- Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062135825
作品紹介・あらすじ
成果主義は企業を滅ぼす!CD、AIBOの開発責任者が再発見した日本型マネジメントの真髄。
感想・レビュー・書評
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【はじめに】
会社の同僚から薦められた本。ここで書かれた長老型マネジメントを知って正しくこれが自分の理想とするところだと腹落ちしたと言っていた。そして、それを実践しようとしていると。
著者の天外さん(ペンネーム)はソニーの元上席常務でその黎明期から成長を支えた方である。実際にCDやAIBOの開発を主導しており、その際の経験から導かれたものを何とか言語化しようとした結果がこの本だという。
【概要】
著者は、かつてのソニー、特に井深氏に薫陶を受けた。その成功体験は、グローバル化とそこで用いられた成果主義によって損なわれてしまったという。それはソニーに限った話ではなく、多くの日本企業がその罠にはまってしまった。日本企業の本当の良さや価値がそれとわからずに置き去られて、結果としても誰も幸せにならなかったという。著者もそれを防ぐことができなかったことを悔いている。
それが象徴的に描かれているのが、フロー理論のミハイル・チクセントミハイ教授との邂逅の場面だ。高橋伸夫の『虚妄の成果主義』 を読み、成果主義のマイナスを認識し、フロー理論と言うものを知って、それこそが自分のマネジメントの軸に近いものではないかと思い、教授と面会しその後の講演を聴講するのだが、そこでソニーの会社創立の目的にある「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」の部分がフローに入るコツだと紹介されて衝撃と悔しさに襲われた。ソニーも成果主義を導入して、活性化を目指したが、うまくいかなかったが、その成果主義を乗り越えるものとしてフロー理論の元がソニーの経営にあると指摘されたのだ。
この2004年の運命的な出会いから、著者は自らの理想とするマネジメントを「長老型マネジメント」として本書の中で提示する。それは、徹底的に部下を信頼し、受容し、サポートする。自律的な動きを妨げずに、部下が全力疾走できるようにするものだ。上司は、自分に反対する人や、指示に従わない人に対しても絶対的な包容力を示す。そのことで思い切り熱意と才能があるものがその能力を発揮し、スーパー・エンジニアとなる。それを促すマネジメント。このマネジメントは近年盛んに言われている心理的安全性の確保につながるのだとも思う。
かつてのソニーの成功の一端を見たような気がした。
【まとめ】
著者は、内発的動機の重要性について語り、「燃える集団」を作ることとフロー理論を結びつけ、「チームが自律的に目標に向かって一丸となって燃える」というのを長老型マネジメント理想とした。そのために「成熟した自我」というキーワードによって人間力や徳について力説する。それは上司の肥大する自我やマイクロマネジメントを諫める。とてもよく理解できる内容で、先の同僚がこれこそが理想と力説するのもよくわかる。
そして、若い頃であれば諸手を挙げて賛同していただろうところで、自分で果たして実行できるのだろうか、という疑義が湧き、また指摘されている弊害があることを認識しつつ仕方がないと思う自分がいることをまた認識する。
そんなことではいけないと思いながら本を閉じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
”天外伺朗さんの燃える集団をつくる術。
やり過ごし、フロー、長老型マネジメントなど、気になるキーワードがたくさん!!
