穴 HOLES (ユースセレクション)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062096454

作品紹介・あらすじ

「まずい時にまずいところに」いたために、代々、イェルナッツ家の人々は辛酸をなめてきた。スタンリー(イェルナッツ四世)は、無実の罪で、砂漠の真ん中の少年院にぶちこまれ、残酷な女所長の命令で、くる日もくる日も不毛の地に"穴"を掘る毎日。ある日、ついにスタンリーは、どこかにあるかもしれないイェルナッツ家の"約束の地"をめざして、決死の脱出を図るのだった。五代にわたる不運をみごとに大逆転する少年。ニューベリー賞、全米図書賞ほか多数受賞。おなかの底から元気がわいてくる冒険文学。

感想・レビュー・書評

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  • 無実の罪で放り込まれたグリーン・レイク・キャンプ(少年院)で、スタンリーは来る日も来る日も直径1.5メートル深さ1.5メートルの穴を掘り続ける‥‥なんという不条理‥‥初めは安部公房の『砂の女』を思い起こしました。
    しかし、穴を掘らされている本当の理由が分かった時、大人とはなんとズルい生き物だろう、という気持ちが沸々と沸き起こりました。
    “子どものために“の名の下に、自分の都合の良いように子どもを操作する。
    ここで生き抜いていくためには、要領よく(ズル賢く)やっていかなければならないと一瞬思うスタンリー。でも、自分の頭で考えて動くことを選んだスタンリーは、生まれて初めて自分のことを好きになる。

    児童書なので、ちょっとコミカルに描かれていますが、人種差別や貧富の差などさまざまな問題が盛り込まれていて読み応えがありました。

  •  無実の罪で砂漠のど真ん中の少年院「グリーン・レイク・キャンプ」に送り込まれてしまったスタンリー・イェルナッツ。そこでは、人格形成のためだといって炎天下のもと毎日ひたすら穴を掘らされるのだが、どうやら大人たちには別の目的があるようだとスタンリーは気づく…。理不尽で過酷な状況下で育まれる少年たちの友情と成長、ひいひいじいさんまで遡る過去の因縁、枯れた湖の街の悲恋の物語、そして呪いに、臭い足?!などさまざまな要素が絡まり合って見事に構成された王道エンタメ作品。ディズニーが二〇〇三年に映画化しているとのこと(日本では劇場公開なし)、うんうん、映像が目に浮かぶようだ。
     語りかけるような文体、先が気になる展開に引っ張られて一晩プラス数時間で早々読了。面白かった。

     このあとはただの思い出話。
     実はこの本、高校の時の英語の先生が授業中折に触れ激烈におすすめてしてきていたので、数えてみれば刊行後数年以内の時点で知ってはいたということになる。私はその先生の授業は大好きで、科目としての英語が好きでいられたのは半分はその先生のおかげだと思っているし、英語の学力向上のためにその先生がすべきだと言ったことは全て素直に実践するくらい信頼していた。がしかし、雑談等で話題にする事柄などから、人としての趣味嗜好は合わないような気がなんとなくしており、その先生が「とにかくめちゃめちゃ面白いから騙されたと思って読んでみろ」というこの本を、私は先生がいうほどは楽しめないような予感がずっとしていて、何度か手に取りかかったもののずっと読まずにきて、このたびふとしたきっかけで、二十年越しでやっと読んだ。
     そういう意味での感想は、確かに先生、とても面白かったですけど、私の直感も間違っていなくて、先生と同じくらい「最高だ!」みたいなテンションにはなれませんでした(ありますよねそういうことって)。でもそれは本当にただの好みの問題で、伏線とか感動とかは私も十分味わいましたが、「テキサスで悪友やガラガラへびに囲まれて穴を掘って唾吐いて寝る」みたいな風景より「賑やかなロンドンの街中を縦横無尽に駆け回る」とか「海辺の街の不思議な洋館と森の奥の秘密の場所」とかのほうが好きかな、というだけのことです。逆にいうと、薦められなかったら自分では出会わなかった可能性が高いわけですから、何はともあれありがとうございました。お元気でいらっしゃるでしょうか…。


  • "「子どもの本」を書いておられますけれど、「子どもの」は「子どもむけの」と同義であるとはかぎりません。「かつて子どもだった人」にも楽しんでいただければと思います。"

