猫に満ちる日

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062092869

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  • 一人で生きると決めた女性と一緒に暮らす猫の若き日と老いていく日々。

    男と暮らしていた頃に家の外で拾った子猫。
    男と別れることになっても、私は猫と共に暮らし続けた。

    猫が若い頃、お腹に宿した子猫の死が原因で子宮を取る手術をしたこと。
    引越し先のマンションで迷子になってしまった猫。
    老いた母を東京観光に連れ出し、その姿と猫が重なって見えたこと。

    今は高齢で足腰が弱り、自力で排泄ができず
    床に這うように尿を垂らして移動し、
    毎日汚れた体をぬるま湯で洗ってやる私の孤独と猫に思う気持ち。

    動物の溌剌とした若かりし頃を知っているからこそ
    老いていくその姿を目の当たりにするのは
    その姿にチラつく死の影が見えてつらいのう。
    看取ることのつらさ。。。

  • 連作短編集。一話で漂った濃厚な死の匂いがまさかまさか最終話まで続く。そしてまさかの作者の実話を元にしてるというんだから堪ったもんじゃない。きついです。(桐切)

  • 年老い、そして死に向かう猫の存在感と匂い、そして刻まれてゆく記憶。

  • 深夜、仕事から帰る私を、猫はいつも玄関の扉のところで待っていた。闇の中にひっそりとうずくまっている猫を見るたびに、私の心はしなびた袋から弾力のある柔らかな袋へと回復していく。夜気で冷えた体を抱けば、頬や首に触れる毛の1本1本から、迎えられている情感が広がっていくのだった。私は家に帰るのではなく、猫のいる場所に帰っていたのだ。猫に迎えられ、毛に包まれ、舌で顔中を舐められるために。──

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著者プロフィール

1950年、愛知県生まれ。作家。著書『エンドレス・ワルツ』『琥珀の町』『抱かれる』(いずれも河出書房新社)、『ホテル・ザンビア』(作品社)ほか。

「1994年 『自殺者たち 一日一死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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