真珠湾攻撃総隊長の回想 淵田美津雄自叙伝

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062144025

作品紹介・あらすじ

真珠湾、ミッドウェー、広島・長崎を目撃し、ミズーリ号の降伏調印式に立ち会った男は、戦後なぜ、キリスト教に回心したのか?真珠湾から66年目の初公開。

感想・レビュー・書評

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  • <blockquote>「かくてイエス言いたまふ、父よ、彼らを赦し給へ、その為す処を知らざればなり」(ルカ伝)
     私は、このイエスの十字架上の第一言の祈りが、私にかかわりがあるとは考えていなかった。私は、これがイエスが、当面のユダヤ人やローマの兵隊たちに対するとりなしの祈りだと思っていたのである。即ち、「天のお父さま、いまこの連中が、私を十字架につけて殺すと狂い騒いで居りますが、どうぞこの連中を赦してやって下さい。この連中はなにをしているのか分からずにいるのです」
     そのときである。突如、イエスの啓示が私に閃めいた。私はハッとした。「彼らをお赦し下さいという彼らの中に、お前も含まれているのだぞ」との啓示であった。すると次の祈り「彼らはなにをしているのか分からずにいるのです」という言葉が私の胸を突き刺した。
     そうか、私は四十七年という長い年月を、「なにをしているのか分からず」に過して来たのか。まことに、わが身に愛想がつきる思いであった。</blockquote>

  • 父に借りて読む。親戚が少し登場し、キリスト教の話でもあるので、自分にとっては特別な思いのある本。

  • ちょっと前に読んだ 「それでも、日本人は「戦争」を選んだ 」に紹介されてたので読みました。子供の頃から受けて来た教育のおかげで 「よくわからないけどとにかく日本が悪い」 という歴史観でずっと生きてきて、その背景とか時代、価値観、正義、感覚…そういうのを全然知ろうとしてこなかったなと。 近代の戦争で「活躍した」人のことを学ぶことにどこか後ろめたさを感じていたり、なんかこう、自分の中の近現代史について、もうちょっと違う角度から見てみたいと思っていました。特に…この時間を「大人」で「それなりの立場にいて力を持っていた」人たちの目線、ですかね。 戦中の記述から、戦後ガラリと変わった価値観、仕打ち、そこからキリスト教に出会い第二の人生を歩む過程…今読み終わったばかりですが、なんて言えばいいのか、複雑な思いばかりです。ただ、読んで本当に良かった、そう思います。

  • 真珠湾攻撃までを読んで中断していたが、その続きから最後まで一気読んだ。
    太平洋戦争については、いかに現場の指揮官と後方との齟齬があったのかということがよくわかる。現場感覚の大切さをあらためて認識させられた。
    後半生は、キリスト者として伝道に尽くしているのだが、戦争で生死のあわいを生き抜いてきたことが、彼をして宗教に向かわせたのであろうか。
    日露戦争の秋山真之も、戦後は宗教に帰依したという。生きるということの根本的な問いに目覚めたとき、人を人智を超えたものに己を託すのだと思う。

  •  ニミッツ、マッカーサー、ドーリットル、トルーマンといったかつての仇敵たちとの交流も興味深いが、白眉はなんといってもキリスト教に帰依するきっかけとなった出来事だろう。
     戦後もなおアメリカへの敵愾心を失わない淵田は、B・C級戦犯問題が吹き荒れる中、アメリカ側にも捕虜虐待の事実があるはずだと考え、帰国した日本兵捕虜たちに収容所での体験を聞く。その中に、ある若い白人女性の献身的な看護に支えられた体験をもつ傷病兵たちがいた。彼女があまりにも親切で熱心なのでその理由を尋ねると、『私の両親が日本軍に殺されたからです』と意外な答えが返ってきたという。
     彼女の両親は、マニラで牧師をしていたが、スパイ容疑で日本兵に斬首された。処刑の直前まで、何かを懸命に祈っていたことがわかった。
     淵田は、夫妻が何を祈っていたのか知りたかったが、その時はわからなかった。が、のちにハタと気付く。『 主よ、彼らを許したまえ。彼らはそのなせることをしらざればなり・・・』。
     入信した淵田は、アメリカで布教活動に取り組むことになる。

