおばあさんを中心に描かれますが、その距離感が絶妙です。おばあさんは、少女を対等な立場で扱います。気遣いながらもケンカしたり、助け合ったり、反発しあったりするふたりの姿が、ときに優しく、ときに辛辣に描かれています。
    これは少女の夏の想い出話でも、ありふれたほのぼの家族の物語でもありません。人生の終焉にさしかかり、老いと死に向き合っている祖母と、まだ人生を始めたばかりの少女の瑞々しく鋭敏な感受性、人間の営みと自然の驚異、不便さ、素晴らしさなどを対立させることなく、うまく調和させて、同時に描き出すことで、作品にさらなる深みと美しさをもたらしています。また、物語全体になんとなく漂う孤独感は、著者の代表作〝ムーミンシリーズ〟にも通じるものがあるような気がします。著者自ら〝わたしの書いたものの中で、もっとも美しい作品〟とおっしゃっているとおり、とても味わい深い一冊でした。

  • 北欧の人々は短い夏を満喫するために長期の休みを取り、森や湖に出かけて自然の中で過ごすのが一般的であるようです。また、バルト海には小さな島々が多く存在するので、島にあるコテージで過ごす人たちも多いようです。
     この話の舞台もそんな小島でのひと夏となっています。主な登場人物は主人公のソフィアとパパとおばあさんの3人で、おばあさんとソフィアのやりとりを中心に、島で出会った人や起こったこと、感じたことなどが飾らない文体で綴られています。
     ヤンソン自身も一年のうちの数か月を島で過ごしていただけに、その生活ぶりや自然の描写などが素晴らしく、情景がありありと浮かんできます。
     こんな夏休みを過ごしてみたいと思う作品です。

    イカ☆リング

  • へのへのもへじ文庫で借りた本。似た装幀の『彫刻家の娘』は知ってたけど、こんな短編集もあったのか~。本の帯には、トーベ・ヤンソンの写真と「静寂と孤独を心から楽しむ、フィンランド多島海での短い夏の日々」とある。

    少女ソフィアと祖母は、それぞれトーベ・ヤンソンの姪っ子(ムーミン漫画を描いていた弟の娘)と母がモデルだそうだ。フィンランドの多島海(約3万の島があるという)に浮かぶ小さな島で、高緯度の短い夏を過ごすソフィアとパパとおばあさん。巻末には、トーベ・ヤンソン自身が毎夏を過ごしていたという島の写真があって、その写真を見ながら、おばあさんとソフィアはこういう島で、歩き、遊び、けんかをしたのかと思った。

    70の歳の差があるというふたりの関係は、年長だからといばることもないし、年少だからと適当にあしらわれることもないし、どちらかがどちらかの言うままになることもない。読んでいてかなりおもしろい。

    岩をのぼって裂け目のほうへ進んでいくおばあさんに、ソフィアは「そっちは禁止!」とパパに言われていることを言うのだが、おばあさんはこんなふうに答える。

    ▼「知ってるとも。おまえもわたしも、岩のさけめへは行っちゃいけないんだけど、パパはまだ眠っているから、わかりっこないんだ。行こう行こう」(p.10)

    こんな調子で、おばあさんとソフィアは夏の日々を過ごす。ふたりでボートをこいで「私有地 上陸禁止」と立て札のある他人の島へあがりこんだこともある。

    そのときには立て札を見たおばあさんはひどく怒っていた。「えらいちがいなんだよ。ふつうなら、他人さまの島に上陸したりしやしない。なんにもなけりゃあね。でも、立て札を立てたとなると、そりゃあ上陸もするさ。だって、あれではまるで挑戦状だからね」(p.154)と言い、ボートを立て札につないでソフィアにこう言った。「いま、やろうとしていることはね、デモンストレーションなんだよ。つまり、意にも介してないってことを、見せてやるんだ。わかるかい?」(p.154)

