プラネタリウムのふたご

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  • Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062118262

作品紹介・あらすじ

星の見えない村でうまれ、ひとりは手品師になり、ひとりは星の語り部になった。『麦ふみクーツェ』につづく、書下ろし長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • プラネタリウムで拾われた双子の赤ちゃん、テンペルとタットル。泣き男と呼ばれるプラネタリウムの解説員に育てられた二人は、とあることから手品師と郵便配達員に道を違えていく。

    騙されること、騙すこと。大きな悲しみがあったとしても、それを驚きに変えていく。そして、密かに手をとり、繋がっていく。

    星座にまつわる神話のような静かな語りの中に、何か大きなものに見守られているような暖かな眼差しを感じる物語。

  • ずっとずっと、騙されたままでいることにします。

  • 宮沢賢治の童話のような雰囲気もありつつ。

    星のみえない村のプラネタリウムで育ったふたごが、一人は世界をまわる手品師に、一人はプラネタリウムの語り手に育っていく。

    銀髪のふたご、間抜けな工場長、村はずれの魔女めいた老婆、稀代の手品師とその一座などなど、登場人物や小道具、舞台装置はホントに童話の世界。

    それが全体的に幻想的な空気を醸し出してるんだけど、語られる現実は結構シビアだったりする。
    それでも最後に伝えられるのは、やっぱりすごくストレートな愛のメッセージ。

    いやーとても好きな作品でした。
    あちこち泣けた・・・。

  • プラネタリウムに置き去りにされていたふたごを、プラネタリウムを運営する”泣き男”が拾って育てる。彼はふたごを星の名にちなんで、テンペル、タットルと名付けた。
    やがて2人は成長し、テンペルは手品師として世界へ羽ばたき、タットルは郵便配達夫兼プラネタリウムの特別解説員として大人子どもに夢を与える。

    最後は悲しい結末になってしまったけれど、なぜか温かい気持ちで読み終えた。人は失敗することもあるけれど、その失敗をやるべき仕事で挽回すればいい。その後悔や努力を見ている人は必ずいるから。

  • とても描写がきれいで惹きこまれました。
    だましだまされることの幸せと哀しみ、そんなことを考えました。

  • 空に輝く星が、
    ここでは見えない!と言うのなら、

    プラネタリウムに行きましょう。

    (所詮、偽物の星でしかない?)
    (窮屈な有限の宇宙?)

    捨てられた双子の赤ちゃんの泣き声までどっかから聞こえてくるし!

    あぁ、
    でも…
    その解説員の声はとても優しくて
    「目を閉じて」

    偽物の星に騙される事の面白さを思ってごらん。

    ひょっとしたら、より多く騙される才能のある人程、
    幸せなのかも知れないよ。

    双子はいつの間にか泣きやんで、
    どこかでじっ…と星を見ている。

    この子達の成長と共に、有限の宇宙がゆっくりと広がる様を魅せてくれる温かい物語。

  • いしいさんの文章が本当に大好きです。
    六本目のゆびでつながりあった、銀色のふたご。

  • 「だまされる才覚がひとにないと、この世はかさっかさの世界になってしまう。」

    この地球の北半球のどこかのちいさな村。
    星の見えないこの村のプラネタリウムに捨てられた、銀髪のふたごの物語。

    久しぶりに「純文学」と思われるものを読みました。
    初めは、子供向け?と思ったけど、しっかりとオトナ向けのメッセージが
    含まれた、ステキなファンタジーでした。
    内容はぜんぜんファンタジーではありません。魔法も不思議な出来事もないし。
    でも、ふたごのテンペルとタットルやその他の登場人物たちの優しい気持ちや プラネタリウムという場所、田舎の村の情景描写・・・
    まるで気持ちよく魔法にかかったような気分にさせてくれます。

    その上での、冒頭の一文。
    すぅっと沁みました。

    他にもたくさんステキな言葉が散りばめられていましたが、
    私にはこの一文が一番キました。

    ちょっと厚めの本ですが、優しい気持ちになれるオススメの一冊です。
    「童話物語」と並んで、何度も読み返したい本になりそうです。

  • その村は、北側に禁猟区の森、海外資本の化学工場にその他の三方を囲まれ、工場の巨大えんとつから出される煙のせいで一年中もやに覆われている。しかし村の人々は一年中星を見ることが出来た。解説員の泣き男が切り盛りするプラネタリウムにて。ある日、銀色の髪をもつふたごの赤ちゃんがプラネタリウムに捨てられていた。ふたごは星座の名前にちなんでテンペルとタットルと名付けられた。

    心に染みる物語。序盤はほのぼのとした話でこのまま終わるのか、と予想していましたが、テンペルとタットルがそれぞれ彼らにしかできない仕事に巡り合い、別の道を歩む辺りからの展開にどんどん引き込まれていきました。

    いしいしんじさんの物語に共通するのは「大切な誰かを想う優しさ」だと思う。
    歯のない老犬と靴をなくした兄貴も、
    目の見えない老女も、
    ウサギを愛する少年も、
    テオ一座も、村の人々も、
    そして泣き男と銀色の髪のふたごも…
    すべてがやさしい。

    「それ以上に大切なのは、たったいま誰かが自分のとなりにいて、自分と同じものを見て喜んでいること、こころから信じられることだ。そんな相手が、この世にいてくれるってことだよ。」

  • もうずいぶんと前、たぶん20年前に大好きな友人から紹介されて買ったまま読んでいなかった本。
    ようやく読む気になって、ゆっくりと読みました。The物語という感じで、読み進める中で作品の世界がゆっくりと形作られていきました。

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著者プロフィール

いしい しんじ:作家。1966年、大阪生まれ。京都大学文学部卒業。94年『アムステルダムの犬』でデビュー。2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲二文学賞、12年『ある一日』で織田作之助賞、16年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。そのほか『トリツカレ男』『ぶらんこ乗り』『ポーの話』『海と山のピアノ』『げんじものがたり』など著書多数。趣味はレコード、蓄音機、歌舞伎、茶道、落語。

「2024年 『マリアさま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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