    • nagano64さん
      今日読み始めました。終戦直前の8月10日、広島長崎の惨状を目の当たりにしたのち、ソ連参戦に呼応してウラジオストク空襲を大分基地から意見具申し...
      今日読み始めました。終戦直前の8月10日、広島長崎の惨状を目の当たりにしたのち、ソ連参戦に呼応してウラジオストク空襲を大分基地から意見具申したらしい。
      2012/09/21
  • 真珠湾攻撃隊長の手記。 太平洋戦争で活躍した真珠湾攻撃総隊長・淵田美津雄の自叙伝です。
    淵田美津雄は真珠湾攻撃の隊長として、源田実とともに大変有名な海軍軍人です。彼が晩年に自分の人生を振り返って書いた自叙伝がこの本で、彼の生い立ちからキ1教徒に回心しアメリカを伝道して廻ったところまでが描かれています。海軍軍人となってすぐに飛行機に取り憑かれ、飛行機の軍事利用を提言して、自ら隊長として真珠湾攻撃を成功させ、その後のミッドウェイ海戦では重傷を負いながらも生きながらえ、原爆投下後の広島や長崎に入って被害調査を行い、戦艦ミズーリ号上の降伏調印式に立ち会うなど、太平洋戦争全般に渡って、節目となる事件に立ち会って重要な役割を果たしました。
    原爆被害調査では、同行した軍人達が被爆して次々と亡くなっている中、彼は何事もなく生き延びます。このときの体験から自らの死生観について深く考えることになり、戦後自らの役割を「平和の伝道者」と位置付けてキ1教へ回心します。その後、真珠湾攻撃の隊長としてのネームバリューを利用して多くの政治家や軍人に会い、平和を訴えて全米を講演して廻り、この手記を残しました。

    淵田中佐については、小学生の頃「トラトラトラ」という真珠湾攻撃の模様を描いた日米合作映画で初めて知りました。真珠湾へ向かう爆撃機から海を眺めている軍人が、雲間から射す朝日を指して「日章旗だ」と言うシーンがあります。この人物が淵田中佐だったと思います。その人物が戦中に多くの重要な場面に立ち会い、戦後はキ1教徒として平和の伝道者となったことは、この本で初めて知りました。戦争を行った軍人が平和の伝道者となるのは、戦争の当事者としての罪を償いたいという気持ちの現れなのかもしれません。
    太平洋戦争の当事者・歴史の目撃者の手記として、歴史を学びたい人には必読の本だと思います。

  • ちょっと前の新聞の書評に載っていたので、読んでみました。
    内容はタイトルの通り、真珠湾攻撃の航空部隊の総隊長である淵田美津雄の自叙伝ですが、それに中田整一氏の解説が要所ゝについている感じですね。

    淵田美津雄は、異例の降格人事で真珠湾攻撃の航空部隊の総隊長を任じられますが、それは逆に彼の力量上の事であって、まさしくこの時代の航空部隊の前線指揮官としての統率力の力量は最高レベルであったことの証です。
    それだけでも、真珠湾攻撃に関する本人の談が載っている自叙伝であれば読んでみる価値はあると思うのですが、第二部とも言うべき戦後のクリスチャンへの回心もなかなか考えさせられるものがあります。

    実は、この本の価値を高めているのは、中田整一氏の「解説」と「あとがき」ではないかと自分は思えています。
    自叙伝となるとどうしても、個人の思い入れが強くなります。
    読んでいて自分もその世界に引きずり込まれたのですが、中田整一氏によりその当時の状況の解説及び分析が行われ、冷静に考えることができました。
    特に「山本五十六」に対する考察については、この対比が鋭く見ることができます。
    彼が「回心」してからは、どちらかというと人間心理の描写の比重が「外国人」と関係におかれるのですが、日本人と彼を取り巻く状況については「あとがき」において伺う事ができます。
    またあとがきにおいて、彼のアイデンティティを支えるものについても、やんわりとしたニュアンスですが、述べられているところも非常に興味深いところではないでしょうか。

    こういう戦史ものが初めてという方には、ちょっと敷居が高く感じるかもしれませんが、「自叙伝」+「解説」という内容では、非常に良い本だと思います。
    これぐらいの内容があるとハードカバーの値段に十分見合うものがありますね。

    ちなみにこの本を読んで、映画「トラ・トラ・トラ」を見ました。
    ちょっと前にヒットした、ハリウッド某真珠湾攻撃映画は、正直ひどい出来だったのですが、こちらはまだ良いほうです。
    当然、結構昔の映画ですので、物足りない方は多いと思うのですが、航空部隊の編隊飛行や低空飛行などは、迫力十分です。
    不謹慎かもしれませんが、払暁の真珠湾攻撃への航空隊の出撃シーンは、大変美しい映像です。
    真っ暗な甲板に、轟くエンジン音、光るエンジンの光。徐々に日の出と共に、発艦のシルエットが浮かび上がってきて、航空編隊の姿が浮かび上がる姿。
    昔の映画ですが、興味と時間がある方は、このシーンは見る価値アリだと思いますよ。

  • 新たな証言。
    真珠湾攻撃の航空隊のリーダー。
    アメリカに残っていた日記を元に書籍に。
    戦後の事も多く割いているが、
    戦前戦中が興味をそそるだろう。
    新たに分かった内容も多々ある。
    資料としての価値は高い。

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