青銅の悲劇 瀕死の王

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著者 : 笠井潔
  • 講談社 (2008年7月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (778ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062148061

青銅の悲劇 瀕死の王の感想・レビュー・書評

  • 矢吹駆シリーズ日本篇第一作だそうで、昭和が終わろうとする頃の日本が舞台である。
    しかし主人公は宗像冬樹で、彼がナディア・モガールとともに東京郊外の旧家で起こる神事をめぐる事件に巻き込まれることになる。
    事件そのものはたいそう地味で、毒殺未遂事件の毒を誰がどこに入れたかという可能性を延々と議論していく。時刻表のアリバイトリックを検討するような地道さで、かなり疲れた。
    神事を守り続ける老人、ポストモダン学者、左翼など思想的に様々なキャラクタが登場するが、宗像は積極的に議論しようとしないので派手な思想対決がないのも寂しい。
    しかし戦争を生きた人々や学生運動に身を投じた一部の人々にとって、昭和天皇崩御がどれだけの意味を持つのかということは考えさせられた。
    未解決の謎もあるので、この作品は日本篇の第一章という位置づけなのだろうか。

  • 笠井さんの。矢吹シリーズだけど、日本が舞台になっている。

    謎解きはかなり複雑。わたしにとっては(^_^;)
    神事が絡んだ事件なので、宗教関係の話とか歴史のこととかもちらほらでてきていた。

    笠井さんのミステリばっかり読んできたけど、伝奇ものも読んでみようかなぁ。

  • 久し振りの笠井潔の新作は、772ページの超重量級。期待しつつ読んだのだったが、正直なところ、ちょっと期待はずれか。扉に「わたしは日本に帰ってきた、矢吹駆を殺すために―N・Mの日記から」とあるので、てっきりあの「現象学的本質の直観」で犯人を推理する矢吹駆が活躍するシリーズの新作と思ったのだが。

    探偵役は『天啓の宴』の主人公、宗像冬樹。後半には矢吹もののワトソン役ナディアも登場するが、肝心の矢吹は、宗像の思い出話の中に登場するだけで、そこが物足りない。もっとも、今回の作品を宗像ものと考えれば、矢吹が登場しないことに文句を言っても仕方がない。

    気になるのはそれだけではない。「現象学的本質の直観」による推理を、ナディア自身の口を借りて、現象学の援用などではなく、矢吹の天才的 な直観によるもの、という解釈がなされるなど、これまでの自身の手法を半ば否定して見せるかのような見解には、首を傾げたくなる。以前から矢吹の「現象学 的本質の直観」という推理の呼称に対して、批判があったことは知っているが、笠井自身がそれを認めたということだろうか。

    今回の新作が目指しているのは、むしろエラリイ・クイーン風の本格探偵小説で、それとなく「読者への挑戦状」が置かれていたり、QED(証明終わり)という、エラリイが事件を解決したときに口走る口癖を披露して見せたりと、かなりエラリイを意識している気配が濃厚なのだ。

    それでいて、推測と推論は違う、といってポオ以来の名だたる名探偵の推理を単なる推測でしかないといってのけ、今回の解決もまた、推測に よって犯人にはったりをかけ、自白を引き出したもので、数学的な厳密な推論から導き出されたものではないと、ナディアに言わせていることからも分かるよう に、エラリイ・クイーンが夢見たような論理的な解決が本当に得られるはずもないということを示唆してみせる。笠井潔は、本格探偵小説を書くことで、かえっ て「本格」を否定するという仕儀に至った。『青銅の悲劇』は、本格探偵小説を装った「反(アンチ)本格探偵小説」なのである。

    時代背景を昭和天皇が崩御する年の冬に設定することで、笠井が固執する全共闘運動との絡みも、回顧的でなく描けることになり、出始めたばか りのワード・プロセッサなどの小道具もうまく使われているようだ。ただ、この作品を楽しむためには、エラリイ・クイーンの作品、就中『Yの悲劇』を読んで いないと、せっかくの仕掛けが楽しめないことになる。往年の推理小説愛好家にとっては必読書だが、今でも読まれているのだろうか。そういう意味では、読者 を選ぶかもしれない。

    毒薬を酒に入れることができたのは、家族の中の誰なのかという問題を解くことが、作中最も大きな謎で、たしかに数学的な問題にはなっている のだが、正直数学パズル好きな読者でないと、つきあいきれない。探偵小説には論理的な解決を楽しむパズルの側面があることは賛成するのだが、どれだけの割 合をそれに向けるかというあたりが難しい。

    笠井潔には、数学的な論理より、もっとちがった部分を求めている読者は多いのではないだろうか。その意味で、民俗学的な考証を生かした縄文人文化論や天津神と国津神の対立を天皇制を絡めて論じた宗教論議のペダンティックな風味のほうがより楽しめた。

