ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争

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著者 : 高木徹
  • 講談社 (2002年6月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062108607

ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争の感想・レビュー・書評

  • どこかで起こっている紛争も報じられなければ分からない。そのためにジャーナリストが命をかけている。時に日本では、そうしたジャーナリストの危険に際し自己責任論が飛び交う。

    民族浄化、エスニッククレンジングという言葉は
    広告代理店がインパクトを狙って考えたコピー。

  • ボスニア・ヘルツェゴビナの紛争における、PR企業の存在を多方面への取材をもとに描いた一冊。
    現代の紛争においていかに多くの部分が情報戦になっているかがよく分かります。いかに大国であっても世論の支持なくしては軍隊を他国に送るようなことは難しい時代。その世論をいかに自分たちに有利なほうに持っていくのか。そこにプロが介在しているという。
    何が真実なのか見極めるのが本当に難しい時代だなぁと改めて感じてしまいます。

  • 面白くて一気に読了。ただ、読み終えて「面白かった」の一言で片づけてしまってはならない内容ではあります。

    ボスニアを巡る紛争において、PRとイメージ戦略でボスニアを「正義」、セルビアとユーゴスラビア連邦を「悪」と決めつけたのが、アメリカのPR会社。このシンプルで分かりやすく、細かい背景や矛盾を無視した二項対立論を国際世論にまで押し上げていったPR会社とその活動の中核を担ったPR会社社員、そして彼(ら)を味方につけたボスニア政府の動きが細かく記されていて、見た記憶がほとんどない当時の映像が頭の中で再生されるかのようです。

    自分たちの国が弱くて魅力に乏しく、「国内紛争」に留まっていては世界の誰からも注目されないだろうと考え、メディアを使い世論を動かすことでアメリカ政府を味方につけて紛争を「国際化」しようとした当時のボスニアの狙いそのものは慧眼と言うべきでしょう。ただ、その世論形成がこんなにも一握りの人々によって行われ、それが何の疑いもなく単純に受け入れられ、無邪気に信じられた結果として、一方的に「悪」とされたセルビアとユーゴスラビアの人々の苦しみと無念についても、同様に知っておくべきことであると思います。

    このPR戦略を敷いたルーダー・フィン社というアメリカのPR会社と、そこの社員でこのボスニア擁護論を展開したジム・ハーフ氏については、僕自身の主観としては何の迷いもなく軽蔑できる会社であり、人種です。ただ客観的に見て、クライアントであるボスニア政府の要求をここまで見事に達成した点についてだけは、敬服すべき手腕であったといわなければならないでしょう。

    それが端的に表れているのが、アメリカ人が基本的に、純粋にかつマヌケなまでに「人権」と「民主主義」というフレーズに弱く、ここを突けば一気に世論が動くという見識のもとで行動を起こしていたこと。さらに、ヨーロッパ圏においてはナチスの所業に対するヒステリックな拒否反応があることを前提に、それを連想させつつも致命的なワードである「ホロコースト」を使わずに済ませるために、いまや一般的な語彙となった「民族浄化」という語を生み出したこと。
    この二つに関して言えば、本当に卓抜した発想力と行動力が子のPR会社とハーフ氏にあったのだ、と認めざるを得ません。

    それでも著者が本文にて触れている通り、やはりこういった種類の会社は「情報の死の商人」として嫌われるべき存在でなければならない、と思います。それが理想論であり、世間知らずの人が唱える空想であったとしても、そうであるべきです。

    ボスニア紛争はほんの20数年前ですが、今は当時とはだいぶ情勢が変わっています。この紛争では賢明にもアメリカは物理的に紛争に関わりませんでしたが、その後の戦争バカ大統領の統治のもと、イラクやアフガニスタンに余計なちょっかいを出しまくった結果、今のアメリカ人は当時ほど「アメリカは世界の人権と民主主義を守るべく戦わなければならない」と思い込んではいないでしょう。
    それでもやはり、人権と民主主義が傷つけられることが(恐らく)生理的に我慢ならないアメリカ人が、またボスニアの時のようなPR会社に踊らされ扇動されれば、さらに別の国の紛争に介入していくこともあるのかもしれません。

