優しい侍

著者 :
  • 講談社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062097703

感想・レビュー・書評

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  • 短編集です。

    荒木家臣が主人公の「優しい侍」、
    元親の息子、盛親が主役の「長曽我部盛親」、
    古田織部の四男である九八郎が描かれた「茶碗と天守閣」、
    秀家の半生を描いた「秀家と豪姫」

    の以上四編が収録されています。


    ・「優しい侍」
    :元ネタは『信長公記』の荒木村重一族の処刑の項に記載されている「自分の命の替わりに妻を助けてくれよ!」な荒木家臣のお話です。この小説では「荒木五郎右衛門」と名付けられ、描かれています。有岡城に残した妻の処刑をなんとか食い止めようとする五郎右衛門、その五郎右衛門のひたむきさに忘れかけていた優しさを思い出し、感化され、彼と妻をなんとか救うことは出来ないかと苦悩する光秀。もうなんというか言葉にならない・・・。最終的に五郎右衛門夫婦はふたりとも処刑されてしまうのですが、その際のやりとりの描写が必見です。
    「優しさ」というものをひどく考えさせられるお話。


    ・「長曽我部盛親」
    :彼の有名な長曽我部元親の子、盛親の半生を関ヶ原から描いた小説です。盛親もそうですが、偉大過ぎる父親やその父親に魅せられた家臣に囲まれると大変だな、とひしひしと感じます。三成に「関ヶ原に向かおうぜ!」と言われて「行くよ!」と即答したにも関わらず家臣達の反対にあい(桑名さんをはじめ、彼ら家臣も長曽我部家のことを思って進言しているのがまた歯痒い)兵を出せず、戦況を見守り、池田兵からの追撃に逃れることしか出来なかった盛親
    。辛いです。

    :その分、奈々さまと盛親のやりとりに癒されます。奈々さまって信親(元親の長男)の娘だったんですね!しかも目を病んでたのか…知らんかった。
    「あにうえ様」と盛親を慕う奈々さま健気でかわゆすです。
    :兄孫次郎の死、領国召し上げ、放し囚人、大阪呼び出し後の盛親の不幸ラッシュ
    が止まらない。あああぁ。
    :「祐夢おじさん」って寺子屋の子や近所の子供にしたわれる盛親にきゅん。そして奈々さまも京で一緒に暮らせてたのか!よかったー!奈々さまとの別れ、大阪城入城の決意の描写が熱くてせつない。

    盛親にも生存説が残ってるんですね。管理人の心情的になんとか落ち延びてふた
    り幸せに余生を送っていて欲しいと思います…。

    あと久武さんの腹黒さハンパなかったです。おめーさんよー!(何)


    ・「茶碗と天守閣」
    :おりべえの息子であり、秀頼に小姓として仕えていた古田九八郎重行の豊臣滅亡後のお話。読みはじめてまず思ったのは、かわいいなこのひと!でした。おりべえとのもどかしい親子関係たまらないです。淀に笛褒められてる~。
    :京の名筆家に書を褒められる治長…!京の名筆家に書を褒められる治長!大事な
    ことなので二回言いました。(…)
    :そして大阪の陣では木村隊に参加!みんなのピンチに「戦はこうすんだよ!」と
    自ら鉄砲を打ちまくるまたべえ。またべえさんここでも恰好良すぎる。これは惚れる。若者に慕われるまたべえ…!行軍中に居眠りしそうになる九八郎に「こんな寒さの中寝たら風邪ひくよ」と心配してあげるまたべえ…
    おぉお。そして最期までまたべえは恰好良かった…!

    後年になってようやく自分の中の父親と折り合いをつけていく九八郎。今後彼が
    どうやって生きてゆくのか非常に気になる所!


    ・「秀家と豪姫」
    :秀家さまと豪姫のお話。ふたりの幼少エピソードと晩年の出会い(これはパラレルでしょうが)にときめきます。戦遊びで大将になって孫七郎(秀次)打ちのめす豪姫…可愛いじゃないの。(秀次かわいそう)「備前の五もじ」と豪姫を無邪気に可愛がる秀吉にはあはあ。
    :朝鮮出兵は秀家さまというか、行った人達に沢山のトラウマを残したよね…描写読むだけでうぇっとなる。
    明石さんは一体何者なのだろうか…。何かと謎が多いひとですよね、このひと。
    :逃げ隠れた先の村人に慕われる秀家はあはあ。

    秀家夫婦の絆の強さにひたすらじーんときたお話でした。

  • 表題作優しい侍、長宗我部盛親のみ。
    他二話は未読。

  • 荒木家臣と明智光秀の慈愛と反抗を描いた表題作『優しい侍』ほか、全てに翻弄されながらも鎖を断ち切って立ち上る『長曾我部盛親』、古田織部と後藤基次を通して自分を見つめ直す古田九八郎(織部の四男)を描いた『茶碗と天守閣』、夫婦の絆と別れを描く『秀家と豪姫』の4編を収録。

    全編それぞれに、死と隣り合わせの”優しさ”があります。

    不条理に処刑されていく者や、武運拙く死にゆく者、そういった史実や小説で心を痛めたり、報われない想いをされた方は多いと思いますが、この作品を読んでそういった想いが少しは和らぐのではないでしょうか。

  • 短編集。荒木村重の一族、五郎右衛門が村重が有岡城に残した女子供らの処刑を前に妻の助命を求めて明智光秀の元を訪ねる話、長宗我部盛親の関ヶ原から大坂の陣、古田織部の四男で唯一生き残った九八郎重行と大坂城の話、秀家in八丈島の計4話からなっています。どの話も時間を忘れるほど引き込まれました。表題の「優しい侍」は優しさと反抗が無名に近い五郎右衛門を通して描かれています(「信長公記」に3行書かれているものだそうです)。それが二年半後に繋がるという形での結びには、ああと。どの話も結末は決してハッピーエンドではなかったですが、どれも優しさが溢れていて私は好物です。面白いので是非。

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