雲南の妻

著者 :
  • 講談社
3.88
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本棚登録 : 122
感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062114592

作品紹介・あらすじ

この契りは永遠に…。女が女を娶る。中国雲南の奥深い地で過ごした忘れ得ぬふたりの愛の生活。奇妙な同性婚、傑作長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 美しく、生々しい、でもぼんやりとした不思議な夢のような独特の世界観の一冊でした。
    中国少数民族の慣習や茶文化などを、同性婚という形で描いていて、特に妻の妻となった英姫が不思議な魅力があって、少数民族の村を自分も旅してきたような気持ちになった。

  • 日本に中国茶が広まり始めた1970年代。中国雲南省に駐在し少数民族相手に織物やお茶を扱う商社マンの妻・敦子が主人公。
    物語半ばで、敦子は同居する通訳の少数民族の娘に乞われて女性同士で結婚し、商社マンの妻であり同時に娘の夫として生活する。レスビアンとかいうので無いちょっと不思議な愛の形。そういえば『屋根屋』もちょっと不思議な男女関係でした。
    村田さんの考えは良く判りません。でも決して否定的では無い。ただ強く肯定するのでもない。まあ、愛の形なんて色々あるよと言われているようです。
    何とも言えぬムワッとした熱気。少数民族の暮らしぶり。月を映す藍の樽。山にこだまする少数民族の歌声。そしてウーロン、プーアールをはじめとする中国茶。「読む」を超えて「手応え」とか「実体」を感じさせます。
    あとがきに「中国は不案内」と書かれているのだが、その説得力は素晴らしい。

    • しずくさん
      随分前に読んだ記憶があります。

      〉愛の形なんて色々あるよ。
      家族も色々な形態があると、最近読んだ「偽姉妹」で感じ、作家さんの創造力に...
      随分前に読んだ記憶があります。

      〉愛の形なんて色々あるよ。
      家族も色々な形態があると、最近読んだ「偽姉妹」で感じ、作家さんの創造力に驚きます。いえいえそうではなくて現(うつつ)が先を走っているのかも。「万引き家族」にも似たような感想を持ちました。
      2018/07/06
  • SFファンタジーのような読後感があった。雲南に同性婚の習慣があると知った日本人駐在員の妻。夫の仕事の役に立つということから、若い女性通訳と結婚することになった。元来レズビアンでもなんでもないのだが求められて夫となる。

    あり得ない展開のようでありそうな気がして読んでいた。雲南の街や中国人との付き合い、お茶や自然環境についての描写に深いリアリティがあったからだろうか。
    作者は自身の雲南体験をもとにしているのか、そういう体験談を誰かに聞いて参考にしたのか等考えていたが、あとがきによるとそんなことは一切ない。
    すべては作者の机上の知見と想像力によるものだそうだ。雲南の雰囲気にどっぷり浸からされた読者としては舌を巻くしかない。
    恐るべし村田喜代子。骨太の読み応えのある物語を読んだと思う。話のメインは駐在妻である主人公と相手の娘と夫が中心の狭い範囲の出来事とも言えるが、確かにここではない世界があった。

  • なんだかあっという間に読み終わってしまった。ちょっとさみしい。もうすこし長く、この世界のこの景色のなかでの暮らしに浸っていたかった気がする。明け方の雨の匂い、昼下がりの気怠い蒸し暑さ、庭にうっそうと繁る木々の息づかいまで伝わってくる。

    働きものの女性達が、なりわいをたてて、子どもを育て、生活をまもっていくために、嫁を娶る。わかりやすい道理じゃないですか。

    行ったことない村落の風土を、ここまで微細にSensualに書けるというのはすごいことだ。

  • 雲南に、ここで語られるような文化を持つ少数民族が本当にあるのだと思ってしまうほど、無理なく現実味をもって語られる暮らしぶりに、自分が馴染んでいく。

    お茶の描写も面白く、中国茶入門読本としても大変楽しめた。藍染めも含めて、「発酵」「時間」がサブテーマのように感じられた。

  • 大きな木を抱き「気」と取り込む英姫
    子どもが生まれて名前が変わるー「中身のない名前のような気がするわ」
    名まえってアイデンティティそのもの。
    人の喜ぶ様、楽しむ様を見て喜ぶ、楽しむ-そんな人でありたい。

