ミノタウロス

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著者 : 佐藤亜紀
  • 講談社 (2007年5月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062140584

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ミノタウロスの感想・レビュー・書評

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  • 未熟の成せる生き方。成り上がりの父親のもとに生まれて途中までは何不自由なく育った主人公。けれど政局が危うくなり戦争が始まると、きれいに坂を転げ落ちて堕落してしまう。偶然知り合ったドイツ人と共に追いはぎをし、人を殺しながらその日その日の生活を送るようになる。明日の見えなさ、それがよくいう目の前が真っ暗な感じではなく、なぜだか絶望的なのにフラッシュの炊き過ぎで白くなった世界のように感じる。内省なんてないから言い訳もしない。けれど最後、彼は自分が「人間」のようにふるまえる部分とそうじゃなくなる境目を思い知る。何をもって人間とするのかという部分を描いていたんだとその時に気付く。だからミノタウロスなのか。

  • 一生懸命、紙飛行機を作りそれを飛ばすことで得意気になっていた子どものすぐ横で、「じゃっ!」と言ってジェット機で飛び立っていくパイロット。 子どもはジェット機にあこがれます。そして紙飛行機に失望し、それを捨ててしまう。私はそんな心境になりました。もちろん、パイロットとは佐藤氏のことで、私は子どもです。

    ただジェット機よりも、紙飛行機の方がいいと思う人もたくさんいるはずですから、とりあえず私は精一杯よく飛ぶ紙飛行機を作りたいと思いました。

  • タイトル一本釣り。「ミノタウロス」ですよ、半獣半人ですよ。ものすごい示唆的。物語の設定は20世紀初頭、ロシア帝国南西部(現ウクライナ)。主人公の一人称で語られる混迷の時代、荒涼とした大地、そして堕落する自分への自己言及。

    一代にして財を成した父親が没落し、兄が首を吊り、故郷を逃げるように離れた主人公「ぼく」は、ただひたすらにその荒野を生き抜いていく。人を殺し、強奪した食物を喰らう。次第に「人間性らしきもの」はすべて削ぎ落とされていく。折りしも時代は第一次大戦の勃発した1914年。しかし、世相などまるで無関係に「ぼく」は堕ちていく。
    「人間性らしきもの」は消えつつも、「ぼく」が「ぼく」として言葉を繰り出していく様は、人間と獣の狭間をいったりきたりしているようで、その不安定さに、読者は惹き付けられていきます。で、結末、意義なき暴力への傾倒、そして死。ここは人それぞれの解釈になるでしょうけど、「ぼく」が人間として「ぼく」であり続けるための手段ではなかったか、と私は思うわけであります。生物中最も不条理な生物が人間であると仮定するならば、意義なき暴力なんてものは、まさに人間性を表現しているような気がするのです。そう書くとA・カミュの『異邦人』のテーマみたいなのだけれども。
    「読む」という行為が、思惟を伴うものであること、また、それが興奮するほど「楽しい」ことを感じさせてくれる作品です。

  • 文章を読むということがこれほどスリリングで興奮する行為だということをまざまざと感じる。
    佐藤亜紀さまは、わたしにとってそんな作家。

    とにかく文章が素敵すぎ。
    格好良過ぎる。

    ひと通り読んで、話がわかっちゃったらもう読まないとか、そういう小説ではない。
    何回読んでもおもしろい。

    182ページ、主人公が語る“美しいもの”の描写に戦慄する。
    とんでもない。
    でも、そのとんでもない光景が、間違いなく美しく描写されている。
    「1809-ナポレオン暗殺」でウストリツキ公爵が願った、真の自由の姿。

    虱にたかられながら暴力に明け暮れる日々が、おそろしく静かに描かれる。
    叙情などという甘さは付け入る隙もなく、恐怖などという劇的な演出もない。
    なのに、引きずり込まれるようにむさぼり読んでしまうのはどうした訳か。

    小説というのは、物語ではなくてひたすら描写なのだ、と思った次第。

  • この本はすごい!
    感想はこちら。

    http://yurinippo.exblog.jp/8156903/

  • 3年前位に贈呈されて読了。佐藤亜紀さんの受賞作としては3冊目なので期待して読んだら人外の物語。強奪、強姦、殺戮を繰り返す若者が死ぬまでの構成。彼等をミノタウルスだということなのだろう。

  • 「それでも、ぼくたちはまるで人間のような顔をして生きてきた。」と悟る場面が哀しい。人間っていつの時代も本質は変わらず同じようなことを繰り返してる、現在進行形で。

  • ロシア革命期のウクライナに地主の息子として生まれた主人公ヴァシリの、強奪、凌辱、殺戮にまみれた生涯。本作はヴァシリの悪党ぶりを描くピカレスクロマンというもののようだけど、個人的には少し穿った読み方をしたかも。つまりヴァシリをはじめとする登場人物は、単にその時代その場所に生を受けたがためにそうならざるを得なかったのではないか、と。衣食足りて礼節を知ると言うけれど、それらがまったく足りず、笑顔も幸福もない戦時の環境下で、逆にどうしたらヴァシリのようにではなく生き得たのか、とも感じた。

  • ロシアの田舎地主の息子が、ロシア革命という混乱の中で次第に人間から何か違うモノへと解き放たれていく様を圧倒的筆力で描いた大河小説。

    日本ファンタジーノベル大賞を受賞した『バルタザールの遍歴』以来、16年でいまだ8作という作家の新作、それも傑作が読めたのは幸せでした。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:913.6||S
    資料ID:50700352

    第42回吉川英治文学新人賞

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ミノタウロスの作品紹介

二十世紀初頭、ロシア。人にも獣にもなりきれないミノタウロスの子らが、凍える時代を疾走する。-文学のルネッサンスを告げる著者渾身の大河小説。

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