- Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062136426
感想・レビュー・書評
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悲壮感はなく淡々としている
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とても汚いこと、特に下半身がらみの汚い様子を古めかしい言い方で「尾篭(びろう)」といいます。
尾篭な話です。この本に一杯詰まってるのは。
うちのスタッフの看護士に、「とてもタメになる本だから読んでみたら」と薦めたら、「あまりに気持ち悪くて読み進められませんでした」とのこと。それくらい汚い。
でも、福祉や医療の現場で、精神疾患を抱える人たちを相手に仕事してる若い人たち、認知症の家族がいて苦労している多くの人たち、そんな人たちに読んでもらいたいんです。
妻に逃げられ、収入がなくなりつつある高齢者。もともと偏屈な性格なうえに精神を病みつつあり、電気も電話も止められ、何年も風呂に入っていない。トイレの排水が詰まっても直す金もなく、自ら手を突っ込む。最後には自分でも制御が利かなくなり破滅する。
徐々に徐々に常軌を外れる度合いを増してゆくのだけれど、主人公の彼はその時々のプロセスの心持を冷静に淡々と物語る。
他人の目から見たら「壊れて」行くプロセスをこれほどの冷静な知性でもって自叙伝的に語られたものは少ない。文章も面白くて、丁寧に読めば「壊れて」などいなくて、常に彼なりのまっとうな理由があっての行動なのだと納得できる。
軽妙な書き方やなにげなユーモア。とても魅力あるおじいちゃんだと思えるんだけれど、それがどうしてこうなってしまうのか。
臭ってきそうなのは、確かです。でも、介護や看護の教科書で、「その人の生活暦を理解して」なんていわれているお題目のホントの意味は、こういう物語を読んで解ってあげることなんだよ!と、おじさんは言いたい。お説教「臭い」ですけど。 -
自殺未遂、離婚、セイホ(生活保護)と年金、ミンザイ(睡眠薬)に抗ウツ剤と、独居老人が語る救いようのない私小説。壊れて汚水まみれのトイレを自分で直そうとするシーンなどは目も当てられない。でも惨めなんだけどふしぎと悲壮感はなく、淡々としている。きっと生きるのにただただ不器用なだけ。
明日なき身、この先どうなるんだろう、と本人以上に読者が途方に暮れてしまう。まるで天気図上でなぜか予報円のない台風のように、過去の迷走の軌跡だけが詳らかで、未来の進路はただの1秒先でさえ不明といったような人生。作者はまだ存命だろうか。
【目次】
ムスカリ
ぼくの日常
明日なき身
火
【雑記】
・貧困といっても、貧しいなりに親しい人たちとの交わりのうちに笑いながら暮らす貧困もあるはずだけど、主人公の貧困はもっとずっと孤独。
・「自分の一生は、片道切符の小さな旅なり」。行き詰まったあげくに犯罪に至るわけでもなく、ただひっそりと破滅していくんだろうなという予感。 -
底辺って感じ。読んでて気持ちが悪くなった。
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真剣に凹みました
がんばろ -
この本は文学の体を成していない。私小説ですらなく単なる日常のぼやきが綴られている日記。それともぼくの読解力が足らないのだろうか。
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読み終り、此は実録、実話なのだろうかと、驚愕した。こんな話が現実にあるのだろうか、と。これが事実ならば、実に「明日なき身」だ、恐ろしくなる。