エリカ 奇跡のいのち

  • 講談社
4.06
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  • Amazon.co.jp ・本 (25ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062124850

作品紹介・あらすじ

わたしが1944年に生まれたことはたしかです。でも、誕生日がいつであるのかはわかりません。生まれたときにつけられた名まえもわかりません…。お母さまは、じぶんは「死」にむかいながら、わたしを「生」にむかってなげたのです。第2次世界大戦中のドイツで奇跡的に生きのびた、ひとりの女性の物語。小学校中級〜一般。

感想・レビュー・書評

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  •  平和を願うための絵本として手にした作品になります。1944年の第二次世界大戦中、主人公は生まれて2~3カ月程度の女の子の赤ちゃん、ユダヤ人強制収容所に向かう汽車が村を通過中、車窓から母親は赤ちゃんを放り投げ…ドイツ人に拾われた赤ちゃんは、エリカと名づけられ成長し家族を持てたというストーリーです。

     ヒトラーのユダヤ人虐殺において600万人もの尊い命が犠牲になっています。そんな中、少しでも生き残れる可能性があるのなら…と、赤ちゃんを汽車から放り投げる母親…その気持ちを思うと、いたたまれない気持ちになります。そして、赤ちゃんをエリカと名付けて大事に育てたドイツ人の彼女も、そしてエリカの夫となった彼も…そこにあるのは、尊い命を守りたい…その気持ちだけだったのだと思います。

     戦後、そして今の時代でも変わらないのは、命はどんなこと、どんなものよりも尊い…!!絵本だけれど、メッセージ性の強い内容なので多くの人に読んでもらえたらいいなって感じました。

  • 命が受けつがれる奇跡『エリカ 奇跡のいのち』 [絵本] All About
    https://allabout.co.jp/gm/gc/451665/

    Ruth Vanderzee
    http://www.ruthvanderzee.com

    Roberto Innocenti
    http://www.robertoinnocenti.com

    『エリカ 奇跡のいのち』(ルース・ジー,ロベルト・インノチェンティ,柳田 邦男)|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000182290

  • 2004年発表。


    2005年第10回
    日本絵本賞・翻訳絵本賞受賞作。


    お母さまは、
    自分は『死』に向かいながら、
    わたしを『生』に向かって投げたのです



    第二次世界対戦中のドイツで
    奇跡的に生き延びた
    ひとりの女性エリカを描いた
    実話に基づく絵本です。



    とにかく写真と見間違うほどの
    緻密でリアリティある絵に圧倒されました。

    モノトーンで統一された絵に
    ユダヤ人を表すバッジの黄色と
    エリカがくるまれた毛布のピンク色だけに
    色がつけられています。


    ユダヤ人強制収容所行きの列車に乗り込む人々を描いた絵。
    このまま列車に残っていては
    確実に殺されてしまう。

    藁をもすがる思いで
    自らの赤ん坊を
    収容所へ向かう走る列車から
    投げ出す母親。

    愛する我が子を、走る列車から投げなければならなかった、
    母親の気持ちを考えると
    胸が締め付けられ、
    涙が止まらなくなります。



    エリカはその後
    奇跡的に生き延び
    皮肉にも自分を殺そうとした
    同じドイツ人の手によって育てられます。


    誕生日も知らない娘に
    つけた
    エリカという名前。

    自分自身が危険な目に合うのもかえりみず
    エリカを育てたドイツ人の勇気にも
    心を打たれました。



    訳者の柳田邦男さんは言います。

    例え生きられる確率は
    1万分の1であっても
    ゼロではない道を我が子のために選んだ母親の決意には
    一筋の『生』の光を求める崇高なものとして、
    人々の心を揺さぶらずにはおかないだろうと。



    600万人もの
    なんの罪もない人たちが、
    ただユダヤ人だということだけで殺されていった事実。

    この母親と同じように沢山の人たちが
    生きたいと願い、
    生かしたかったであろう命。


    決して忘れてはならないし
    悲惨な現実を
    二度と繰り返さないためにも、

    今の殺伐とした世の中で
    命の意味を考える意味でも、

    この絵本を読むことで
    子供にも大人にも
    語り継いでいかなきゃって思います。

  • 原題は"Erika's Story"というらしい。
    そこに副題として、「奇跡のいのち」と名づけたのはとても素晴らしく、訳者の愛がこもっていると感じた。