  • 1970年代の雲南省の奥地が舞台。商社マンとその妻と通訳の娘という顔ぶれ。タイトルをみると夫と通訳の娘が、と思うけれど、妻と娘の物語だった。
    中国の少数民族では、女性同士の結婚が認められている部族があるらしい。一夫一婦制に慣れきった身としては、斬新だとは思う。でも、少数民族によっては、夫が通い婚だったり、離婚に対するハードルがとても低かったりして、いわゆる女性に優しいというか、女性が生きやすい結婚の形だな、と思う。
    女性の結婚といっても、助け合いの意味合いが強くて、性的指向はそんなに強調されていない。
    そういう形がありなのも、そもそも少数民族自体がひとつの共同体で、個々人の結婚離婚はそれを揺るがせにしないことも大きい。それだけ自然の厳しさと隣り合わせということかと。
    ともすればスキャンダルな内容になりそうなのに、村田さんの本になると不思議と現実味が薄れて、上品で桃源郷のような雰囲気すら感じさせる。雲南省や少数民族の村の描写も魅力的だった。

  • 「熱に浮かされたよう」とはきっとこういうこと。この人の小説を読んでいると、自分の日常にある希望や焦燥やいろんなことが遠くに霞んでしまうよう。リアルなことが遠景になって、目の前には雲南の蒸し暑さと喧騒と女性たちのパワフルなエネルギーが充満しているよう。
    海外に留学していたときのことを思い出す時間に似ている。どんどん昔のことになっていくのに不思議と色褪せない、誰に話すこともないけれど自分の中では今も皆の声が聞こえるほどリアルな、輝く思い出。
    すごい読書体験だなぁと、ため息をついて思う。自分の記憶と混同しながら、知らないはずの雲南のことを思い出しながら、思う。

  • 3.8/102
    内容(「BOOK」データベースより)
    『この契りは永遠に…。女が女を娶る。中国雲南の奥深い地で過ごした忘れ得ぬふたりの愛の生活。奇妙な同性婚、傑作長篇小説。』

    『雲南の妻』
    著者:村田 喜代子(むらた きよこ)
    出版社 ‏: ‎講談社
    単行本 ‏: ‎253ページ

  • 小川洋子さんの『博士の本棚』で紹介されており、面白そうだと思って購入しました。

    ここに出てくる民族の結婚の文化はかなり先進的だなと感じました。主人公と同性婚をする"英姫"は、不思議な魅力を持った人物です。主人公と英姫の関係は恋愛のようなシスターフッドのような、上手く表現できませんが、読んでいてうっとりしました。私は今のところ同性愛者ではなく、百合好きというわけでもなかったのですが、この2人の関係に"憧れ"を抱きました。「結婚って何なんだろう」と読み終わった後もずっと考えています。

    話のテンポも良く、最後のほうはドキドキしながら読み終えました。情景描写も素晴らしく、まるで自分も雲南の風や香り、音や光などを実際に感じているような気分になります。また、中国茶に関することも語られているので中国茶好きには堪らない一冊です。

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著者プロフィール

1945(昭和20)年、福岡県北九州市八幡生まれ。1987年「鍋の中」で芥川賞を受賞。1990年『白い山』で女流文学賞、1992年『真夜中の自転車』で平林たい子文学賞、1997年『蟹女』で紫式部文学賞、1998年「望潮」で川端康成文学賞、1999年『龍秘御天歌』で芸術選奨文部大臣賞、2010年『故郷のわが家』で野間文芸賞、2014年『ゆうじょこう』で読売文学賞、2019年『飛族』で谷崎潤一郎賞、2021年『姉の島』で泉鏡花文学賞をそれぞれ受賞。ほかに『蕨野行』『光線』『八幡炎炎記』『屋根屋』『火環』『エリザベスの友達』『偏愛ムラタ美術館 発掘篇』など著書多数。

「2022年 『耳の叔母』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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