猫に満ちる日

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著者 : 稲葉真弓
  • 講談社 (1998年7月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062092869

猫に満ちる日の感想・レビュー・書評

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  • 『作家と猫のものがたり』の(確か…)小池真理子さんがこの「猫に満ちる日」にふれていて、さっそく借りて読んでみた。

    検索して稲葉真弓さん(倉田悠子!)は、最近亡くなり覆面作家だったと発表になったのは去年のことで、はじめて知って少し驚きでした。

    内容は…薄暗く静かで重く海底みたいな感じで猫もの。19歳の猫がマンションの床を這いずり回り、床にキラキラと光る液体の帯をまきながら、においの中で猫と二人きりで暮らす、ちょっとせつないお話だった。

    夜の胞子、漂う箱、竹が走る、朝が二度くる、交歓、七千日、あとがき。

    猫と一体化している女主人公。(たぶん稲葉さん)こんな状況なのに猫は(動物は)最期の最期まで「絶望しない」。体はもう立って歩けないし毛と皮だけの存在、自分で用だって足せないのに最期は力強く、生き生きとしているとさえ思えた。猫と飼い主は表裏一体、一心同体の写し鏡なのかな。猫が自分になったり母親になったりして本当に鏡!

    猫の名は「ミー」。ミーと一緒だった20年間、出会いや別れ、困難も数々あったんだろうと読んでて思ったんだけど、最後はきっとお互いにわかっていたんだろうかな…。

    “思い出せ、思い出せ、足は土を踏むためにあるのだと、私は猫の体を支えながら、自分まで素足になっている。=189ページ=”あたりから、急にじーんときてたまらなくなった。

    文章が詩的で、ねちっこいので読むのに苦労したけど、女の生涯と猫の生涯が重なって、感慨深い作品でした。エロい部分なんて一切ないのに、雰囲気がつやめかしい…のがすごい不思議。なんか濃密で濃厚だった。猫を使っているけど猫は女性に近いものだから、潜在的にそう感じたのかも。小池昌代さんの「タタド」みたいな読み心地。

    読んでいると何か窒息しそうな、溺れそうな感じになるんだけど「猫に満ちる日」だから、海の潮でもないけどやっぱりものが満ちてきて溺れそうになる。(ちょっと重苦しい…)タイトルも読み終えてから納得できた。お次は「ミーのいない朝」。

  • 連作短編集。一話で漂った濃厚な死の匂いがまさかまさか最終話まで続く。そしてまさかの作者の実話を元にしてるというんだから堪ったもんじゃない。きついです。(桐切)

  • 年老い、そして死に向かう猫の存在感と匂い、そして刻まれてゆく記憶。

  • 深夜、仕事から帰る私を、猫はいつも玄関の扉のところで待っていた。闇の中にひっそりとうずくまっている猫を見るたびに、私の心はしなびた袋から弾力のある柔らかな袋へと回復していく。夜気で冷えた体を抱けば、頬や首に触れる毛の1本1本から、迎えられている情感が広がっていくのだった。私は家に帰るのではなく、猫のいる場所に帰っていたのだ。猫に迎えられ、毛に包まれ、舌で顔中を舐められるために。──

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