ごめん

著者 :
  • 講談社
3.16
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感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062147323

感想・レビュー・書評

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  • 原田マハさんの短編4作品。
    どの章も切ないストーリーかつアート要素少なめなので、原田さんの作品の中ではやや満足度低め。

    ◆あらすじ&感想
    『天国の蝿』
    今では大学生の娘を持つ母となった範子の、自身の苦くて辛い少女時代を回想する物語。
    訪問販売のセールスマンとして全国を売り歩き、ほとんど家を空けていた父。家計は逼迫し、多額の借金を抱え、遂には家族で夜逃げ。行き着いた先は、汲み取り式便所が外にあるような質素な家。
    ここまで重くて暗い作品を読んだのは久しぶりで、好印象ではないのたが、便所で蠢く蛆虫の描写が妙にリアルかつ衝撃的で、脳にこびりついてしまいなかなか離れない…。

    『ごめん』
    夫との結婚後も、他の男との恋愛を楽しんでいた陽奈子。そんななか、夫が仕事中の労働災害により、植物状態に陥る。夫には秘密などないと思っていたが、毎月10,210円を振り込んだ形跡のある普通預金の通帳が出てきた。さらに、高知銀行とオリヨウという名の刻印された振込カード。夫の秘密に迫るべく、陽奈子は高知へと向かう。
    自分は堂々と不倫していながら、夫だけは潔白に違いないと信じれきれるのもなかなか珍しい。オリョウさんがかなり魅力的な女性として描かれているので、なんとなく夫の不倫を許せてしまいそうになるが、冷静に考えたら二人ともやっていることは同じであり、どっちもどっちだ。

    『夏を喪くす』
    建設会社を経営する咲子は、冷え切った夫との結婚生活の隙間を埋めるようにして、恋愛を楽しんでいた。ある時、愛人の渡良瀬に胸にシコリがあるよと言われ、自身の身体の異変に気づき、病院で乳癌の告知を受ける。自分の身体に自信を持っていただけに、乳房を一つ失うことは自分の価値を損なうこと、引いては恋人の渡良瀬との破局にも繋がるのだろうなと落ち込む咲子。そんな中、共同経営者であり、建築・会計を担当している青柳共に出張へ。夜、車通りのない道路中央線の上に青柳と横たわり、車が通らなければ願い事が叶うという賭けに出るが…。
    青柳は緑内障、咲子は乳癌と、過酷な状況で、なんとも切ない気持ちになるが、最後に咲子が夫と渡良瀬に対して送ったメッセージに、自分を奮い立たせる意思が感じ取れて勇気をもらえた。

    『最後の晩餐』
    チェルシーのギャラリー街でインターンとして働いていた麻理子。
    麻理子とルームシェアをしていたクロ。
    イタリア人若手建築家であり小さな設計事務所を営むゲイのジュゼッペ。
    メトロポリタン美術館のキュレーターを務めるイアン。
    麻理子とクロはどこに行くにも連れ立ち、ジュゼッペとイアンはそこにしょっちゅう現れて、一緒に笑ったりディベートしたりする仲間だった。
    911の日を境に失踪してしまったクロ。クロの失踪後も、家賃が支払われ続けている謎を解き明かすべく、麻里子は2000年の夏以来、7年ぶりにニューヨークを訪れ、ジュゼッペ、イアンと再開する。私の集中力と読解力が悪く、クロの失踪の理由や家賃の謎について正直消化不良になってしまった…汗。

  • またやってしまった。

    私は何故か、紙で良く指を切ってしまう。
    つつ、と細く切り裂かれた皮膚の裂け目から、たらり、と流れ出てくる赤い血。

    「痛・・・。」

    テッシュでふき取りながら、
    そういえば、前回切った傷口はどうなったっけ?

    血がふき取られた後の傷口は、ぱっくり開いている。

    これが、いつの間にか塞がるのか…
    人の体って良く出来てるものだな~と、感心しつつ、

    ふと、思ったのは

    では、心の傷はどうやって塞がるんだろう?

