未来のきみが待つ場所へ 先生はいじめられっ子だった

著者 :
  • 講談社
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062136723

作品紹介・あらすじ

小中学校と卑劣ないじめを繰り返され、成績はオール1の落ちこぼれ。家庭内暴力と貧困に苦しみ、死ぬことも考えた-。絶望の淵からはい上がった「奇跡の教師」が伝える、生きる力を届ける言葉。

感想・レビュー・書評

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  • 凄く不幸な生い立ちの子どもや青少年が出てくるフィクションを読んでいて、いやこんな不幸な子ども今時日本におらんやろ、と思っていた。だが、思っていた自分は甘かった。
    著者の宮本さんは1969年生まれだが、きっと現代の日本にもいるのだろう。そんな子供が。

    ノンフィクションの持つ力は大きい。だから、伝記も大きな力を持つ。本当のことだから、言葉に軽さがない。ずしりと胸に伝わるものがある。

    著者の宮本さんは、昭和の時代背景の中で、家庭の貧困と虐待(文中にこの言葉は使われないが、彼の父親の教育は今で言えば完全に虐待である)、学校と教師の無理解と、壮絶ないじめの中で育った。よく生きて大人になったと思う。
    自分なら、早々に人生をリタイアしていてもおかしくない。
    「ひどくいじめられた。」という一言の中に、どれほどの苦しみが含まれているだろうか。想像を絶する。

    今でも、学校や先生の対応に不備があると感じるニュースを耳にすることはあるが、ここに記述されている彼の小学生当時の教育機関でのいじめへの対応の酷さといったらない。本当に?と耳を疑うような対応をする先生ばかりである。その頃に比べれば、今は多少はましになっているだろうか。
    家族と学校の完全な無理解の中で、どうしてこの少年は生き延びることが出来たのか?
    唯一愛情を持って接してくれたお母さんの存在かなぁ…。

    小学校時代もさることながら、その後の彼の人生も、これでもかというほど不幸が降り注いで、どうして?と思わずには居られない。
    まず中学を卒業して就職した会社がカス。
    そして10代のうちにご両親を亡くす。
    人って、こんなにも一手に不幸をしょい込めるものなの?
    先生や会社の人も含め、ここまでカスみたいな人間にしか出会えなかった彼の人生はどんだけ不幸だったんだろうと思う。失礼かもしれないが、よく生きてきたなと思う。

    けれど、拾う神もあるのだ。人生は捨てたもんじゃない。
    これほどまでに辛い人生を生き抜いてきた彼へのご褒美だろうか。

    音楽や少林寺があったこと、素晴らしい会社と出会えたこと、素晴らしい恋人と出会えたこと、アインシュタインと出会えたこと、素晴らしい先生と出会えたこと…すべてが、逆境を生き抜いてきた彼が自分の手でつかみ取ったものなのだと思う。
    マイナスの要素を劇的にプラスに変えたのは、運ではなく、それをつかみ取った彼自身なのだと思う。

    人との出会いが人生を変える。
    好きなことのためにはどれだけだって努力できる。
    目標を持つ時、可能性は最大限に開花する。

    いつも、自分が心の中で真理だと思っていることが、紛れもない真実と共に説得力を持って突き付けられる。
    暗いところで悩んでいる子にも、これからの人生を踏み出そうとしている子にも、いじめられている子にも、いじめている子にも、やる気のない日々を送っている子にも、あるいは大人にも、ぜひ読んでもらい一冊。

    蛇足だが、自分の出身が近いので、知っている地名に余計に説得力を持って感じられた。九九が出来ない人間が、名古屋大学の理学部に入ったのだ。どんなに出来ない人間だって、やれば出来るのだと思わされる。そして、それが好きなものの力だということ。好きという純粋な意志の力だということ。とても力強いメッセージ。
    彼が教師になったことには、とてつもない意味がある。
    彼は自分が逆境を生き抜いた力を、ただ自分の成功のためにとどめるのではなく、他の子どもたちにも分け与えようとしているのだ。あれだけ人に恵まれていなかった人間が、人間に絶望することなく、未来を切り開き、人間のために生きようとする姿に、心動かされる。根っから心優しい人なんだなぁと思わずにはいられない…。

