星が吸う水

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 242
感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062160971

作品紹介・あらすじ

私と、性行為ではない肉体関係を、してみませんか?精神は肉体をもてあまし、潤うことも充足することも叶わない。「男と女」、「女と女」が対をなす双作小説。

感想・レビュー・書評

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  • 「星が吸う水」「ガマズミ航海」の2編。

    この作品の登場人物のような考えだったり感覚だったり、実際に持っている人もいるんだろうなと思いました。
    独特な世界観でした。

  • 「ギンイロノウタ」とは、また違った意味で、何と書けばいいのかと思っております。         私自身は、性に関して、恥ずかしいと思ってしまう反面、適当に考えたりすべきではないと思います。開かれてはいない内面の話だからこそ、身近であるし、確かな答えのようなものがあるのなら、知りたいとは思います。だから、それに対して、必死になるのも頷ける話ではありますね。物語は、滑稽に思われる反面、主人公二人の心の内は、哀愁があるのかなと思いました。必死であるゆえに。特に、結真は読んでて、切なかったですね。安易に、その考え方、変わってるねとは思いません。

  • 「星が吸う水」
    SEXと性の観念を揺さぶる。


    人にはSEXや性に対して固定観念がある。男と女でも違う固定観念を持ち、男の中でも、女の中でも、きっと違うものを持つ。例えば、遊んでなんぼの男と女の観念って、そうじゃない側とは全く別物である。


    本書にはSEXや性の固定観念を揺さ振る二編が収められている。「それがSEXであり、性とはそういうもの」と言う普通さとは真逆にいる女性は、こちら側の世界に「私が思うSEXってこういうもんよ。性だってそれが普通とは限らないんじゃ無い?」と言うメッセージをストレートに投げてくる。


    私は男であるから鶴子や結真の豪速球を正確に受け取れたかは分からない。ただ、コントロール宜しく上手いところを突いてくるなとは感じることが出来た。一方で、鶴子と結真の言わんとすることは、女性ならばより汲み取って上げることが出来るとも思う。


    村田沙耶香のSEXと性の在り方に対する切り口は見事で、それらを表現する文章は官能的過ぎず、文学的な空気を感じる。文学的ってなんやろ?と毎度考えてしまうが、この場合、鶴子と結真の言いたいことが官能的なシーンが先に頭に浮かぶこと無く、文章の力だけで伝わってくる。


    例えば、「星が吸う水」では、鶴子は性的興奮を勃起と表現し、「ガマズミ航海」では、結真は性行為じゃない肉体関係に興味を持つ。2人は、自分の観念の下、濃厚で他人から見たら変態的なSEXを行う。それも恋人じゃない男や女と試す。しかし、エロティックになりそうだが、彼女らのSEXにはいやらしさを感じない。人体実験と言う言葉が出てくるが、確かにただ試している様にも見える。つまりは、鶴子と結真の考えは、考えとしてすんなり受け止めることが出来る。


    一方で鶴子や結真の友達は、普通に男とSEXをする。そこには好きと言う感情や女としての価値、飢餓感など、様々な動機がある。しかし、その動機とは一線を画す観念が2人にはある。2人の観念は普通では無いかも知れない。が、ありかも知れないよ?と問われている気もする。


    <収録作>
    □星が吸う水
    □ガマズミ航海

  • 性における女性性、男性性というもの対して、問を投げかける2篇の小説。やはりこの人は正常であるという事に疑問を持ち続けている人なんだと思う。性行為とセックスの違いについて、同じような事を考えている友人がいる。その人は「狩る」ではなく、「食う」と表現していたが、勃起していたのかと、こういう事だったのかとその人の事を少し理解出来たような気がした。妙に男性を感じさせる彼女に読んでもらって感想を聞きたい。今度ガマズミ教えてあげたい

  • 【星が吸う水】
    『相手の頭の中には恋人同士の幸福な流れというものが儀式のように横たわっていて、ペニスの前にまずそれをこすらなくてはならないのだ。その見えない性感帯は性器と違って、服を着てベッドの外へ出てからも、日常的にこすり続ける必要があった。』

