産む、産まない、産めない

著者 :
  • 講談社
3.63
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本棚登録 : 661
感想 : 74
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062154314

作品紹介・あらすじ

「最後の選択」出世と出産、あなたならどちらを優先させますか? 予想外の妊娠に揺れる、四十歳の選択とは/「ポトフと焼きそば」血の繋がらない息子と実の娘との距離感。ステップ・ファミリーという新しい家族の形/「次男坊の育児日記」増えているとはいうものの、男性の育児休暇はまだまだ少数派。いざ申請すると、どんな毎日が待っているのだろうか/「コイントス」老舗の呉服屋に嫁いだ日から、跡継ぎを産む、というプレッシャーがはじまった。不妊治療を受けるものの……。/「温かい水」お腹の中の我が子の心音は止まってしまった。大きな悲しみに飲み込まれそうになる夫婦たち。/「花束の妊娠」高校在学中に産んだ娘が、同じように十六歳での妊娠。シングルマザーのとまどいと決意の物語。/「レット・イット・ビー」兄夫婦に産まれた子供には染色体異常があった。/「昨日の運命」親友同士、一人は未婚の母に、妊娠を望んでいたもう一人は子宮がんになる。友情の行方は。──女性に関わる切実なテーマを切り取って、「女性の選択」を考えさせる八つの物語

感想・レビュー・書評

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  • 甘糟りり子さんは初読みの作家さんだった。

    『産む、産まない、産めない』
    タイトルに惹かれて読んだが、あれ?タイトル間違ってる?「産まない」の話が無いのでは・・・
    全8章の妊娠・出産にまつわる様々な生き方が綴られている中で「産まない」の話は結構注目される読者さんも多いと思う。
    それが無いのは少し残念だった。

    ちなみに第1話のバリキャリ桜子が「産まない」派の代表だと思っていたので、妊娠発覚後に何の迷いも過程も無く「産む」派に転じていたのは拍子抜けした笑

    短編の中には身近に感じるものや、類似体験をしたものもあり、共感出来る話もあった。
    一方で、羊水検査や死産については知識としてあるだけだったので、その葛藤や辛さには胸が締め付けられる思いがした。

    作中では、女性特有の体験をしているからこそ感じる世間の冷たさや、神経を逆撫でられる言動や無神経に思える人や場所が出てくる。
    主人公達は、悩み憤りながらも時にはそんな風に過敏になっている自分を責めたり俯瞰したり、まぁ何とも忙しい。
    私も過去に同じように感じた事もあったので懐かしさ反面、切なさがよみがえった。
    誰しも自分の正解を知りたくて、正解だと信じたくてもがいているのだと思う。

    でも結局、どれが正解なんて人生が終わる時に振り返ってはじめて気付けるものなんじゃないだろうかと最近感じるようになった。そうならば、正解だと思えるように自分を信じて生きていくのがきっと幸せなんだとも思う。

    そのためには、もがいて自分を責めるよりも、経験していない様々な生き方や考え方があることを知ることの方がよほど大切で有意義だ。
    その意味で、本作は若い女性には特にオススメしたい。更に男性にも是非読んでみて欲しい作品だと思った。

    甘糟りり子さんは初読みの作家さんだったが、時々場面切り替えがスムーズでなく読み辛さを感じてしまった。


    以下、印象に残った台詞

    第7話 レット・イット・ビーより
    「妊娠したら産めばいいし、機会がなかったとしても後悔する必要もない。ないものばかりを捜す毎日はつまらないし、手にしたらきっと他のものが欲しくなる。
    あるがままに。」

  • 第一話:最後の選択
    40歳キャリアウーマンが酔った勢いで寝てしまった年下の男の子との間に出来ちゃった話。

    第二話:ポトフと焼きそば
    妻25歳と夫35歳、3歳の長女の所に、夫の前妻の息子16歳が同居する話。産む、産まない、産めないのカテゴリーに入るのかな?

    第三話:次男坊の育児日記
    7歳年上の産婦人科開業医の奥さんを持つ、化粧品会社に勤める男の人の話。男の人の産休を取れる会社をアピールするために、産休を許可される。

    第四話:コイントス
    第一話のお友達、重美の話。不妊に悩む40歳。
    これが一番不妊に苦悩する女性達の状況に合った話だったと思う。

    第五話:温かい水
    六カ月目でお腹の子の心音が消え、死んでしまう。
    生まれてくるのに死んでいる、両方をいっぺんに経験してしまう赤ちゃんに嘆く母。死なせてしまって申し訳ないと嘆いてばかりいたら、子供が悲しむよ。と、決意をして海に散骨する話。

    第六話:花束の妊娠
    ヤンキーあがり、母子家庭の二人暮らし。母親に恋人が出来、娘には子供が出来た。それは援助交際の相手の子供だった。同じ16歳での妊娠。誰の子でもない、私の子供。この言葉で母親も長女も出産を決意する。

    第七話:レット・イット・ビー
    お兄さんの子供がダウン症だったというお話。
    自分は『妊娠したなら産めばいいし、機会が無かったとしても後悔する必要はない。ないものばかりを探す毎日はつまらないし、手にしたらきっと他の物を欲しがる』
    本当にその通りだと思った。