  • すごくいい。背中が押された。がんばろうってナチュラルに思える。

  • 「奇跡の教師」としてテレビ、新聞で紹介されたそうな。子供時代、ひどいいじめを受けていた。家庭内もあれていて、貧乏で、勉強にはまったく身がはいらず、中学の成績はオール1。中学になってもかけ算が言えず、自分でもバカだと思っていた。しかし、そんな中、少林寺拳法をはじめて自分を少しずつ変えていこうと思う。
    絶望の淵から這い上がった「奇跡の教師」夢と出会いの先に広がる未来の尊さ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「少しずつ変えていこうと思う。」
      少しずつって言うのが良いですね。ちょっぴりヘコタレているかも知れない子どもに読んで貰いたい。
      「少しずつ変えていこうと思う。」
      少しずつって言うのが良いですね。ちょっぴりヘコタレているかも知れない子どもに読んで貰いたい。
      2013/08/05
  • 「小中学校と卑劣ないじめを繰り返され、成績はオール1の落ちこぼれ。家庭内暴力と貧困に苦しみ、死ぬことも考えた-。絶望の淵からはい上がった「奇跡の教師」が伝える、生きる力を届ける言葉。」

  • とても感動した。こんな先生に習いたいな。。努力の力は、やっぱりスゴイな。。読み終わったら私も努力しようと思える本です。

  • いじめられっ子だった著者、どんどん成長していき自分には何が必要だったのか、何があれば良かったのかを学んでいきます。
    いじめっ子にも、いじめられっ子にも読んで欲しい一冊です。

  • 文教大学図書館の所蔵情報はこちらです: https://opac.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=560840&test=t

  •  一般的に言えば、結末の分かっているストーリーにはあまり興味がもてない。その点、この本は既にタイトルで結末が分かってしまう。ああ、いじめられっ子が先生になるのか…。

     この本の帯では、さらに詳しくストーリーが紹介される。「こんな教師が子どもを救う! 小中学校と卑劣ないじめを繰り返され、成績はオール1の落ちこぼれ。家庭内暴力と貧困に苦しみ、死ぬことも考えた……。絶望の淵からはい上がった<奇跡の教師>が伝える、生きる力を届ける言葉!-道はいつか、必ず開ける。」とまあ、こんな感じである。

     ここまで分かっていて、それでもなお読み始めると、そこにあるのは、まさに想像を絶する世界である。いくら落ちこぼれでも、そこまで勉強ができないのかあ…。え? いじめって、そんなにひどいの?? お父さんが? 先生まで??と、常識では考えられないような事実が次々に語られていく。

     以前、東野圭吾さんの『手紙』を読んだ。あれもどん底だったけれども、こちらはノンフィクションなだけに、リアリティというか、胸に迫るものがある。

     この本は、子どもも読むことを想定して書かれている。その証拠に、多くの漢字にルビがふられている。でも、私は大人にこそ読んで欲しい。大人が読んで、そこで感じたことを自分の子どもに伝えてもらいたい。聡明な子どもであれば、いじめる側の子でも、いじめられる側の子でも、いじめとはそれほどかかわりのない子でも、この本から多くのことを感じ、学ぶとは思う。でも、その子の周りに大人がいるのなら、ぜひ、大人の口から伝えて欲しいと思う。

     帯には、「こんな教師が子どもを救う!」とある。でも、こんな経験をして教師になった人間は、そうはいるものではない。だとすれば、この本を読んだ普通の大人たちが、自分の周りにいる子どもを救わなければ仕方ない。

     もしお子さんがいる方ならぜひ、「うちの子はいじめは関係ない。」ではなく、一度この本を読んでみて欲しい。

  • 2006年3月5日の読売新聞でこの方の記事を拝見し感銘を受けた一年後、書店でこの本を見つけた時は運命だなと素直に感じました。
    壮絶なイジメ、両親との死別、オール1の成績から37歳で新人教師になった宮本延春さんの半生が書かれたノンフィクション作品。
    私はこの新聞とこの本に出会わなければ今の私は無いと率直に思うほど、自分のこれからを作ってくれた本です。
    何かを始めるのに年齢で遅いと決め付け、その場で諦めてはいけない。
    宮本さんの生き方や考え方に触れて良かったと思える作品です。

  • 著者は成年になっても九九ができず、中学まで成績はほとんど1か2で、しかもいじめられっこだった。家庭も決してめぐまれたものではなく、人生で楽しいと感じたことがほとんどないという中、いくつかの出会いなどをきっかけにその後の人生をやり直すことになり、国立大学院を経て教師になったという人物だ。著者は自らのことだから書きにくいということもあるのだろうが、もともとはそんなに頭が悪い人ではないのだと思う。つまり環境が学ぶことの手助けを早くからしてあげられれば、少年のころの著者はあそこまで落ちこぼれることはなかっただろう。「手助け」が人を救うことにつながるのだ、という体験談を通してのメッセージ。そして誰より著者を手助けしたのは、自暴自棄にならずに生きてきた著者自身であったと思う。

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著者プロフィール

私立豊川高校教諭。いじめられ、「落ちこぼれ」から23歳より独学で勉強し、名古屋大学大学院まで進む。著書「オール1の落ちこぼれ、教師になる」はベストセラー。

「2006年 『どうして勉強するの?お母さん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮本延春の作品

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