ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争

  • 273人登録
  • 3.95評価
    • (51)
    • (40)
    • (57)
    • (1)
    • (0)
  • 44レビュー
著者 : 高木徹
  • 講談社 (2002年6月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062108607

ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • どこかで起こっている紛争も報じられなければ分からない。そのためにジャーナリストが命をかけている。時に日本では、そうしたジャーナリストの危険に際し自己責任論が飛び交う。

    民族浄化、エスニッククレンジングという言葉は
    広告代理店がインパクトを狙って考えたコピー。

  • ボスニア・ヘルツェゴビナの紛争における、PR企業の存在を多方面への取材をもとに描いた一冊。
    現代の紛争においていかに多くの部分が情報戦になっているかがよく分かります。いかに大国であっても世論の支持なくしては軍隊を他国に送るようなことは難しい時代。その世論をいかに自分たちに有利なほうに持っていくのか。そこにプロが介在しているという。
    何が真実なのか見極めるのが本当に難しい時代だなぁと改めて感じてしまいます。

  • 面白くて一気に読了。ただ、読み終えて「面白かった」の一言で片づけてしまってはならない内容ではあります。

    ボスニアを巡る紛争において、PRとイメージ戦略でボスニアを「正義」、セルビアとユーゴスラビア連邦を「悪」と決めつけたのが、アメリカのPR会社。このシンプルで分かりやすく、細かい背景や矛盾を無視した二項対立論を国際世論にまで押し上げていったPR会社とその活動の中核を担ったPR会社社員、そして彼(ら)を味方につけたボスニア政府の動きが細かく記されていて、見た記憶がほとんどない当時の映像が頭の中で再生されるかのようです。

    自分たちの国が弱くて魅力に乏しく、「国内紛争」に留まっていては世界の誰からも注目されないだろうと考え、メディアを使い世論を動かすことでアメリカ政府を味方につけて紛争を「国際化」しようとした当時のボスニアの狙いそのものは慧眼と言うべきでしょう。ただ、その世論形成がこんなにも一握りの人々によって行われ、それが何の疑いもなく単純に受け入れられ、無邪気に信じられた結果として、一方的に「悪」とされたセルビアとユーゴスラビアの人々の苦しみと無念についても、同様に知っておくべきことであると思います。

    このPR戦略を敷いたルーダー・フィン社というアメリカのPR会社と、そこの社員でこのボスニア擁護論を展開したジム・ハーフ氏については、僕自身の主観としては何の迷いもなく軽蔑できる会社であり、人種です。ただ客観的に見て、クライアントであるボスニア政府の要求をここまで見事に達成した点についてだけは、敬服すべき手腕であったといわなければならないでしょう。

    それが端的に表れているのが、アメリカ人が基本的に、純粋にかつマヌケなまでに「人権」と「民主主義」というフレーズに弱く、ここを突けば一気に世論が動くという見識のもとで行動を起こしていたこと。さらに、ヨーロッパ圏においてはナチスの所業に対するヒステリックな拒否反応があることを前提に、それを連想させつつも致命的なワードである「ホロコースト」を使わずに済ませるために、いまや一般的な語彙となった「民族浄化」という語を生み出したこと。
    この二つに関して言えば、本当に卓抜した発想力と行動力が子のPR会社とハーフ氏にあったのだ、と認めざるを得ません。

    それでも著者が本文にて触れている通り、やはりこういった種類の会社は「情報の死の商人」として嫌われるべき存在でなければならない、と思います。それが理想論であり、世間知らずの人が唱える空想であったとしても、そうであるべきです。

    ボスニア紛争はほんの20数年前ですが、今は当時とはだいぶ情勢が変わっています。この紛争では賢明にもアメリカは物理的に紛争に関わりませんでしたが、その後の戦争バカ大統領の統治のもと、イラクやアフガニスタンに余計なちょっかいを出しまくった結果、今のアメリカ人は当時ほど「アメリカは世界の人権と民主主義を守るべく戦わなければならない」と思い込んではいないでしょう。
    それでもやはり、人権と民主主義が傷つけられることが(恐らく)生理的に我慢ならないアメリカ人が、またボスニアの時のようなPR会社に踊らされ扇動されれば、さらに別の国の紛争に介入していくこともあるのかもしれません。