    笠井が今後エラリイ・クイーンばりの本格を書こうと考えているのかどうかは分からないが、一人の読者としては、全共闘運動にこだわり、現象 学や哲学にこだわる部分を残しておいてほしいと思う。どうやら、新作は、矢吹駆シリーズと、宗像ものをつなぐ役割を担わされているようだ。扉に予告されて いるように、矢吹駆は日本に帰ってきているらしい。次回作での矢吹の活躍が待たれる所以である。

  • 矢吹駆シリーズ・日本編

    小説家・宗像の知り合い北澤雨香、息子の響。北澤家にやってきたナディア・モガール。北澤響の親友・鷹見澤洋輔。洋輔の家に起きる事件。割られた鏡、盗まれた宝石、折られた五月人形の刀。三種の神器の見立てとの推理。鷹見澤家に下宿するナディア。冬至の儀式の最中に倒れた当主・信輔。トリカブトの毒による中毒。一命を取り留めたが引き籠る信輔。信輔と対立する息子・浩輔。何者かに撲殺された浩輔。洋輔の失踪。洋輔のワープロに保存された「円の悲劇」と名付けられた小説の秘密。浩輔の周囲に現れる黒衣の女。強請られていた浩輔。何者かに襲われ重体となったナディアと重傷を負った隆夫。現れた本物のナディア・モガール。昭和天皇の死とともに割腹自殺を図った信輔。宗像と矢吹駆の関係。矢吹駆の本名・斑木飛鳥。左翼系グループの暗躍。消えた駆とナディアの関係の秘密。

  • 驚いたのは、これだけのページ数を費やし、甲論乙駁を繰り返した挙句、現れた犯人と動機がごくごく平凡なこと。名探偵の死は必然的に名犯人の死に繋がる。

  • 天皇の病状悪化が伝えられる1988年末。東京郊外頼拓市の旧家、鷹見澤家には奇妙な事件が続発した。鷹見澤家の長女、緑から相談を持ちかけられた探偵小説家、宗像冬樹とフランス語講師ナディア・モガールは不審人物の存在を知ることに。不穏な空気の中、冬至の日に執り行われた会食の席上、当主、鷹見澤信輔が突然倒れる!それはトリカブト毒を使った毒殺未遂事件だった…。昭和の最期、鷹見澤家を襲う悲劇とそれに纏わる因縁に迫る。

  • 面白いし、深いんだけど、重くて(本の重量が)、そして長い(笑)

  • 矢吹駆シリーズ日本編、だそうです。えーと、これってネタバレにならないかな? ならないよね?……矢吹駆、出てこないけどさ(笑)。
    実に意味深なタイトルですが、読むと納得。記憶にそう遠くないあの時代のお話なのですね。私はその当時は子供だったのであまり世間の情勢などが記憶にはないのだけれど。その時代特有の雰囲気、というのは感じさせられた気がしました。
    厚さのわりには事件が案外少なかったなあ、ってのが個人的な印象。だけど毒殺事件の考察だけでもうお腹いっぱい! 頭ぐるぐるしながらも考えさせられずにはいられず、かといって犯人は分からなかったなあ……。読み終えた充実感がいっぱいです。

  • テンポよく読めるけどいかん厚すぎですよ! 哲学とは革命とはがぼろぼろちりばめられている本シリーズにガンダムネタがでてきたのでひっくりそうになったり。

  • 「矢吹駆シリーズ日本篇待望の第一作!」と、腰帯に記された本作。ナディア・モガールが語り手の連作本編、ヤブキ・カケルが語り手の第0号作品『熾天使の夏』と、又、別の語り口で展開される、新局面の第1作になるはず。新たな語り手は、天啓連作、他でも描かれた、架空の作家、宗像冬樹。著者本人をイメージ・ソースにしたと思える宗像と、彼の視点から描写される成長したナディアとが、推理を競い合い、矢吹について語り合う「瀕死の王」。「本格推理小説は、突き詰めることでメタ・フィクションに転じる」といった趣旨の考察を文芸批評で展開してきた笠井潔氏の、作家としての自己批評が、物語の形で紡がれた作品。じっくり読めば読むほど面白い、力作です。

  • 徹底した論理ゲームだが、一歩引いてみるとただの屁理屈合戦。
    本格が現在置かれている立場を感じさせられる。

  • これは・・・どう評価していいのでしょうか?矢吹駆が「本当に」でてくる次回作への前ふり?
    約750ページがつらかったです。『ジョーカー』も『ローレライ』も『フロスト』も厚くったってあっという間に読めたのに。
    次回作期待で★1つ増やしました。頼むよ。ほんとに。。

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