ブラフマンの埋葬

  • 919人登録
  • 3.41評価
    • (80)
    • (136)
    • (349)
    • (36)
    • (5)
  • 207レビュー
著者 : 小川洋子
  • 講談社 (2004年4月13日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (154ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062123426

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

ブラフマンの埋葬の感想・レビュー・書評

  • ブラフマンと名づけられた動物は何なのか、最後まで明らかにはされない。
    体型の描写から言うとビーバーかカワウソかとも思うが定かではない。
    主人公が飼っていたのは、ペットでも動物でもなく「ブラフマン」なのだ。
    およそ生き物を飼ったことのある人なら、ここはおおいに共感できる部分だろう。
    碑文彫刻師の存在が、それを明快に語っている。
    世界にただひとりの、時間と心をわけあった友。それがブラフマン。
    主人公が自分のことを語る場面は過去形で語られ、ブラフマンのことを語る場面は現在形で語られる。
    そこが実に生き生きとしている。
    皮肉なことに、人間の「娘」にわずかに心を奪われた隙に、ブラフマンはあっけなく命を落とす。
    淡々と書かれた終盤の埋葬場面が、それだけに切ない。
    「淋しがらなくてもいい、僕はちゃんとここにいるから」
    そういえば私も、愛猫の死にそういって聞かせた。泣けるなぁ。
    無国籍風の舞台と、無駄を省いた文章が美しい。
    装画は山本容子さん。

  • 小川洋子さんの本ばかり選んで読んでしまうのは
    このひとの、こんな色彩感覚にも似たこの文才にあるとおもう。

    ブラフマンという ネコなのか、犬なのか、はたまたイタチなのかも
    わからない「謎」の動物の存在が「僕」の家に傷を負ってあらわれる。

    小川洋子さんの文章によく使われるのだけれど
    このかたの文章には「いち個人」の具体的な名前をつけない。
    わたしは「私」であって、ぼくは「ぼく」
    少女は「娘」であって、ほかを「彫刻師」など職業で表現する。

    またその職業もうつくしいし、外国か日本か
    そんなことはどうでもよくて、そこの世界観に生きる「ひとびと」という
    存在がある。

    もっとも好きなのが今回のような「僕」の存在や語りかけかただ。

    「無理しちゃダメだ」
    僕は頭を撫でた。
    「君は怪我をしているんだ」

    喧騒の中で生きているのをわすれるこの時間の静けさと対話のなんとやさしいことだろう。「僕」の存在というのは決してしかりつけたりなどしない。
    けれど謎の動物のいたずらにも「これは机といって、本を読んだり、食事をしたり、手紙を書いたりするものなんだ・・」と説明をする。
    人はこの説明という作業にどれだけ心が救われるかわからない。
    ここに「愛情」というものをとても感じるのだ。

    どうしてこんな風にすてきな言葉をえらぶんだろう。
    小川洋子さんの世界というのは色彩のように生まれて、水彩のように水を多く含んでいる。鮮やかな色をぼんやりと描き、ときには油絵のようにねっとりとけれど、全体はやさしく物語る。

    ブラフマンの最後ですら、彼女は「僕」としての注釈をつけた。
    けれど最後の一文に、電車の中で涙してしまうのだった。

  • 元資本家の別荘を管理する管理人。芸術家のお世話をする彼が見つけた不思議な生き物。その生き物とは、一体なんだろう?

    暗すぎずない内容で読後、何だかちょっとほっとした。

  • 【状態】
    展示中

    【内容紹介】
    夏の初めのある日、ブラフマンが僕の元にやってきた。それは傷だらけの小さな生き物だった。思いだせばいまでも温かな気持ちになれる、奇跡のような楽しい毎日。

    【キーワード】
    単行本・家族・生死



    +++1

  • つい50年前まで川を下る他には来る手段がなかった小さな村。そこに芸術家たちのために無償で提供されている家がある。創作者の家と呼ばれるその建物に住み込みの管理人している僕とある夏の夜迷い込んできた小さな動物、ブラフマンとの物語。

    ブラフマンは犬としか思えないのだがそうは書かれない。
    一体なんなのか?何故言ってくれないのか?そればかりが気になってしまい集中できなかった。ブラフマン目線のカギカッコつきのセリフの部分も必要だったのか疑問。

    土地と建物と人物と出来事の関係がうまく絡み合っていないような気がした。それぞれはとても魅力的なので余計に惜しい。後日談があれば読みたいくらいだ。

    小川作品にはもう少しの熱量とさらに癖のある人物を求めている。

  • 数時間で読めてしまった。やっぱりこの人の世界観が好き。奇想天外なストーリーがある訳ではないけど、心がスーッと落ち着く。

  • ブラフマンってなんだったん?
    罪悪感あり?
    こんなのって・・・理不尽

  • 結局ブラフマンって何だったんだろう。私は犬だと思ったけれど…。淡々と流れるブラフマンとの生活はとても穏やかで、きっとそうなんだろうな、という躾の過程も微笑ましくて。時おり出てくる彼女と彼の描写は少し生々しかったし、石棺の描写は神秘的でもあり、おどろおどろしくもあり。それでも流れる時間はとても穏やかに感じました。最後に来なかった彼女には苛立ちを感じずにはいられませんでした。車の運転のあたりから、あまり好きにはなれない人ではありましたが…。