    幸か不幸か、そういった妙な使命感と自己満足&陶酔感に溢れた国に生まれたわけではない身として、PR会社や主要メディアが生み出す虚像や嘘、複雑なものを単純に作り変えて世界にバイアスをかける手口に惑わされない姿勢や視点を育まなければなりません。インターネットもEメールもなかったボスニア紛争当時に比べ、一般人が様々な視点からの情報に触れる機会は激増しています。その分、嘘や虚飾に騙される可能性も高くなっているわけです。こういった本をきちんと読み、世論形成の流れを知ることで、知的体力をつけていく必要はあると思います。

  • 歴史の教科書にものっている「民族浄化(エスニック・クレイジング)」という言葉が、世論を誘導するために広告代理店によって作られたというのは衝撃であった。そして、この言葉によって五十歩百歩の紛争当事国が「加害国」と「被害国」に分けられたのはPRの恐ろしさを感じる。

  • アメリカにはPublic Relation(PR)という世論を操作する会社が存在する。その活動例としてボスニア・ヘルチェゴビナ紛争への国連介入による空爆劇をドキュメンタリーとして書いている。まず外見のよりヘルチェゴビナ外相を広告塔とし、逆にセルビアのミロシェビッチ大統領を悪役にしたてあげ、キャッチコピーとして民族浄化、強制収容所などの言葉でアメリカのマスメディアの関心をひき、欧米社会を見方につける巧みな演出がされた結果、空爆が実行された。戦争までも仕掛ける職業があるのだ。

  • もともとは、NHKスペシャルの番組だったとか。

    1990年代のバルカン紛争で、なぜセルビアだけが悪者になり、一方のボスニアは西側諸国の支援を受けられたのか。
    その影には、ボスニアと契約したアメリカのPR会社が暗躍し、国連やホワイトハウスを相手に見事な働きをしていた。

    まるで映画を見ているかのような展開で面白かった。

    ユーゴスラビア連邦を国連から脱退させ、NATOの空爆が実行された。果たしてこれがPR会社の成果と言えるかどうか。罪のない民衆が被害者となったとしたら、情報の死の商人だ。

    銃弾飛び交うボスニアの戦場から、遥か遠く離れたワシントンで、電話とFAXを使って国際世論を誘導するのは、倫理上どうかとは思うが、このPR会社がいなければ、アメリカやヨーロッパにメリットのないバルカン半島は見捨てられてしまっていたに違いない。

  • 市場って知らないところでコントロールされていることが戦争でもあるって怖いと思いました。
    情報を見極める目を持つべきですね。

  • 修さん選 選者3位

  • ボスニア紛争の裏側で戦争の行方を左右したPR企業の話。ボスニア・ヘルツェゴビナにはクロアチア、セルビア、モスレム人の3民族が住んでおり、セルビア人が権力をかざしモスレム人を非難、殺害していた。その事態に耐えかねたモスレム人の外交官シライジッチはアメリカに渡り、PR企業と契約をし、セルビア人=「悪」という概念を世界に広める。そこで遅れを取ったセルビア側も応戦にでる。
    今も紛争が絶えない世の中であるが「情報戦略」がいかに大きな影響力を持つかという事を深く考えさせられた。

全44件中 1 - 10件を表示

高木徹の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
東野 圭吾
東野 圭吾
三島 由紀夫
村上 春樹
村上 春樹
村上 春樹
ヘミングウェイ
有効な右矢印 無効な右矢印

ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争はこんな本です

ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争を本棚に「積読」で登録しているひと

ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争の作品紹介

銃弾より「キャッチコピー」を、ミサイルより「衝撃の映像」を!スパイ小説を超える傑作ノンフィクション。NHKスペシャル「民族浄化」で話題を呼んだ驚愕の国際情報ドラマ。

ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争の文庫

ツイートする