人の値段 考え方と計算

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062124744

感想・レビュー・書評

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  • 2004年刊。共同執筆論文、プロ野球監督の貢献度、製品化し高利益をもたらした特許の対価など、公開市場がなく価格化しにくいものを、社会物理の手法で分析。著者は元来、環境・公害など、結果に対する影響の科学的措定が可能なものを専門としていた。しかし、販売等、再現可能性が低く、これらが結果に影響した点の分析評価するのは、公害とは大分違う。しかも、正直いって、著者の説明は何の説明になっていない、あるいは、一つの見解だが、一般化・抽象化できていないとの感。解決は貢献度割合を含む基準化しかなかろう。著者は東大名誉教授。

  • 5年程前に、元日亜化学の中村氏が特許裁判をおこして、第一審で200億の価値があるという判決が下され、その後の高等裁判所において和解(数億円程度)されたニュースがありました。この時に話題になったのが、彼の業績の価値でしたが、結果の数字は報道されたものの、その数字が出てくる過程の論議はあまりされなかったと記憶しています。

    この本では、西村氏が彼が考えたモデルの考え方を詳しく解説しています、この考え方は、社会人である私にとって、何かを評価するときのモデルを考える上でとても役に立ちました。

    以下はためになったポイントです。

    ・選手から心服される監督たちは、「勝ちは選手の勝ち、負けは監督の負け」と思っている(p29)

    ・教授には5つの顔がある、1)研究者(プレーヤー)、2)研究主導者(監督)、3)データ解析、4)論文執筆、5)論文校閲、であり、だれがどの段階を担当したかを明確に判断する必要がある(P81)

    ・会社に勤める研究者は、会社が決めた方針・指示に従って研究をしており、指示された業務を遂行する中で自然に成し遂げたものと考えられる(P118)

    ・中村氏の裁判のポイントは、基本特許(ツーフロー特許)の特許権の帰属であった、裁判所は特許権の会社への譲渡は有効であったと認めたうえで、その対価を200億円とした(P121)

    ・発明の対価(35条)を法律にした特許法の骨格ができたのが1921年、35条の条文はそのころの技術や、発明者と使用者の関係を想定して書かれている(P150)

    ・最初の特許法の目的は、国王に付与されていた独占権を無効にするために制定された、例外として新規の発明のみ独占を認めた(P153)

    ・ドイツは当初、発明者の権利を擁護していなかったが、1936年のナチス特許法により発明者保護に転換した(P154)

    ・事業を成功に導くのは、技術・企業化・トップマネジメントの3要素が必要(P164)

    ・青色発行ダイオードの事業化における貢献度は、発明者:50%(中村氏はこの中の80%程度)、事業化リーダー:25%、オーナー経営者:25%と考えられる(P190)

    ・第一審判決では、日亜が独占しないで実施料20%で他社に使わせた場合の利益を計算している(P194)

    ・日亜化学の依頼先の新日本監査法人は、年利率(資本コスト率)
    計算を16.6%としている、この数字は資本資産価格形成モデル理論から導かれるものであるが、株式市場の期待収益率(4%)と比較して高すぎる(P215)

    ・計算の考え方で新日本監査法人と異なるポイントは、1)研究開発用固定資産未償却残高をコストに入れない、2)自己資本コストが3分の1にした、3)研究開発投資にともなう危険負担コストを実態に合わせた点、である(P223)

    ・ 1993年から2001年の期間に対して中村氏が受け取るべき金額は、70億円程度(p223)

  • 図書館で借りた。

    あるチームで作業を行い利益を出した場合、誰がどのくらい分け前を取って行くのか、という問題に対する考え方を説明し、青色発光ダイオードの中村修二を例に取ってその考え方を使ってみる、という内容。

    置き換え可能な人には市場で決まる対価を払い、それ以外の人について貢献度に応じて利益を分配するのが良い、という考え方。
    貢献度の考え方は次の2ステップ。1)作業をいくつかの細かい単位に分け、その単位ごとに重みをつける。2)そして各人がどの単位をどれくらいやったか、を計算する。

    作業の分割や重みづけが非常に難しいと思うが、そこさえしっかりと合意すれば争いを減らせる考え方のように思った。

  • 【2008/04/06】<br>
     青色発光ダイオード訴訟の200億円判決について、正しい値段を工学的に計算しようとしている。裁判の場で相対的な価値を決めるのではなく、ガリレオ物理を用いて絶対的に価値を決めようとする。目に見えない仕事への「貢献度」を計算しようとする姿勢には驚いた。
     具体的には、仕事の場(社会)をゲゼルシャフトであるとし、それぞれの人をリプレーサブルな人とそうでない人に分ける。リプレーサブルな人には市場価格を支払い、そうでない人たちには生み出した利益を貢献度により分配する。
     青色発行ダイオードの場合は発明者、事業化リーダー、オーナー経営社の3者が非リプレーサブルであり、それらの貢献度評価が難しいところだという。筆者はあの手この手でそれを計算し、結果として中村修司が受け取るべき対価は約70億円だと結論づけた(判決は200億円)。

  • 会社への貢献度に対する正当な対価とは?
    もう曖昧では済まされない。

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