    幸か不幸か、そういった妙な使命感と自己満足&陶酔感に溢れた国に生まれたわけではない身として、PR会社や主要メディアが生み出す虚像や嘘、複雑なものを単純に作り変えて世界にバイアスをかける手口に惑わされない姿勢や視点を育まなければなりません。インターネットもEメールもなかったボスニア紛争当時に比べ、一般人が様々な視点からの情報に触れる機会は激増しています。その分、嘘や虚飾に騙される可能性も高くなっているわけです。こういった本をきちんと読み、世論形成の... 続きを読む

  • 歴史の教科書にものっている「民族浄化(エスニック・クレイジング)」という言葉が、世論を誘導するために広告代理店によって作られたというのは衝撃であった。そして、この言葉によって五十歩百歩の紛争当事国が「加害国」と「被害国」に分けられたのはPRの恐ろしさを感じる。

  • アメリカにはPublic Relation(PR)という世論を操作する会社が存在する。その活動例としてボスニア・ヘルチェゴビナ紛争への国連介入による空爆劇をドキュメンタリーとして書いている。まず外見のよりヘルチェゴビナ外相を広告塔とし、逆にセルビアのミロシェビッチ大統領を悪役にしたてあげ、キャッチコピーとして民族浄化、強制収容所などの言葉でアメリカのマスメディアの関心をひき、欧米社会を見方につける巧みな演出がされた結果、空爆が実行された。戦争までも仕掛ける職業があるのだ。

  • もともとは、NHKスペシャルの番組だったとか。

    1990年代のバルカン紛争で、なぜセルビアだけが悪者になり、一方のボスニアは西側諸国の支援を受けられたのか。
    その影には、ボスニアと契約したアメリカのPR会社が暗躍し、国連やホワイトハウスを相手に見事な働きをしていた。

    まるで映画を見ているかのような展開で面白かった。

    ユーゴスラビア連邦を国連から脱退させ、NATOの空爆が実行された。果たしてこれがPR会社の成果と言えるかどうか。罪のない民衆が被害者となったとしたら、情報の死の商人だ。

    銃弾飛び交うボスニアの戦場から、遥か遠く離れたワシントンで、電話とFAXを使って国際世論を誘導するのは、倫理上どうかとは思うが、このPR会社がいなければ、アメリカやヨーロッパにメリットのないバルカン半島は見捨てられてしまっていたに違いない。

  • 市場って知らないところでコントロールされていることが戦争でもあるって怖いと思いました。
    情報を見極める目を持つべきですね。

  • 修さん選 選者3位

  • ボスニア紛争の裏側で戦争の行方を左右したPR企業の話。ボスニア・ヘルツェゴビナにはクロアチア、セルビア、モスレム人の3民族が住んでおり、セルビア人が権力をかざしモスレム人を非難、殺害していた。その事態に耐えかねたモスレム人の外交官シライジッチはアメリカに渡り、PR企業と契約をし、セルビア人=「悪」という概念を世界に広める。そこで遅れを取ったセルビア側も応戦にでる。
    今も紛争が絶えない世の中であるが「情報戦略」がいかに大きな影響力を持つかという事を深く考えさせられた。

  • 本書はボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の裏側を描いた本。PRのすごさをしみじみ感じる。この本が出版された2002年よりははるかに情報のグローバル化は進んでいるだろうから、ますますPRは重要になっているんだろうな。