    役者あとがきにもこうあるように、児童書だと侮ってはいけない。

    上から読んでも下から読んでも同じ綴りの不運な主人公 スタンリー・イェルナッツが、まずい時にまずい場所にいたばかりに、有名フットボーラーの靴泥棒と見なされ、罰としてグリーン・レイク・キャンプに送り込まれるところから物語は始まる。
    レイクという名前がついているキャンプ地なのに地面は干上がり、水は一滴もない。キャンプに送られた子どもたちは、「根性を養うため」「人格形成のため」にそこでひたすら穴掘りをさせられるが…。


    X線にジグザグにイカに磁石、玉ねぎ売りのサムに、おんぼろスニーカーを再利用する方法を見つけようと日々実験に明け暮れる父さん、それにあんぽんたんのへっぽこりんの豚泥棒のひいひいじいさん。
    ユニークな登場人物はいつもどこかひと癖がある。

    ロアルド・ダール的なブラックユーモアが好きなひとには絶対に刺さるはず。

  • スニーカー泥棒の濡れ衣を着せられたスタンリーは、非行少年として更生施設に送られる。
    施設ではこれまでにない友人関係を作り始めたスタンリー。そして、延々と穴を掘り続ける日々のなかで、スタンリーは所長が何かを探していることに気づく。

    理不尽な待遇を受けた友人、ゼロは先に施設を離れ、数日後、スタンリーも施設を飛び出していく。彼らを飢えと渇きから救ったのは何代も前の先祖のタマネギだった。
    こっそり施設に帰ってきた二人は先祖の宝を掘り出し、所長は痛い目を見て、弁護士がもろもろを片付けてくれて、二人は大金持ち!! スーパーハッピーエンド!!!

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    すべてはスタンリーとゼロのために存在していた、という感じ。二人がこの更生施設に来なかったらケイト・バーロウの隠したスーツケースは見つからなかっただろう。
    そう考えると、イェルナッツ家ではなく、ウォーカー家の人たちこそが呪われていたように思えてくる。
    よくもわるくも運命には逆らえないということなのだろうか。皮肉だ。

  • けっこうツライ内容なのに、なんだかカラリとした感じがするのは何故?

  • 大好きな児童書。
    初めて知ったのは映画版でした(スタンリー役のシャイア・ラブーフはじめキャストすべての演技と音楽がすばらしく、爽快な映画でお勧めです)。
    その後原作を読み、アメリカの語学学校で教材として再開して…と個人的に何かと縁深い作品です。
    児童書ミステリーとはいえ、圧倒的な伏線伏線伏線!
    進むにつれて、ああ、これは…!と唸るエピソードや小ネタがたくさんあって、子供心に帰ってわくわくしながら読める一冊です。
    個人的に先に映画から入ったため、それとの対比をしてしまうのですが、映画では描ききれなかったサブエピソードなども多く、映画は見たよ!という人にぜひ読んでいただきたいです。
    あと、とてもきれいにつむぎ上げられている物語なので、読了感が良く、ちょっと疲れて元気がなくなったときに読むとスッキリ。

    スピンオフの「道」なども、本作のキャラクターをより楽しむためにもお勧めしたいです。
    いつの間にかDテントのメンバーともっと友達になった気持ちになれます。

  • 母が持ってた名著ということで読了。
    もともと海外文学苦手なこともあり、パラパラーっと。じっくりは読めず。
    10代にオススメなのはまぁ、わかるかな。映画化されてるとのことで、そちらが気になった。

  • 小学生の頃に同級生が読んでいたのを思い出して、試しに読んでみた。主人公のスタンリーは心当たりが無いにも関わらず有罪を宣告されて、グリーン・レイク・キャンプで穴掘りを命じられる。穴掘りを通じて他の子供達との交流やカウンセラーとの関係は色々と感じるものがある。タイトルから想像する話よりずっと深い穴だった気がする。

  • 児童文学の傑作
    お子様向けといえど、大人にもオススメできる伏線の張り巡らせ方
    そして、各キャラクターの個性と描写設定の独特さがとても興味関心を引き寄せられます。

  • 「まずい時にまずいところに」いたために、代々、イェルナッツ家の人々は辛酸をなめてきた。われらが太っちょスタンリーもまたしかり。無実の罪で、砂漠の真ん中の矯正施設にぶちこまれ、残酷な女所長の命令で、くる日もくる日も、焼ける大地に<穴>を掘る。けれどもついに、決死の脱出。どこかにあるかもしれない<約束の地>をめざして、スタンリーは、黒人少年ゼロとゆく。五代にわたる不運をみごとに大逆転する少年たちの、友情とプライドをかけた冒険物語!
    原題:Holes
    (1998年)
    — 目次 —
    第一部 グリーン・レイク・キャンプ
    第二部 最後の穴
    第三部 それから
    訳者あとがき

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