未完成の友情

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 19
感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062136341

作品紹介・あらすじ

自分の人生はこれでいいのかと心に隙間風が吹くことは、誰にだってあるし何度かはある。それでもまた気を取り直して生きていくのが、わたしたちの人生だ。濃密な人間関係と情念を精緻に描いた甘口ではない、大人の文学。あなたには、親友がいますか。

感想・レビュー・書評

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  •  「生きていく」ってことは、「死」から遠く離れた所に居続けること。
     それでも「死」は必ずやってくる。自分の「死」に限ったことじゃない。身内の「死」、見知らぬ誰かの「死」、直接的であれ間接的であれ、立ち合う機会が増えて行くのが「生きていく」ということではあるまいか。
     そこに浮かぶのは悲しみや憎しみ、あるいは特別な感情が浮かばないことだってあると思う。肉親や親友、あるいは名前だけは知ってる著名人の「死」に対する態度は、それぞれ違う。それでも、そこに立ち合い「生きていく」ことを余儀なくさせられた者は、何がしかの経験を積んでいく。その積み重ねれた重みに耐えていくしかないのが「生きていく」ということではあるまいか。

     『未完成の友情』-完成された友情、っていったい何だろう。そんなものがあるのだろうか。
     何でもオープンに話し合えたり、いつも仲良しだったり、何かあったときは助け合ったり、会えば楽しい時間が過ごせたりする人間関係……それが完成された友情?そんなものがあるのだろうか。それが完成を意味するのだろうか。
     お互いに秘密を抱え、恨み羨み憎しみも抱え、助けの手を差し出す手間も惜しみ、特に楽しくもない時間を過ごす人間関係……そういうものをお互いに引き摺りながら「生きていく」日常が、片方の「死」によって均衡が崩れてしまう状態。その崩れた瓦礫を心のなかに溜めて積み重ねていくのが、真の「生きていく」ということなのかもしれない。
     決して完成することのない、バラバラになった人間関係の落ち着き先、収まり先を探し切れずに溢れ出す感情を描いたラストシーンが、読者に「生きていく」という重さを感じさせてくれる。

  • どうもアヤシイ観点から見てしまう僕ですが(笑)イソギンチャク・・・あの辺にインパクトが・・(待て)。時代がころころ変わってちょっと読みづらかったけど、友情っていうのを実感させられます。面白かったです。

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著者プロフィール

佐藤洋二郎(さとう ようじろう)
1949年福岡県生まれ。中央大学卒。主な作品集に『未完成の友情』『福猫小判夏まつり』『グッバイマイラブ』『神名火』『沈黙の神々Ⅰ・Ⅱ』などがある。『夏至祭』で野間文芸新人賞、『岬の蛍』で芸術選奨新人賞、『イギリス山』で木山捷平文学賞。著書多数。

「2023年 『百歳の陽気なおばあちゃんが人生でつかんだ言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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