それにしても、あとがきの生前葬には度肝を抜かれた。
http://www.holotropic-net.org/topics/topics060531/index.html
ここまでぶっとんだ人はとても魅力的。
<読書メモ>
・「企業経営とは何か?」「組織マネジメントとは何か?」など(略)
本書ではそれらの問題を、徹底的に、もっとも根本的なところから見なおした。
その結果、「指示・命令をしない組織マネジメント」など、従来の一般常識とは真っ向から対立する結論が得られた。(p.2)
・技術に命をかけるスーパー・エンジニアたちには、従来の管理型のマネジメントはそぐわない。彼らが生き生きと仕事に没頭できるには、特殊なマネジメント・スタイルが要求される。それを私は「長老型マネジメント」と名付けた(p.39)
・純粋さが保てたとき、サラリーマンはスーパーマンに変身する(p.39)
★長老型マネジメントは、自分に反対する人、自分の指示に従わない人に対しても、絶対的な包容力を示す。部下は、幼児が親に対するときに似た安心感を抱く。(p.47)
★チクセントミハイは、フローの特徴を次のように述べている。(p.73)
1.行為の集中、没頭している。
2.浮き浮きとした高揚感。
3.雑念がほとんどわかない。
4.時間間隔の喪失。
5.自分自身の感覚を喪失している。
6.その場を支配している感覚。自分が有能である感覚。
7.周囲との調和感、一体感。
#'00-'01 には確かにあった感覚だ。
・カール・グスタフ・ユングは、フロイトの説く無意識の奥底に、神々の萌芽とも呼ぶべき聖なる種子が眠っているという説をとなえた。(略)
さらには、無意識は個人で閉じておらず、全人類、先祖、動物にいたるまでつながっているという「集合的無意識の仮説」を呈示した。(p.91)
#ユングは、「無意識」で大切な聖なる存在と位置づけた。
・オダン博士は、その要因を「理性が邪魔をするからだ」と言い切っている。どんな女性でも、安産する力を持っている。DNAにちゃんと刻み込まれているのだ。(p.94)
・ガルウェイは、この3つの要素、知覚(アウェアネス)、選択(チョイス)、信頼(トラスト)の頭文字をとって「ACT(行動という意味を持つ)」をインナーワークの兵庫に据えた。(p.111)
・「やり過ごし」ができぬ部下は無能。また、指示が無視されて怒り狂う上司も無能なのだ。(p.126)
・「やり過ごし」を公に認め、私の指示が違うと思ったら、各自の責任のもとに無視しろ、と明言することが、長老型マネジメントの方向へ向かう第一歩。当然、必要と思うことは、指示がなくとも実行しろ、というメッセージもそれに含まれる。(p.128)
★--本当に面白いと思うアイディアを思いついたら、上司に内緒で物を作れ--
「これは面白い」という感覚は、そのアイディアがユニークであるほど、言語で他人に伝えるのは困難だ。そんな無駄な努力をするより、内緒で物を作って、それを見せた方が早い、というのがその趣旨だ。(p.127)
・抑圧した自我による精神のアンバランスを解消するため、実態以上に上司に「ダメ上司」の烙印を押す部下が多い。(p.153)
#部下側からも歩みよらないと
・こちらの抑圧された部分人格を「シャドー」という(ユング)
★成熟した自我の最大の特徴は、装わないことであり、飾らないことだ。欠点を兵器で人前にさらしてしまう。俗な言い方をすれば、八方破れで、無邪気に堂々と裸で生きている人をいうだろう。(p.181)
・表;社会の変化(p.200-201)
#いまは「成熟した社会」かな?
・日本の曹洞宗の開祖である道元は、「只管打坐」ということを説いている。
悟りを開きたいとか、涅槃の境地にはいりたいとか、さまざまな目的意識をすべてはずして、ただひたすら無心に坐禅に打ちこめ、ということだ。(略)瞑想のプロセスそのものが重要で、どこかに行こうとしてはならない。つまり、「いま、ここ」にとどまる自分を大切にすることだ。(p.214)
★長老型マネジメントというのは、ちょうど自転車を両手離しで乗っているようなものだ
ハンドルには触れていないので、あたかもコントロールしていないように見えるが、重心移動などで、じつはしっかりコントロールしている。慣れてくれば、けっこう細かいカーブも正確に曲がれるようになる。(p.223)
・ファシリテーターは、そのような議長的な役割はせず、すべてをなりゆきにまかせる。一切のコントロールを放棄するのだ。のみならず、一切の判断も放棄する。善悪、正誤といった二元論的な見方から離れるのだ。(p.229)
★長老型は、部下を評価するかわりに、信頼し包み込み、育てようとする。それぞれの個性を把握し、どうしたら伸びるかに、心をくだくのだ。それは、何があっても見捨てることがない。親が子供に対して抱く愛情と同質のものだ。(p.238)
★新しい時代は、社会全体の目的も、企業の目的も、ひとりひとりの意識の成長・進化になる。つまり、企業という器が、そのための教育の場になるのだ。
第13章で、後期自我から成熟した自我へ向かう有効な手法のひとつとして、瞑想をあげた。もうひとつの、きわめて有効な方法論は、実務経験を通じて真似び取ることだ。もちろんそのためには、真似る対象としてのよき先輩が必要だし、よき触媒も必要だ。(p.264)
#お、触媒!