    「お母さまは、じぶんは「死」にむかいながら、わたしを「生」にむかってなげたのです。」

    という文がとても胸に突き刺さる。深く刺さって抜けない。どうしてこの文章が生まれたか、ぜひ手に取って読んでみてほしい。またこのお話は実話だというのだから、余計刺さるというもの。
    平和な現代だって、いろんな事情で生き延びられない子どもたちはたくさんいる。
    わたしたちのひとりひとりが、過去も未来も、すべて奇跡なのだと思うと、胸がぐっと熱くなったり、苦しくなったりする。
    奇跡。なんて希望に満ちて、重たい言葉なんだろう。
    訳者は「子どもも大人も一緒になって読み、一緒に考える本だ。」とあとがきを締めくくっている。
    ほんとうにそう思う。

    あと緻密で美しい絵も必見。
    白黒主体の絵も、鮮やかな色をふんだんに使った絵も、どれも美しい。
    死と生。
    それは絵からも感じられる。

  • 表紙を見てすぐに強制収容所に行く列車とわかった。そして兵士の横にある白い乳母車。当時、列車に乗せられた人たちはどうなるのか、多分知らされていなかった。それでも、母親は子供を救うため、列車の外へ投げた。誰かに助けてもらえるかもわからなかったのに。そして、危険を冒して養母は育ててくれた。エリカと名付けて。
    ユダヤ人虐殺に加担したのも、危険を顧みず助けたのも人間。戦争によっておかしくなってしまう人もいるし、そうならない人もいる。運かもしれないが、助ける側の人間になりたい、と思う。

  • クラスで読み聞かせした。

    いつも授業中は寝てるか、しゃべるか、落書きしてる彼も

    しっかり聞いて、自分なりの感想を書いた。

    そのくらい力のあるよい絵本。

    いろんな人に読んでほしい。

  • この本は絵本で柳田邦男さんの翻訳です。最近ではニュースで親の幼児虐待や少年犯罪が取りざたされています。赤ちゃんポストなども設置されたりしています。それはそれで意味があることと思います。私はこの本の中で『お母さまは、じぶんは「死」にむかいながら、わたしを「生」にむかってなげたのです。』のところで涙が出て止まりませんでした。自分は死ぬせめて我が子は・・・。というギリギリの決断だったんでしょう。最近は自分は遊びたい子供は二の次といった考えが見られます。ぜひ若いお母さんに読んでほしいです。もちろん子供さんに読み聞かせながら・・・。

  • お母さまは、
    自分は『死』に向かいながら、
    わたしを『生』に向かって投げたのです。

    -----------------------------------------
    (中1の息子が書きました)
    1944年、ドイツで生まれた名前もなかった赤子の話です。
    当時、ドイツではヒトラー率いるナチス・ドイツが権力を握っていました。
    その間、実に600万人ものユダヤ人が殺されました。
    その中に、ある夫婦と生まれて間もない赤子がいました。
    彼らは牛用の輸送列車に詰め込まれました。
    ある村を通るとき、列車が速度を落としたので、母親は「今だ!」と思って、窓から投げました。

    親は「死」に向かいながら、私を「生」に向かって投げたのです。

    -----------------------------------------
    (母のコメント)
    冒頭の柳田邦男先生の訳が、生きることへの緊迫感を伝えてくれるものでした。
    先日、講演を拝聴しましたが、ますますファンになりました。

    ちいさな絵本や”ひだまり”さんセレクト、
    10才までに読みたい”こころが豊かになる110冊”より。

  • ルース・バンダー ジー (著), ロベルト インノチェンティ (イラスト), Ruth Vander Zee (原著), Roberto Innocenti (原著), 柳田 邦男 (翻訳)

  • ナチスドイツや戦争のこと、命について考えさせられる作品。

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