    と、いう事。

    タイトルの「ごめん」からも察することが出来るように、
    4つの短編の登場人物は皆、
    他の誰かによって、
    ズタズタに心を引き裂かれる。

    痛い。

    さっき切ったこの指の痛みより、遥かに痛い。

    この人達に心を重ね合わせるのは嫌、
    と、読書逃避したくなるくらい、なんか嫌だった。

    でも、
    それを詫びる人の「ごめん」で、
    傷は塞がるのか?

    そうじゃない。

    それを許す事が出来る自分の心があるか無しか、で
    傷は塞がる…らしい。


    忘れる、とか
    あきらめる、なんて一時的な絆創膏なんかじゃなく、

    許す、という気持のみが血小板であり、
    かさぶた、を結成してくれるのかな。

    なんて、思った。

  • 私にしては珍しく一気に読みました。
    これまでの原田マハさんの作品のイメージとは違う印象でした。
    なんとも辛く、やりきれない気持ちに何度もなったけど、何故か不思議と読み終えた時にしんどさが残るものではなかったです。

  • 四つ目の話、夫が事故で危篤、意識不明になった・・手帳から秘密が。意味を探るため高知へ出向く妻。お互い不倫をしておいて、大事なものに気づく。遅いのだけど・・これが一番残っています。どの話も好みな短編です。
    ごめんって言われたら、辛いこともあります。そういうことをされた「ごめん」、せつないです。

  • 世間的には成功してると言われる、立場の違う4人の女性を主人公にした中編集。
    どの主人公も上から目線で、好きになれない。
    こんな原田作品も珍しい。
    成功していると思われる女性たちが、ある日突然不幸に見舞われ、人生を見直すのが、この作品の描きたかった部分なのだろうが、残念ながら、共感出来る作品は1つもなかった。

  • 短編4作品

    「天国の蝿」「ごめん」「夏を喪くす」
    「最後の晩餐」

    最後の晩餐だけは
    あまり頭に入ってこなかった
    外国人の名前が出てくる作品と
    原田マハさんの絵画もの作品は
    毛嫌いしてしまっているから
    やっぱりまたダメを確認

    他3作品はとても
    読みやすく
    結末が気になって一気読み


  • 天国の蠅。

    遠ざかって白くみえているのは
    雪だろうか
    いいえ あれは
    雪にも花にもなりそこねた
    ぽつんと一粒のさみしい希望
    消えることも散ることもできず
    ただ細々と灯りつづけている
    さみしくてもはかなくてもいい
    遠くの希望よ
    雪にも花にもならず
    ただまっすぐに私の胸に来い

    心に凍みます。

  • 【ごめん→いいよ】言えるかなぁ。詩のような短編集。著者には珍しい作品かも。当たり前ですが作家ですね。男女の絡まりは、いろんな形があるけれど、やっぱり女って、ずるい男でもトコトン好きになってしまったら、どんなダメ男でも愛してしまうんでしょうね。なんだかんだ言っても夫婦なんだなぁ。心苦しくなる話が多いけど人が人を想う気持ちは、場、状況、心境にもよりますが真っ直ぐで真っ直ぐで愛おしい。あなたは、あなたが想う人へキチンと想いを伝えられていますか?伝えられる時を大事に。とても大切なことを忘れないように。はぁ切ない。

  • 4人の女性の生き様というかラブストーリー?なのか。不倫の話と暗い話が多いが、考えさせられる。

  • 2021年1月9日
    本当に多作の人だ。
    まだ読んでない本がたくさんある。
    含みのある、余韻の残る作品4篇。
    でもかなしいかな。私にはその先が読めていない。
    不倫だったり、ゲイだったり、男か女か曖昧だったリ初めから混乱していて、展開する場も沖縄や、マンハッタン…
    その空気に馴染むのがすごく難しい。
    きっと洒落た話なんだろうけど…

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

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