    ふたりは、島の別荘に「家宅侵入」もする。そこへ、島の主の社長さんの船がエンジン音をたててやってきた!おばあさんとソフィアは、島の奥にむかって大急ぎで歩き、這って若木の茂みにもぐりこんだのだが、社長さんの連れてきた犬にわんわんと吠えられて見つかってしまう。

    「自然の中にいると、人間は自分をとりもどせます。おとなりどうし、これから、なかよくやっていこうではありませんか…」(p.162)と社長さんは言い、その別荘にふたりも一緒に向かうのだが、先に「家宅侵入」したときにネジをはずした南京錠が置いてあり、おばあさんは「好奇心なんですよ」と弁解する。島ではかぎなどかけないのに、かぎをかけてしめきってしまうと興味をかきたてられてしまうのだと。

    そんなこんなの夏の日々をいろどるように描かれる島の景色を、フィンランドがわからないなりに想像した。たとえばこんな箇所は、3月の終わりに買ってときどきながめている『スキマの植物図鑑』のことをちょっと思い浮かべながら。

    ▼海にうかぶごく小さな島には、土のかわりに泥炭しかないことを、ソフィアは知っていた。泥炭には、海藻や砂や、肥料としては最高の鳥の糞がまじっているので、小島の岩のすきまには、植物がよく育つ。毎年数週間、岩のすきまが花ざかりになり、その鮮やかなことといったら、フィンランドじゅうさがしても、あんなにきれいな色の花はない。多島海域でも本土沿岸の緑ゆたかな島に住む人たちは、気の毒にも、ごくふつうの庭に満足して、子どもには草とりをやらせ、自分は腰をいためながら水くみをしている。ところが海の小島なら、自分のめんどうは自分でみる。雪どけ水をすい、春の冷たい雨を受けたあと、ようやく夜... 続きを読む

  • 少女ソフィアとおばあさんの島での日常。
    すぐに癇癪をおこすソフィアと、それを受け流すおばあさんの対等な会話がすごく良い。

  • とても心地よい本でした。

    心が安心するような「突き放した優しさ」が全編に渡って染み渡っていて、不思議なほど落ち着いた気持ちで読めました。

    ソフィアとおばあちゃんの魅力的な行動と魅力的でない行動を通して、なにかよくわからないけど愛おしい気持ちになる、素敵な本です。

  • YAにしてみたけど、大人でも良いかも。
    ヤンソンさんの物語は独特で、大人でも子どもでも好き嫌いが分かれると思う。
    私は好き。感情の中の骨太さみたいなものが感じられるので。
    ムーミンも原作が好き。アニメは嫌い甘ったるい気がする。

  •  ソフィアという少女と、おばあさんのやりとりがとても面白い。短編集。読むきっかけになった「猫」も大好きですけれど、「ベレニケ」や「テント」「悪者の船」がお気に入りです。
     自然の中で優雅に過ごしたり、花の名前を覚えたり、作り話をしたり、遊びを考えたり。こんな生活してみたい。
     物語に登場するおばあさんというのは、たいてい孫や子どもになにかを教える存在ですが、この本のおばあさんはとても個性的で自分の主張をもっているおばあさん。ソフィアと喧嘩したり、皮肉を言ったりするのがとてもおもしろいと思いました。

  • 「ソフィア」と「パパ」と「おばあさん」の夏の間の島暮らしの物語です。
    ソフィアはトーベ・ヤンソンさんの姪っ子(弟さんの娘さん)で、おばあさんはトーベ・ヤンソンさんのお母さん。この二人の掛け合いがとても面白く、強烈でした。ソフィアが強烈な子供に感じられますが、多分、子供って皆強烈なんじゃないかと思います。そして、おばあさんも強烈。強烈だけどあたたかい感じがしました。

  • 「ムーミン」で有名、トーベ・ヤンソンの作品。
    フィンランドの小島で、孫娘ソフィアと祖母は、
    たくさん会話をします。
    虫について、友人の巻毛について、人生について、
    ケンカもするけれど、二人は仲良し。