    「面白いけど、足元が暗くて危ないね」
    「でも、ここは宇宙なんだから、暗いほうが普通じゃない?」

    『「え、あたしが持ち帰ったんだよ?」
    そう返すと、友人は笑っていた。性器が穴状だと、いくら能動的に行動していても、受身だと思われてしまうのかもしれない。それが鶴子には不満だった。』

    「志保って、空が好きだね」
    「昼間の空は、それほどでもないよ。その向こうの、宇宙が、よく見えないから」
    「プラネタリウム好き?」
    「嫌いかな。かえって、遠く感じるから」

    『身体を弄ぶという部分を聞いて、鶴子は下を向いた。理屈では意味がわかるが、それを感覚的にうまく理解することが出来ないのだった。同意の上でしたことなのに、何故、当然片方が被害者になるのか、鶴子にはよくわからないのだった。』

    【ガマズミ航海】
    『これも「おしゃぶり」の一種だな、と結真は思う。こうして会って、商品としての価値が自分にまだちゃんとあることを再確認させてくれる言葉を求め合う。お互いに、相手の欲しがる言葉を与え合っては、耳の粘膜でしゃぶっている。』

  • 「星が吸う水」のラストに驚きと感動。 などと言うと変な人と思われそうだけど実際すごく感動してしまった。 おおおお。やったあ。

    「ガマズミ航海」もかなり風変わりな物語だけど良かった。
    皮膚で区切られた宇宙―この感覚、実はすごく解る。 自分の中に宇宙があるのを感じるので。

  • 抜くためのセックス
    交わる以外のセックス

  • 『星が吸う水』
     主人公・鶴子は、自身の性衝動を「勃起」だと認識している。恋人の存在も、効率良く排出するための行為をする相手に過ぎない。
     一方で彼女を理解できない、一般的な恋愛観と性への認識を持つ梓と、無性愛者の志保。仲良しだからこそ、自分の価値観を理解してほしい、セックスという言葉の意味を崩壊して見せようと試みる。

    『ガマズミ航海』
     生きた肉片をしゃぶりたくなるからセックス(側から見たらセックスだけど本人はセックスと思っていない)をする主人公・結真。手ごろな体温をしゃぶりたい気持ちと、恋愛からくる純粋な欲望が異なることを相手の男には理解されないもどかしさから、性的じゃない肉体関係を見つけようとする。

     女=性的弱者と思ってしまうのは凝り固まった性概念のひとつなんやなあ。わたしも梓のように自分のものさしふりかざして「そんなんじゃ幸せになれへんで!」とか要らぬ説教をしてしまいがちかもしれへん。反省。性の話なんて他の人と滅多にしないから、人の数だけいろんな感覚があるんだなあと新しい発見をしたような読後感。
     そしていずれも性的な描写が多く出てくるんやけど、エロではなくて新鮮だった!

  • 『星が吸う水』と『ガマズミ航海』の二本が収録されています。


    どちらも少し変わった性のお話なんだけど、エロではない。

    鶴子も結真も性に対して切実で有る意味真剣でなんだか憎めない。
    ただ共感はできないんだけど。

    村田さんの作品ってなんか独特なんだけど、読ませる力はすごいと思う。
    どんどん世界観に引き込まれるし。
    ただ個人的にはもっと共感できる小説の方が好きかな。

  • はじめ、この人は一体男なのか女なのかと思った。読み続けるともっと深い地球規模のおっきな話し。笑。
    性欲の話し。
    性に男も女も関係ないよ。
    男が羨ましい気分もするし、女が羨ましい気分もする。

    鶴子と武人と、鶴子と梓と志保。
    あずさ。

    それぞれ全然違う考えを持ってるのに仲良しで、最後には鶴子が誰にも見せてないことする。

    家には水道水しかなかったり、あまりいろいろ気にしなくて、自分の世界あって。鶴子はすごい人だ。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身(かわりみ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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