  • メディアが持つ力が大きいことは既に誰もが理解していることだと思う。
    またPR会社(って言い方は一般的なの?)が様々なテクニックを駆使して行うイメージ操作も効果的なのだろう。問題はPR能力の有無や優劣によって生じる格差なのだ、とこの本は言いたいのだと読み取った。
    著者の取材や記事はとても公正な姿勢で安心できる。単純にPR会社を悪としてエンターテイメント性を持たせた話しにも出来ただろうが、この世には正義も悪も存在しないというスタンスにたってこそ事実を冷静に客観視出来ると思う。
    PR会社の洗練された手法には驚かされた。よい言い方をすれば「情報のデザイン」、悪い言い方をすれば「情報操作」という風になるんだろう。印象を操作するという行為は誰もが日常的に無意識的に行なっているが故に、組織的に行われるPRだけがおかしい!となるのは矛盾している。自主的な倫理観に頼らざるを得ないのはあまりにも脆く、営利企業なのだから利益を追求すのは当然だと言われれば誰も否定できないだろう。本能的になんかまずいんじゃ?というこの感じがどこから来てるのか…と色々考えさせられる。
    一番怖いのは無知と無関心というのはどんな話でも変わらない。

  • メディアの力の強大さを感じられた。
    ほんとメディアリテラシーって大事だねっと。
    でも、事実が述べられてるだけで作者の考察が半ページしかないとこが残念。

  •  先週末購入しザラっと読み始めたらハマってしまった。あまりにも衝撃的だった。
     この本は、戦争の趨勢がメディアによって方向付けられているという現実をこれでもか!というぐらいあからさまに描写してくれている。具体的には、ユーゴスラビア内戦時のボスニアが使った情報戦略。ボスニアは、アメリカの広告代理店を使い、対セルビア戦における国際的な理解、反セルビアという風潮を生みだすことに成功したというのだ。この広告代理店は、ボスニア政府首脳に対し、言葉遣いから発言のタイミング、敵に不利な情報を流すためのネーミングを実に巧妙に執り行わせている。『民族浄化』という表現もそれ。セルビア武装勢力に対する残虐行為をこれでもか!と流しつつ、かたやボスニアの蛮行は包み隠し、『自由と民主主義』の旗印の下に反セルビアという世論を誘導したというのである。確かに、セルビア=悪者、ボスニア=弱者・正義などという感覚を得ていた人々も多いのではないか。事実は、どちもどっち、残虐行為は一緒でどちらにも正義などは無いのである。
     このような世論操作は、アメリカなどの先進国で当たり前のように行われている。国民の意思、認知もメディアによって如何様にでも歪められ、拡散される。メディアの情報はすべからく疑念を抱くべきであり、結局のところ己の感性と判断力をもって正しい情報とを得ていくしかないのではないか、と改めて感じ入ってしまった(MassyKumagai)。

  • 講談社から出版の為、文庫にはならないだろうなと思って購入。題名「ドキュメント戦争広告代理店───情報操作とボスニア紛争」がすべてを物語っているが、蛇足として以下。
    戦争はごく普通の一般人であれば体験したい/参加したい/起こしたいものである筈はなく、政治家がもしくは政府首脳が大義名分を掲げて開戦する為にいかに自己正当化するかを構築した本。
    民族浄化はある種の白人イデオロギーのマジックワードだな。

  • PRが一国の存亡を左右した・・・。その為の戦略、戦術が関係者へのインタビューを元に断片的に記述されています。特にその戦術は私個人のビジネスの場や人生の場にも十分に有効であり、活用されなければならないものであると感じました。もちろん最も大切なことは物事の本質を捉えることであり、自分の信じた道を進むことであることに疑問の余地はありません。しかし、一方で世論を無視することはできず、世論は自然に形成される訳ではなく、意図的に形成されるのであり、必要があれば自らの目的に沿った世論を形成する努力を怠ってはならない・・・そう教えられたような気がします。世論は「正しい」ものの味方ではない。つまり絶対的に「正しい」ものなどこの世には存在しないということ、「正しい」という判断はあくまで主観的なものであることを再確認した一冊でした。