  • 他の人の頼みならブラフマンを優先したろうに、娘のことが好きだったから、ブラフマンをひとりにしてしまった。悔やんだろうな。良い意味で人物像が掴みにくく、余韻の残る不思議な話だった。

  • 美しい文章で綴られる、主人公と謎の生き物との短い交流。
    とりあえず、すぐ読めた。
    ブラフマンは結局なんだったの?カワウソ?
    ブラフマンはちょっと可愛くて、愛らしくて、別荘の皆に見送ってもらえたのはよかった。ただ、主人公の男が若干気持ち悪い。好きな女の子のストーカーみたい。彼氏とちちくりあってる場所の詳細とかどうして知ってんのさ(ドン引き)。
    美しいようで薄気味悪く、泣くまでも笑うまでもない微妙なバランスを保った不思議な小説でした。
    泉鏡花賞といわれると、確かにな、といった感じです。
    ただ、現実世界とは解離したどこかの世界のお話風の展開は、どこか梨木香歩や川上弘美を連想させ、この手の話は先鋒がたくさんいるのにな、といった感想。
    彼女の言葉使いには惹かれましたが、内容はあまり残らなかったです。

  • タイトル通り、いつブラフマンが死んでしまうのかヒヤヒヤしながらページを捲り……。
    そして予想通り呆気なく。
    小川洋子さんの描く男女の距離感、それがいつも微妙で美妙で息苦しい。

  • タイトルからして、ブラフマンが死ぬのは分かっていたけど、
    主人公が好きな女の子に全く相手にされす、しかも友人としても心がか弱内状況での踏み出し(女の子が恋人と逢瀬を楽しんていることを僕は知ってる。どこの場所、時間でさえもと女の子に告げて、ビックリした女の子がアクセル踏んだらブラフマンが飛び出してきて、轢く)たら、ブラフマンが死ぬのは悲し過ぎだと思った。

    ブラフマンを嫌っていたレース編みの作家でさえ、ブラの葬式には出るのに、轢き殺した当の女の子は、恋人との逢瀬の日だから出席しないし…

    なんか恋愛の不毛さ、世の中の不条理さを感じた。

    そしてやっぱり小川洋子は村上春樹に似てる。
    現実的でない、ここではないどこか感、距離感が。

    ストレス感じている時は、人との一定の距離感があるこの人たちの作品にすごく癒される。

    以下引用
    <創作者の家>で管理人をしている主人公のもとに、ある日、野生の動物(何の動物か最後まで不明)
    彼は動物にブラフマンと名前をつけ、面倒を見ることに。
    主人公とブラフマンと、静かでささやかな物語。

    死のにおいがそこかしこでするおとぎ話。
    ブラフマンは、芸術家と違って何も生み出さない僕が、ブラフマンを育てることで初めて何かを生み出し、そして初めて家族を持ったということなのかな?
    その大切な家族を、身勝手で愛するに値しない娘のせいで亡くしてしまうのが、悲しい。

    【以下引用】
    今回紹介する『ブラフマンの埋葬』は、芸術家が集まる施設の管理人をしている〈僕〉と一緒に暮らし始めたブラフマンと名付けた動物との交流が描かれた、シンプルな物語。170ページほどの作品です。

    なにげない日常が描かれるだけで、とりたてて出来事らしい出来事は起こりませんし、読み始めた時点すぐ、結末の予想はある程度ついてしまう作品なので、退屈な小説という感想を持つ方もいるでしょう。

    しかし、この作品は映画やマンガなど他の媒体では表現することの出来ない、小説ならではの面白さに満ちています。まずなんといっても主人公が飼う動物ブラフマンですが、何の動物か分からないんです。

    チョコレート色の瞳、黒いボタンのような鼻、普段は隠れている二本の前歯、水かき、ひげ、尻尾を持っていて、なんでもかじる癖のあるブラフマン。主人思いな点で犬か或いは水辺の小動物を思わせます。

    姿かたちもよく分からない上になんの動物かもはっきりと書かれないことで、ブラフマンは物語の中でメタファー(それが他のなにかを表すこと)として、単なるペット以上の役割を果たすこととなります。

    つまり、ペットのようであり赤ん坊のようでもあるブラフマンはもっと他のなにか――たとえば主人公の心や感情だったり、人間が持つ業みたいなものだったり――の象徴として読むことが出来るのでした。