  • 私が読んだのはこの単行本ではないようなのだが…。
    トーベ・ヤンソン全集みたいなシリーズで読んだ気がする…。

  • 大好きです。でも最近読み返してないなぁ。また読みたい!
    おばあちゃんと孫のソフィアの島暮らし。
    二人のやり取りが面白いです。おばあちゃん、とってもお茶目で可愛らしいです。

  • ソフィアとそのおばあさんとパパは、夏の始まりとともに孤島に住み、この物語は夏の終わりとともに終わります。ちょっと遅いけど今読み終わって丁度良かったかも。少女ソフィアと邦題は持ってきてるけど、独白はおばあさんだから、多分おばあさんが主人公。おばあさんの目に映る孫娘ソフィアは、時々お転婆で手に負えないものの、気の置けない仲間であり、面白い生き物といった感じ。二人はいつでも仲良しこよしではなく、そのテンポのいい会話の押し合いは、時にぶつかり合いになり、その時々で人生に感じてることがじりじりと研磨され形になる。ソフィアの言葉は突拍子もなく楽しいが時に突き刺さる。『わたしは、ゆっくりと死んでいくものは、なんでもみんなきらいです!』『わたしは助けてあげたいのに助けられないものが、だいきらいです!』「ミミズの研究」として述べるソフィアの上の言葉は私の幼心の部分をはっしと捕らえた。幼いソフィアの発見や憤り・恐れをおばあさんは一緒に楽しみ、たしなめ、ただ聴くだけだったりする。おばあさんには老いというものがのしかかる時がある。それはどうしようもない実感としてのみ嘆息するしかない場合もあるが、「テント」の話ではソフィアがそれを幾分か癒す。夏の北欧のこびないさっぱりとした美しさと二人の会話の滋味深さ、楽しさがぎゅっとつまった夏休みの書だった。オススメ!

  • 西の魔女が死んだの世界観に近いものを感じた。

  • フィンランドの自然のなかで暮らす芸術家一家。少女とおばあちゃんの会話。こんなばあちゃんはかっこいい。

  • フィンランドの多島海に浮かぶ小さな島。短いフィンランドの夏を、そこで暮らす少女ソフィアとパパ、そして、おばあちゃん。その小さくも美しい日々の営みが、生き生きと描かれています。まるで日記を綴るかのように、日常をスケッチした作品。
    美しく、ときに、その絶対的な力を見せ付ける、厳しい北欧の自然。その描写の美しさといったら!もう、私の稚拙な言葉などでは、とても表現できません。
    そして何より、想像力豊かなソフィアとおばあさんの「やり取り」は、ときに、可笑しく、可愛らしく・・・読んでいるだけで、心に火が灯るかのようでした。
    そうそう、「みみず」について、二人が研究論文を書く章は、思わず、声を出して笑ってしまった程でした。
    私があまりに笑うので、息子が読んで欲しいと言い出して、親子で大爆笑。お得意の「在りえねえ〜」の連発でした。
    そうなんです!「在りえねえ〜」ことを想像するって、なんて馬鹿らしく、なんて楽しいんでしょう!
    ああ!そんな当たり前のこと・・・いつの間に、忘れてしまっていたのかしら!!
    まさに、ファンタジーの原点は、この作品にあり!?
    ヤンソンさんは、こうやって、自然の声に耳を澄ませ、想像力をフル回転させながら、暮らしていたんだろうなあ・・・。
    そんなことを考えていたら、この本が愛おしくてたまらなくて、読んでいる途中、何度も、本を抱きしめてしまいました(笑)。トーベ・ヤンソンという作家を、ますます、好きになりました。

  • ムーミンの作家の人の、人間が主人公の小説。教科書に載ってたのが好きで読み始めました。猫のおはなしがだいすきです。

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少女ソフィアの夏の作品紹介

静寂と孤独を心から楽しむ、フィンランド多島海での短い夏の日々。北欧ファンタジーの傑作「ムーミン」の作者の香り高い短編集。

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