・経営者は、従業員が意識の成長・進化をしやすい環境づくりに心を砕くとともに、自らも発展途上人であることを自覚して精進しなければいけない。指導層にとって大切なのは、意識のレベルそのものよりも、むしろ謙虚に自らを見つめ、変化し続けることだ。(p.265)
★企業の中心課題は次第に「感動」にシフトしていくだろう
(略)
企業存続の目的(新しい時代)
1.人を育てる場(経営者、従業員、関連するすべての人々)
2.企業の中心となる意識レベルの工場
3.人々に感動を与える存在(商品・サービス、経営者、従業員、企業そのもの)
・2006年7月11日には、本名の土井利忠の生前葬が厳かに、かつ大爆笑の中で執り行われ、私は死体、喪主、僧侶の一人三役を担当した。
残りの人生は、作家天外伺朗として生きていくことになるが、すでに五つの大きなテーマに取り組んでいる。(p.282)
#天外さん、どこまでぶっとんでいるんだろう!!
<きっかけ>
途中まで読んで長らく寝かしていたけれど、思うところがあって2012年12月から読書再開。” -
著者は、「NEWS」や「AIBO」で有名なソニーの元執行役員の土井さん。さすがにビジネスを途中で放り出すだけあって、この本も支離滅裂。本の最初は、なるほどと思わせる記述もあるが、総合的には何が言いたいのかさっぱり分からん。たしかに彼は、ビジネスの立ち上げはうまかったような気がする。著作はパーソナリティを反映するというが、まさにその通り。そうとうなカス本。
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前半部分の企業組織内のさまざまな現実やギャップは非常に納得できる。
特に、ダメ上司の再生産のくだり。
私は20年勤務しなかったので、心から尊敬出来る上司に巡り会わなかったのは確率論的には正しいのかも。
後半の著者持論展開部分は、どう解釈するかは難しい。
切り口としては面白いのだが。
2回目
虚妄の成果主義等一連の成果主義ものと合わせて読むと前半の経営論・組織論のところは腑に落ちる。
後半は宗教、精神論的な感じでやはりちょっとしんどいな・・・ -
プロジェクトチームにとどまらず、組織としての燃える集団をどう作っていくかが非常に勉強になった。
マネジメントとして大切な、モチベーションの上げ方、管理職としてのフォローの仕方など、著者ならではの手法を挙げられ、新鮮味のある内容だった。 -
タイトルと著者がSONY出身ということで、マネジメントに関する本かと思いきや、もっと深くて、自我の成熟などにより、人間的高みを目指すべき、ということが書いてあります。フロー理論や燃える集団といった状態にはそう簡単にはなれないけど、そういった経験を迎えると自我を感じるのかな。
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長老型マネジメント。
徹底的に部下を信頼。受容。
そしてサポートする。自律的な動き。
勢いを大切にする。
部下は、「やり過ごし」OK
各自の責任のもとに無視をする。
最終目的は徳で治めて、人を育てる。 -
フロー理論、燃える集団と天外司朗の他の本でおなじみのエピソードと理論についてビジネス面から具体的に示唆している。
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チームを燃える組織に変え、常識を超える成果をあげるためには「長老型マネジメント」が良いと説く。西堀榮三郎さんの話と酷似していた。
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長老型マネジメントのすすめ、マネジメントの徳で部下が自発的に最大限力を発揮する