    そしてそういうことはブラフマンだけに限りません。ある時主人公は村役場前の広場の骨董市で古い写真が売られているのを見つけます。


    「こういうの、どこで仕入れるんです?」
    「身寄りのない年寄のところだ」
     店の主人は、彼自身が身寄りのない年寄、といった風情の、歯の抜けた腰の曲がった老人だった。
    「そういう家の、押入れの奥に忘れられたアルバムを仕入れる」
    「へえ、そうなの……」
     他に客がいなかったので、僕はじっくり写真を選ぶことができた。
     写真はほとんどが変色していた。主人の言うとおり、多くにはアルバムからはがした糊の跡が、縁に残っていた。いくらめくっても、僕の知らない風景、知らない人々の顔が出てくるだけだった。時折気が向いて裏返してみると、かすれかけたインクで、日付や名前が書いてあった。もう二度と、誰に思い出してもらうこともない写真ばかりだった。
    ... 続きを読む

  • 〈創作者の家〉で住み込み管理人として働く「僕」とブラフマンの話。

    ブラフマンとは何だったのか。なんとなくビーバーのような生き物を想像しながら読んだ。
    「僕」と彫刻師、「僕」と雑貨屋の娘、「僕」とブラフマンの生活。
    おなじみの何人かとふれあいながら季節は進み、ブラフマンは唐突に死ぬ。かわいそうと思う間もなく、車に轢かれ、埋葬される。

    行間で読ませる小説は苦手だな。彼の死を持って淡々と物語が終わるのは忍びなかった。

  • 10年ぶりの再読。
    初読した際、哀しさを含んだ静けさや、正体の見えないプラフマンとその音の響きや衝撃的な結末に心を奪われたとても好きな本だったのに、今回は「僕」の想像力の欠落した不用意な行動に憤りを感じながら読了した。レース編み作家と碑文彫刻師が私の憤りを鎮めてくれたのが、救いだった。
    もうそれ程好きな本でなくなったのが、不思議で少し淋しい。

  • しまった、タイトルから慮るべきだった。ラストに衝撃を受けてしまった。きっとカワウソかなにかだったんでしょうね、ブラフマンって。きっと赤ちゃんの時から可愛かったんでしょうね。それがあんな事に…。それまでの「僕」との交流があまりにも愛にあふれたものだったので、ひときわ悲しい。

  • 飽きずに読めたけど面白くはなかった。
    ブラフマンが結局なんなのか、写真は?
    娘は殺しといて、埋葬に出席しない。
    よくわからなかった

  • 奇抜な作品を描く小川洋子だが
    この作品は奇をてらいすぎた失敗作だと思う
    「数式を愛した」を超えるまでの習作かな
    1.9点

  • 図書館から借りてきた本の一冊。愛らしいブラフマンに愛着が湧くにつれ、ページを捲るのが辛い、でも読まずにはいられない。そんな作品。

  • <創作者の家>で管理人をしている主人公のもとに、ある日、野生の動物がやってくる。
    彼は動物にブラフマンと名前をつけ、面倒を見ることに。
    主人公とブラフマンと、静かでささやかな物語。

    すっとはじまって、すっと終わっていく小説だった。
    だらだらと引っ張らないからこそ魅力的な本なのだと思う。

  • ゆったりした物語。頭休めにちょうどいいかな。

  • 文章の豊かさ。小川洋子の文章は優しい時間が流れます。
    ブラフマンの埋葬時、集まった人たちは、最初からブラフマンの埋葬のために創作者の家に訪れた。
    そんな気がしてならない。
    読んで良かったです。
    ブラフマンが愛おしい。

  • アーティストが集まる宿泊施設で働く主人公とそこでであったブラフマン(何かわからない動物)の話。

    ふわふわと頼りなく、何が書かれているわけでもないのになんだか特後に切なさと虚しさと悲しさと、ほんの少しの満足感がこみ上げてきた。
    ブラフマン、とても可愛かったのに、あっという間に違う世界に行ってしまう。
    私たちの世界も、気づいてないけどそうなんだろうな。
    なんだか無性に切ない気持ちになった。

  • よくわからないことも多いけれど、読み終わったらいい本だな、と思った。

  • ブラフマンとアートマン、大学か高校だっけ?授業で習った。
    この名前に意味があるのかと思ったけど、そうでもなさそう。
    でも、僕がブラフマンを抱えて眠る姿を想像していると、
    梵我一如とはこういうことかもと思えてしまった。
    我が家の猫を抱いて眠っていると、猫があごの下に
    一生懸命顔をうずめてくる。
    猫と自分との境界が解けてなくなるといいと思う。

    この物語も最小限の登場人物と説明で進んでいくなかで、
    ブラフマンのおくるみを一晩で編んでくれたレース編み作家が
    大逆転でいい人に思えた。
    ブラフマンは自分はかわうそであったら愛らしいと思った。

  • 「僕」とブラフマンの出会いから埋葬までの生活を静かに描いた作品
    僕がブラフマンを泉においてきたところが納得できない…
    この、あっさり終わってしまった感もなんとも言えず、微妙

全207件中 1 - 25件を表示

ブラフマンの埋葬を本棚に「読みたい」で登録しているひと

ブラフマンの埋葬を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

ブラフマンの埋葬の作品紹介

夏のはじめのある日、ブラフマンが僕の元にやってきた。あたたかくて、せつなくて、いとおしい。こころの奥に届く忘れられない物語。

ツイートする