    第八話:昨日の運命
    第一話の後日談。
    体を気遣って忙しくない仕事ばかりが回ってくる。
    まだ、年下の男の子に妊娠した事は告げられずに居たのだが、一大決心をして呼び出して告白しようとしたが
    彼は転勤で福岡に、そして結婚を決めていた。
    結局言わずにザ・未婚の母となる。


    本の帯に書いてあったようには感動したり、泣いたり出来なかった。もっと、題名に合ったお話があるとおもっていたのだけれどそういうのはなかった。
    どろどろを期待していたのかな。

  • どれが正解かではなく、あるがままを受け入れること。
    死産の話は想像するだけでも辛かったな。

  • 女性と妊娠についてのいくつかのエピソード。

    受精して着床して生まれる、その命が育つ、
    それは多くの奇跡の積み重ねだと思う。

    おそらく、すべての女性という性をもって生まれた人は
    必ず一度は考える。
    それはいつなのか。選ぶことなのか。選べることなのか。

    おそらく、
    男性という性をもって生まれた人には考えない人もいるのではないのだろうか。

    毎月毎月、
    結構な量の血液が自分の体から流れ出るのを
    見ている女でないと考えないのだ。

    と、思う。ま、これは私の勝手な考えだけどね。

    いろんな奇跡の積み重ねで生まれた自分の命を大切に。

  • 新しいポストを目の前にして、仕事より産む決断。不妊治療して、子どもができないことで夫婦仲まで悪くなる。やっとできたわが子が死産。などなど。
    私にも、なかなかできなかった息子夫婦に子供ができた。産む、産まない、産めない、ただ、動詞の活用の中にいろいろな人生が、

  • 16歳から40歳までの女の妊娠出産を巡る8つの物語。別々の人生なのだが登場人物が多少かかわりを持ち、くるりと一回りする輪となる。

    結婚できるかどうか 結婚しても子供ができるかどうか

    子どもができても無事に生まれるかどうか 

    結婚しないで子どもを産むということ

    結婚した相手に子供がいる

    読者は圧倒的に30代の女性だろうけれどできれば20代の男性にも読んでほしい。勧めるのは難しいけれど。

    自分ではほとんど同じ経験をした「温かい水」が心に残った。

  • 「自由でいたいなら、同じ分だけ孤独を引き受けなければならない。好きな時に食事をして、眠くなったら寝て、観たい番組を観て聴きたい音楽を聴く。したくなければ何もしなくてもいいし、その気になればどこにでも旅立てる。明け方まで飲み明かしても、文句をいう人はいない。」
    「ファンデーションやアイシャドウがオイルに溶けていくと、心の中に澱んでいるものも一緒にとれる気がした。」
    「桜子は仕事そのものが好きだった。大勢の誰かに必要とされる充実感、私が物事を動かしているというテ手応え、やり終えた時の達成感、仕事はいろいろなものを与えてくれる。」
    「大きな孤独を受け入れてまで手にした自由に、どれほどの価値があるだろう、と思った。実際の桜子は、決まった時間に電車にのり、会社から与えられた仕事を、与えられた以上に働き、自分の時間などごくわずかである。旅行に行きたくなっても、すぐに旅立つことなど出来ないのだった。」

    「妊娠したら産めばいいし、機会がなかったとしても後悔する必要もない。ないものばかりを探す毎日はつまらないし、手にしたらきっと他のものが欲しくなる。あるがままに。」

    「わかりやすい不幸を見せびらかすのは甘えだ。」
    「あきらめを肌で知ったことだ、そうした上で、あきらめは決して悪いものではないと思った。それは解放でもあった。重美は今、自分の心がとても澄んでいる気がする。それは、もう叶わぬものを望んでいないからだろう。同時に、過去への愛着が強くなった。過去とは、つまり今の自分を形作ってうれたものだ。これまで、明日のことばかり考え過ぎていたような気がする。」

  • 不妊治療、ダウン症、未婚の母、高校生の妊娠。
    それぞれ妊娠にまつわる困難がテーマ。
    テーマは重いが、登場人物たちが自分の選択に責任を持って前向きに生きよう、選択しようとする姿に好感が持てた。

    子どもを持つことは当たり前ではない。欲しくても授かれない人もいれば、授かるつもりのなかった人が授かることもある。
    取り上げる意味のある題材を、読みやすく加工してくれた作品。

  • この著者にしては大変上出来な作。
    ひとつひとつ丁寧に描かれており、共感できる。
    いつもの「私こんなおしゃれな暮らししてんの」的なブランドや店の名前の披露もなく。
    やればできるじゃん、甘糟。

  • 女の気持ちなんて考えたこともないような人が、この本を読むといいと思う。

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著者プロフィール

1964年、神奈川県生まれ。玉川大学文学部英米文学科卒業。ファッション、グルメ、映画、車などの最新情報を盛り込んだエッセイや小説で注目される。2014年に刊行した『産む、産まない、産めない』は、妊娠と出産をテーマにした短編小説集として大きな話題を集めた。ほかの著書に、『みちたりた痛み』『肉体派』『中年前夜』『マラソン・ウーマン』『エストロゲン』『逢えない夜を、数えてみても』『鎌倉の家』などがある。また、読書会「ヨモウカフェ」を主催している。

「2019年 『産まなくても、産めなくても』 で使われていた紹介文から引用しています。」

甘糟りり子の作品

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