スプートニクの恋人

著者 :
  • 講談社
3.46
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062096577

作品紹介・あらすじ

22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。そして勢いをひとつまみもゆるめることなく大洋を吹きわたり、アンコールワットを無慈悲に崩し、インドの森を気の毒な一群の虎ごと熱で焼きつくし、ペルシャの砂漠の砂嵐となってどこかのエキゾチックな城塞都市をまるごとひとつ砂に埋もれさせてしまった。みごとに記念碑的な恋だった。恋に落ちた相手はすみれより17歳年上で、結婚していた。更につけ加えるなら、女性だった。それがすべてのものごとが始まった場所であり、(ほとんど)すべてのものごとが終わった場所だった。とても奇妙な、ミステリアスな、この世のものとは思えない、書き下ろし長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 職場の同僚に薦められて読んでみました。
    「恋愛小説の中では一番」とのコメントとともに薦められたのですが、村上春樹作品なので、普通の恋愛小説を読むときよりもえいっと気合を入れて読み始めました。

    印象的な書き出しにはっとさせられ、「スプートニクの恋人」の由来で一気に引き込まれ、読み終えたときには本書に夢中になっている自分がいるのでした。
    人工衛星スプートニクと人間の抱えるどうしようもない孤独感を重ね合わせたイメージが印象的で、忘れ難いものになりそうです。

    村上春樹流の比喩にドキドキさせられます。
    「クリスマスと夏休みと生まれたての仔犬がいっしょになったみたいにやさしい」とか。
    どこか不安定な感じに、くらくらしてしまう。

  • "孤独”がテーマになりそうなのに、失踪した大切な人が最終的には戻ってくるのがよかった。良い意味で村上春樹氏らしくなかった。心からよかったねぇ、って思った。
    今年は何冊か村上春樹氏の本を読んだが、個人的には随分彼の思想の影響を受けているなと感じた。私も自分について語ろうとするとき、常に軽い混乱に巻き込まれることになるので。自分を語れない故の孤独感をわかってくれる人、私にとっては彼の作品の"僕"しかいないように思える。物語のキャラクターだとしても、分かり合える誰かがいるということは、それはすごく尊いことなんだろうな、とも思った。

  •  『これは小説ではない。要するにただの文章だ。』
     すみれの作品内の言葉。だけど、この作品自体にピッタリの言葉だと思う。この物語に惹かれないし、続きを読みたいとも思わなかった。
     書き殴りのような作品で、村上春樹の自己表現が詰まってるのだと思う。キャラクターも魅力的だと思えなかった。だけど、作品を表すのに完璧なキャラ。
     良い意味で、恐ろしく気持ち悪い本。結局は村上春樹と仲良くはなれなかったんだと思うけど。魅力的だと思えないのに、読んで良かったと思う。

  • 22歳のすみれは17歳年上で既婚者の女性のミュウに恋をした。語り手の「ぼく」はすみれと長い付き合いだが、ずっと友だちとして付き合っている。ベッドを共にするガールフレンドは何人かいても、すみれに対するような気持ちで付き合えない。
    すみれはミュウの仕事を手伝うようになる。いつも書いていた小説が書けなくなる。ミュウに恋をしていると気がつく。ミュウは仕事で外国にすみれを伴って行き、すみれはあるきっかけからミュウを求めるが、彼女は応えられない。その後、すみれの姿が消える。


    いつもと少し違った話と思ったのは、男女間の恋愛ではないからか、それぞれが自分の気持ちに反する行為をしている、または気持ちを受け入れられないからか。みんなが孤独で、自分の本当の想いは遂げられない。いつもの村上ワールドはいつもみんな楽しく思い通りな話とも思わないけど、少なくとも恋愛はそこそこ成就してるようなので、これは特に、みんなが寂しい話という気がする。

    すみれはもう一人のミュウに会ったのか。想いを遂げられたのか。すみれの猫と同じなのか。もしすみれも半分になったら、それはもうすみれじゃないから戻ってきても意味がないのか。

    スプートニク、旅の連れ。一時の、ということなのだろうか。やはり謎は多い。

    これも宇宙関係なかった!

    現実と夢の境目が曖昧ですごく不安なのに、さらさら読める。夢だよね、と流してしまうような感じで。切なくて寂しくて、ちょっとだけ美しい。


    引用メモ。
    どうして書かずにはいられないのか? その理由ははっきりしている。何かについて考えるためには、ひとまずその何かを文章にしてみる必要があるからだ。
    小さなころからずっとそうだった。何かわからないことがあると、わたしは足もとに散らばっている言葉をひとつひとつ拾いあげ、文章のかたちに並べてみる。もしその文章が役に立たなければ、もう一度ばらばらにして、またべつのかたちに並べ替えてみる。そんなことを何度か繰り返して、ようやくわたしは人並みにものを考えることができた。文章を書くことは、わたしにとってはそんなに面倒でも苦痛でもなかった。ほかの子供たちが美しい小石やどんぐりを拾うのと同じように、わたしは夢中になって文章を書いた。わたしは息をするようにごく自然に、紙と鉛筆を使って次からつぎへと文章を書いた。そして考えた。(191ページ、すみれの文章)

    わたしがまだ若かったころには、たくさんの人がわたしに進んで話しかけてくれた。そしていろんな話を聞かせてくれたわ。楽しい話や、美しい話や、不思議な話。でもある時点を通り過ぎてからは、もう誰もわたしには話しかけてこなくなった。誰ひとりとして。夫も、子供も、友だちも……みんなよ。(294ページ、ぼくのガールフレンド=生徒の母親の話)

  • なにかを考え出すと食事をとるのを忘れる傾向があり、
    すみれは自分で料理を作るくらいならなにも食べないでいる方を選ぶ人間だった

    ミュウは微笑んだ。久しぶりにどこかの引き出しの奥から引っ張り出してきたみたいな、懐かしく親密な微笑みだった。目の細め方がすてきだ。

    とても物覚えがよくて、字のうまいひとだった

  • 村上春樹って、こんなにキレイな文章を書く人だったのか。
    心地よい。
    『女のいない男たち』から2冊目を読了。

    他人とコミュニケーションをとることにどこか違和感を感じている「僕」と「すみれ」。
    僕はすみれに恋愛感情を持っているけれど、すみれは未だかつてそういう感情をもったことがない。
    そんなすみれが年上の女性「ミュウ」に恋をした。
    ミュウに雇われ一緒に訪れたギリシャの小さな島で、すみれは忽然と姿を消した。すみれはどこへ消えたのか?

    ハッピーエンドでもないし、どうしようもない孤独感が残るけれど、読み終わったときに、きっと僕は「あちら側の世界」ですみれに会えるに違いないと思えた。

  • 村上春樹苦手だったけど、これは好き。

  • ひゃー、よかった。落着。よかったよかった。あー、よかったー。。

  • 心に残る一作。読み終わって少し時間がたった今でも、自分がギリシャにいるような錯覚を覚えることがあるくらい。

  • 村上作品の中でも賛否両論が激しいように思いますが
    自分にはあっているなと感じます
    華やかなストーリーでは決してないけれど、ぐっと印象に残る

    とくに終盤で流れるなんとも言えない雰囲気が心地よいです
    廻り続ける軌道のどこかでもう一度逢いたい。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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