- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062145176
作品紹介・あらすじ
写真。嘘が溢れる世の中で唯一信じられるもの。
町田康×Photograph
一葉の写真が映し出す世界
まあ、はっきり言ってみんな羨ましがる。いいなあ、なんて言う。でも山羊で人間の手なんていいことはひとつもない。というか面倒くさいことだらけだ。なにが面倒くさいかと言って、日に何度も手を洗わなければならないのがもっとも面倒くさい。通常の山羊の手であれば、地面についていてもなんとも思わない。でもなまじ人間の手をしているものだから、手が泥だらけになっているとなんとなく気分がすっきりしないし、爪の先が黒いのもみっともないと思うから手を洗う。しかし、手は人間でも身体は山羊だからどうしても手をつかないでいることはできない。だから日に何度も手を洗うことになるんだね、これが面倒くさい。あと煩わしいのは、山羊仲間に、僕が指輪をしたり腕時計をしたりして人間ぶっていい気になっている、と批判する者があるということで、いいじゃないかそれくらい。指輪はファンの子に貰ったから嵌めているだけだし、時計は餌の時間とか分かって便利だからしているだけで別に人間ぶっている訳ではない。なのにそんなことをいう山羊がいるというのは悲しいことだと思っていたら、あいつらが来たので塀に手をかけて夕日を見る振りをして鹿十した。山羊十した。……<本文より。山羊談>
感想・レビュー・書評
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面白いと云えば面白いし、つまらんと云えばつまらん。不完全燃焼。
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「現代」 2002年1月号から2004年12月号まで連載されたもので、嘘偽りのない写真が正しく意味するところについて、純客観的な見地から適宜、解説・説明をしたものです。抱腹絶倒!!!決して、通勤電車の中では読まないよう忠告します。ニタニタするとヘンな人と間違えられます。はしがきにあるように、著者は嘘が大嫌い、私も虚偽欺瞞が大嫌い、大いに共鳴するところであります。出版まで3年の月日を要したのは、『実は綿密な調査に手間取っておったのであります。その辺りの詳しい事情については、あの大作 「告白」 の中で、縷々述べられておるとおりです。』いつのまにか、川上弘美調から町田康調になってしまっている。げに恐ろしい感染力。
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比べるのもナンセンスだけれど、ダウンタウン松本の「写真で一言」の文体版。口で瞬発的に言うか、作者のように文字で笑いを起こすか。甲乙つけがたい笑いのセンスである。
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写真1枚からこんなに言葉が出てくるなんて。その写真のチョイスも面白くて、頭の中を覗いてみたくなりました。面白い。
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2015/7/28
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大喜利の写真でひと言ならぬ、写真でひとエピソード。
シュールな写真たちから、自分では決して見えなかったドラマを町田康が見させてくれる。
最高にくだらなくて、とんでもなく馬鹿げていて、
でもこれが真実だったら面白いなぁと思わされる。
いや、この本の中では、これが真実なのだ。
気軽に読めるので、本棚にぜひとも一冊。
僕は一冊友達に貸して、返ってこないからもう一冊買った。 -
ちょっと古い、変な写真を元に町田康がボケる、というもの。芥川賞作家がこれをやるから価値が出る。何もない人がこれをやったら、ただの病気だ。