獣の奏者 (4)完結編

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062156332

感想・レビュー・書評

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  • エリンの生き方に感動して涙が出ました。

    私の中でエリンは生きていたので死んでしまったことは悲しかったけど、それ以上にエリンの逞しさに圧倒され、じんわりとした感動でした。
    闘蛇編、王獣編と違って後の2作には母としてのエリンの優しさや覚悟が見える。エリンに感情移入しているぶん、ジェシが愛しかった。

    災いは起きてしまって、沢山の人が死んだけど、それを教訓に平和な国が造られようとしている。平和はこういう風にしてできるのだと思った。
    日本が戦争で得た平和について考えました。決して戦死者の命は無駄ではないと。

    また、動物が人間によって飼われると脆くなってしまうとういことにやるせなさを感じた。だから、最後に王獣が解き放たれたのは本当に良かった。
    ジェシはエリンの意志を継いで立派な獣の医術師になると思う。

    王獣編で終わった方がドラマティックだったかもしれないけど、完結編はエリンの人生が終わるので本当のすっきりした完結だった。

    壮大だけれど愛に溢れた物語。この物語に出会えて良かった。

  • 自分たちの世界を守るため、
    王獣たちを武器に仕立てる訓練を始めたエリン。
    一番したくなかったことなのに、
    王獣と闘蛇の戦いの歴史の秘密に気が付いたとき、
    エリンは自ら王獣部隊の指揮官となる決意をした。
    そしてエリンの夫イアルもそんな妻を守るために闘蛇乗りとなる。
    エリンの息子ジェシは、そんな両親の姿をみて、
    自分の存在は何なのだと悲しくなるが、
    エリンの書き遺した古い日記のような書きつけを見て
    両親の本当の思いを知り、寂しさに耐えようとする。

    王獣部隊を使うことがないようにと願いながら訓練するエリンだが、
    あるとき、ついに闘蛇が攻めて来たという情報がはいり、
    王獣が天に舞い、闘蛇が地をおおいつくす、大激戦が始まった。
    そしてこの大激戦こそ、
    王獣も闘蛇も我を忘れて狂ってしまう恐ろしい毒をもっていたのだ。
    統率のすべをなくした王獣と闘蛇を鎮めるために
    エリンは今まで禁止にしていた「音無しの笛」を吹くことに・・・。
    そして、世界は一瞬にして、静まり返って、激戦はなりを潜めた。

    エリンの哀しい決意は
    自らの分身のような王獣のリランの死という形で成し遂げられた。
    後をおうようにエリンもその命を落とすが、
    イアルとジェシに見守られての死なので幸せだったのにちがいない。
    この大激戦になるまでにエリンはジェシのことでいろいろ思い悩む。
    子供がいるから思いきった行動がとれないと思う反面、
    子供がいるからこそ、この生活を守ってやりたいし、
    未来へ王獣たちの話を語り継いで行って欲しいと願っていたのだ。
    さりげなく書かれた家族愛にホロリとくる場面もあった。

    あとがきを見ると
    「獣の奏者」は2巻で一応終了していたようだ。
    だがアンコールの要望もあり、
    作者はエリンのその後に焦点をあてて3巻、4巻を書いたそうだ。
    そういえば、そんな感じだ。
    1、2巻は恐ろしい王獣にエリンがどうやって心を通わせていくのか
    とても興味深くよめる内容だった。
    3、4巻は王獣と闘蛇を使っての戦争の謎が暴かれていくことに
    面白味が湧いて来た。

    私の好みは前半だ。
    動物と自由に心を通わせたいという憧れが
    前半でみごとに表されていたからだ。
    リランのような生き物はいないが、
    人間と生き物が仲良く共存していく理想社会が良く描かれ、
    そんな社会への羨望が湧いて来る物語だった。

    児童書向けだが、大人でも充分楽しめるシリーズだ。
    上橋さん未読の方がいれば、ぜひお薦めしたいものだ。

  • 太古に起きた惨劇を隠してしまい、結局惨劇は起こりました。しかし、その惨劇を後世に伝える努力をすることで、やっと反省しました。

    真実を正しく伝えていく、大切なことだと思わされました。

  • 単なる勧善懲悪のイケイケドンドンじゃなく
    キャラクターの心の機微が丁寧に書かれているのが本当によかった。
    クライマックスは圧巻。

  • 前作でなんとか家族一緒に生きられる道を追求しようとするも、現状では選択肢が一切残されていないことを受け入れ、アルハンとヨジェに命ぜられるままエリンは王獣の繁殖と訓練に身を捧げ、イアンは闘蛇乗りとなって少しでも状況が好転するように、と努めることに。悩みながらもいったんヨジェの命令を受け入れたエリンは王獣について禁じられていたこと、秘されていたことを明らかにして、その上で先人たちがどうして禁じるに至ったかを、理解しようとするのですが。カレンタ・ロウの文字の話やオチンという鳥を飛ばして文通をしていたエピソードは心温まるものの、全体の流れは悲観的で、大変面白かったのですが読後感はやや重かった。あとがきを読んで、本来は闘蛇編と王獣編でいったん完結していたというのを知り、ああなるほど、と思いました。これから外伝を読みます。

  • クライマックス。
    予想していても、胸が痛いリランの落下シーン。神速の駆けつけ。
    歴史の始まり。伝説の終幕。

  • 面白かったけど、2巻で終わらせた方がドラマティックでよかったのにと思う。
    辻褄合わせの為の説明が長い。

    真王がやはり好きになれない。
    動物が好きなのでエリンの王獣に対する気持ちが良く解る。やりたくないけどやらざるを得ないエリンが可愛そう。

  • 気になりすぎて真夜中に起き出して読みました。
    されど悔いなし。

    エリンが王獣部隊を編成する姿を見て育つ息子のジェシはいつしか、自らも母親と同じ仕事に就きたいと思うようになる。
    そして、母親が戦に備えていること、そこで何が起こるかわからず、その責任を取ろうと考えていることまでを知ってしまう。
    エリンはとうとう戦に旅立つが、一足遅くカザルム王獣保護場にカレント・ロゥ<残った谷の人々>が災いの内容を伝えにやってきた。
    それを知ったジェシは母親を止めるべく、王獣アルを操って駆けるが―――!?

    というのがあらすじ。
    こうなるだろうなあ、と思った通りの展開になりましたが、
    上橋菜穂子さんの作品に珍しく、主人公が死んでしまいました。
    王獣たちをゆがめずに生きさせてあげたい、自分一人の犠牲ですませたい、松明を渡す人になりたい。
    エリンのその願いはかなったけれど、少し悲しい。

    わくわくするような物語として完結させるなら、本人も仰っていたようにやはり二巻で終わらせておけば完璧だったのだろうなあ。
    エリンという才能にあふれた、ヒーローのような少女を、懊悩する母親にしたことで地に足の着いた人間に仕立て上げたという感じ。
    あとはどちらが好みかの問題だなあ。

  • 3巻と4巻は、アフターストーリー。なくても良かったかな。

  • 2巻までで完結予定だったとあってなるほどなあという気持ち
    物語にノンフィクションのようなやるせなさを加味した味わい
    この終わり方ならいっそ謎の一部は解けないまま世界の広大さを痛感させて了、というのもあった気がする。

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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