トヨタ・ショック

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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062153607

感想・レビュー・書評

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  • 日本を代表する企業である「トヨタ」が、一時は世界一位の販売台数を記録しつつも、赤字転落、人員削減、賃金カット、社長交代などの失速を経て、今後よみがえることが可能なのか。
    『トヨタと日本経済の「これから」が見える。』と帯にあるように、そのトヨタと日本経済の行く末について論じようとした本です。

    目標は大きかったのですが、結局のところ論じきれずといった印象で、内容はイマイチです。

    ただ、
    「カローラのような安くて品質の良い大衆車をこつこつと努力して作るのが得意だった会社なのにいつの間にかトヨタは利益優先主義に陥り大型車や高級車中心の会社になった。しかもIRや政治家マスコミの対応を優先した結果のファンであるお客を失いつつある。」
    「すぐに金になりそうな商品に目をつけ、資本力にものを言わせ、市場投入する。」
    「経営は結果責任である」
    あたりはなるほどと強く共感した内容でした。

  • 昨年11月頃から自動車メーカの収益が非常に悪くなり、何度かの修正があった後に、とうとうトヨタは営業赤字となってしまいました。ショックなのは、2008年前期は、2兆2700億円の黒字(p123)だったことです!

    手元資金を10兆円以上も保有して堅実経営をしていたトヨタがなぜ円高、サブプライム問題があったにせよ、一気に赤字にまで転落してしまったのかが腑に落ちませんでした。この本を読んでも完全にはわかったとは思えませんでしたが、トヨタ自身が北米ビジネスにいかに頼っていたのかがわかりました。

    利益の源泉だった北米がおかしくなったら利益が出なくなるのは当たり前ですね、ただ、この数年間は史上最高益を更新し続けていたこともあって、いつのまにか利益を追うことばかりに夢中になっていたようです。これから長いトンネルに入ることでしょう、トンネルを抜けると別世界になっているかもしれませんが、自動車業界の業績が深く影響する業界に身をおいているものとして、悔いのない社会人生活を送って生きたいです。

    以下は気になったポイントです。

    ・2008年11月6日のトヨタショックから、わずか1ヵ月半で7500億円マイナスとなった要因解析:原価改善とコスト削減で+1300、為替変動で2000(対ドル1円で400、ユーロでは60億円の減少)、販売減少で5700、金利スワップ評価で1100億円マイナス、合計でマイナス7500億円(p20)

    ・グローバルマスタープラン(グロマス)、その後に導入されたGPM(グローバル・プロフィット・マネジメント)によって、ボトムアップからトップダウンの会社となった(p37)

    ・テキサス州のタンドラ専用工場が、トヨタ経営を苦しめる元凶となる、国内元町工場ラインでは6車種の混流生産かのうだが、専用工場は柔軟性なし、なので2008年8月から3ヶ月間操業停止することに(p39)

    ・北米向けの輸出車部品を作っているところは、6割から7割減(p66)

    ・80年代まではトヨタ社員が直接下請け会社に出向いて、ノウハウを教えて検討したうえでコストダウンの努力をしていたが、今回は頭ごなしに押し付けられた(p78)

    ・2008年12月の国内での生産台数は、25%減少の24.5万台、世界各地の製造拠点も25%減少した(p92)

    ・カムリを生産(昨年まで50万台)するケンタッキー工場では、昨年半ばから25日間という異例の操業停止、インディアナ工場・テキサス工場(タンドラ、セコイヤ)も同様(p115)

    ・トヨタはアメリカでの収益競争において、小型車・ハイブリッドではなく、大型ピックアップトラックやSUV(タンドラ,セコイヤ)で挑んだ(p129)

    ・英国は2008年に気候変動法2008という法律までつくって、厳しい削減義務を課したのは、排出権取引における主導権を確保するため(p138)

    ・トヨタの自動車ローンは、2008年3月末で12.2兆円の貸出債権がある、自動車ローンと住宅ローンが連携する米国では、不良債権化が強い(p146)

    ・2009年1月の国内生産は、前年比4割減の約20万台、2・3月は11日間の臨時操業停止日を設けるので、15万台となる(p154)

    ・各国自動車工業会の調べでは、2009年販売予想は、日本がマイナス5%、北米がマイナス21%、その他が10~15%、全体で15%(p157)

    ・奥田、張、渡辺体制で、トヨタが成長のアクセルを踏むことができたのは、円安(110円台)・金融(ゼロ金利、リース)の恩恵である、トヨタの想定為替水準は105円、限界利益率は20%なので、20%近い円高にお手上げ(p175)

    ・ トヨタはGMに対して技術力は上でも、傘下のローン会社に資金を提供して、自らの負債で販売台数を増やすというビジネスモデルはGMと同じであった(p182)

    ・CSMが2008年4Qに発表したデータによれば、2007年にくらべて2014年に生産台数が拡大していると予想されるのは、世界51カ国中38ヶ国、減少は13ヶ国、アメリカは07年1054→783(09)後に、2011年に回復、日本は08、09減少(大底)、2014年に回復、欧州では2014年においても減少、2倍以上はインド、インドネシア、ルーマニア等、中国も80%増加(p199)

  • ジャーナリストが書くと大体こんな感じの本になる。中日新聞の連載の方が面白いな。

  • トヨタ方式は健在だが、肝心のトヨタという会社自体が、本質を見失ってしまった。数年のトヨタを見て確かにこうなることは予想できた。けど日本が誇るこの会社の再生は近いとも思えるし、信じたい。

著者プロフィール

経済ジャーナリスト。
1964年生まれ。1988年九州大卒。NECを経て1992年朝日新聞社に入社。経済部で自動車や電機産業などを担当。2004年に独立。現在は主に企業経営や農業経営を取材し、講談社や文藝春秋、東洋経済新報社などの各種媒体で執筆するほか、講演活動も行っている。
主な著書に『自動車会社が消える日』『日産vs.ゴーン』(以上、文春新書)、『会社に頼らないで一生働き続ける技術』(プレジデント社)、『メイドインジャパン驕りの代償』(NHK出版)、『トヨタ愚直なる人づくり』(ダイヤモンド社)などがある。

「2021年 『サイバースパイが日本を破壊する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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