  • 輿論はこうして創られる。

  • 広告やPRのシゴトをする人にオススメと薦められて一読。

    戦争と広告代理店に何のつながりがあるんだと最初は疑問に思っていた。
    しかし戦争に限らず、ビジネスでも政治でも何でも、広告やメディア報道などによって創られた「イメージ」の重要さを思い知らされた。

    アクエリアスとポカリスエットの含有成分はほとんど変わらない。しかし、スポーツ時の水分補給としてアクエリアスが多くの人に選ばれている(一昔前はスポーツの時にはポカリというイメージが強かったにも関わらず)。
    それは広告やメディアの中での扱われ方でイメージを創り上げていったことによる賜物であるだろう。

    同じように、戦争においてもどちらの国が良い悪いなどのイメージを創り上げることができる。その方法には色んな戦略があり知識がある。商品だけなく、国家間の問題や企業イメージの案件など、PRソリューションが取り扱うもの範疇は広い。

    メディアや広告を使って世論を創り上げる面白さを実感できるとともに、その裏側にある恐ろしさ、責任などが感じ取れる書であると思う。

    「嘘」はだめだ。「誇張」はいいけど。

  • ずーーーっと前に
    (たぶん広報に移動した時だから2008年1月)
    沼田さんにお勧めされた本。
    ようやく見つけたので読んでみます。

  • 世界各地で今も起こっている紛争・戦争。その背景で繰り広げられる情報操作合戦を取材した本。
    極めて読みやすく、そして面白く、一気呵成に読み上げてしまいました。

    本書ではボスニア紛争をテーマに扱い、その背景にあった政治PRの立役者達を取り上げている。
    複雑な現実を極めて簡略に、かつ視聴者の心に響くよう扇動していくその手管の一挙一動の詳細ぶり、感嘆すべき緻密な戦略性には、度肝を抜かれます。

    しかしこの本を読んで、改めて倫理とは結局なんなんだろうと思わずにはいられません。これほど煽られ易く、忘れやすい所謂「大衆」「世論」とは一体どれほどのエゴと矛盾に成立している固まりなのか、と。

    結局のところ、問題が解決しないことによって利益を得、次の問題へと手を伸ばす、この意図せざる地獄の招来が未来に何を誘うことになるのか。
    だがその地獄を刳り取らなければ、当事者達の悲惨はさらに濃度を増すというマッチポンプ的な構造は、情報化社会がさらにその複合性を高めるに連れ、いかなる姿となって立ち上がるのか。いろいろと考えさせる本であります。

  • 各地域で核実験が行われ、どの国もある程度の武装能力を持っている現在。
    どちらが先に仕掛けるか、どのタイミングに仕掛けるかというのが国と国との争いの中の焦点となる。
    その為に必要なのが「情報」です。
    「情報」とはすでにあることが起きたことに対してのものではなく、新たに作り出し発信していく
    こともできます。
    よく情報が「真実」かどうかとニュースが流されたりしますが、そのニュース自体が作られた「情報」
    だったり。広告代理店の情報操作の巧みさと恐ろしさを感じ取れました。

  • この本は日本のメディア関係者が書いた本の中では珍しく出色の出来だ。
    日本ではほとんど話題になることすらない、PR戦略という内容からいえば、本当に?翻訳本じゃなくて?と思ってしまうほど。
    この本を読むと、現在紛争地域にとっていかに世論を味方につけ、アメリカを味方につけることが重要かが分かる。
    政府・企業のPR戦略にに騙されないなるためにも読んでおくべき本。

  • 政治の裏でなんか暗躍してるおっさんたちがいっぱい出てくる。シンプルな物事の構造の裏には陰謀とかがある。実にえぐかった。

    amazonのレビューにかっちょいい批評がたくさんあるので、気になる人はそれを見ればいいと思いますよ。

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ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争の作品紹介

銃弾より「キャッチコピー」を、ミサイルより「衝撃の映像」を!スパイ小説を超える傑作ノンフィクション。NHKスペシャル「民族浄化」で話題を呼んだ驚愕の国際情報ドラマ。

ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争はこんな本です

ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争の文庫

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