悪貨 (100周年書き下ろし)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062162487

感想・レビュー・書評

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  • お金って一体何なんだろう。ただの紙切れ、されど、それが価値を持つことにより、巨大な力を持つ。金に、どんな価値をつけるのかは、それぞれだ。心が伴っていて、上手くいく場合もあれば、逆も然り。
    彼岸コミューンの考えは、現代の貨幣制度に対する問題提起か?

    な〜んて、真面目に書いてみたが、極上のエンタメ小説である。
    頁を読む手が止まらなく、読み進めてしまった。登場人物が交差していく見事な配置。金に振り回される人々、振り回す人々、それを追う人々。様々な視点で描かれる世界。

    その中の、野々宮という男。島田雅彦は、こういう人を書くのが上手い。完璧なんだけれども、どこか抜けていて。情があるところが、読んでいて惚れてしまう。女刑事も、これまた、彼の作品に出てくるタイプ。この2人のラブストーリーは、終わりが見えているけれど、どちらも希望を信じている、それが辛い。が、私はこういう終わり方は好みだ。野々宮と恩師の下りも切なく、「一言の重み」を知らされる。

    全体を通して、文体も他の作品と違い読みやすく、島田氏が面白がって描いている…そんな気もした一冊。

  • 序盤の展開は面白くて引き込まれる。
    でも、カラクリが分かってからは少し失速してしまった感がある。
    ちょっともったいなかった。

  • 悪い貨幣と書いて悪貨
    経済小説とでもいうべきお金に関するサスペンス

    あるホームレスが100万円を拾う。しかし、それは全て偽札だった
    偽札鑑定のスペシャリストによると、それは今までで最も精巧に造られた偽札
    偽札作りの捜査線上に浮かんだのは、中国から日本の企業に巨額の投資を繰り返す野々宮という謎の男
    ・その野々宮に恋心を抱いてしまった、女スパイ刑事エリカ
    ・貧民救済のための共同体を立ち上げた野々宮の恩師、池尻
    ・印刷工場をクビになり、偽札づくりに加担せざるを得なかった男
    ・中国人の黒幕
    ユニークな登場人物の波乱万丈な人生とともに、
    日本の貨幣経済は崩壊へと向かっていく
    そのとき国が下した結論とは・・・
    偽札が、人生を狂わせ、国家をも狂わせていく・・・


    世の中への大いなる警鐘。貨幣経済のもろさが描かれていた・・・怖い

    中国で大量の偽札を作る
    →日本に大量の投資(中国の資産)
    →日本はインフレ・物価が高い
    →円が暴落
    →土地や資源は中国のもの。中国の領土

    ホームレスの皮肉
    「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず
     でも、1万円札の諭吉はこう言いたかったのだ
    カネは人の上に人を造り、人の下に人を造る」

    「しおり」が零円貨幣
    1万円札の数値かゼロ

    お金って何だろう、権力って何なんだろう、国家って何なんだろう
    簡単なテーマではないが、経済学に詳しくない僕でも
    小説として設定やストーリーが面白いから一気に読めてしま

  • 島田雅彦という作家を初めて知ったのは、爆笑問題のピープルという本で対談しており、売れる小説より人を救える小説の方がずっと価値がある、というようなことをいっていたのを見たときだった(10年位前か)。

    その頃からなんとなく、浮世離れしているけど本質を捉えようとしている玄人好みの作家だという認識を持ち、ツイッターなどではフォローしていた。

    といいつつも、小説を読んだのは今回が初めてだったわけであるが、先日投稿した「悪と戦う」を探しながら「悪貨」のことを思い出し、「正義の話をしよう」(マイケルサンデル)を最近読んだことも相俟って、正義とか悪とか自分が好きだったものが今自分に再び集まってきているとやや信心めいた気持ちで読んでみた。



    感想は、思っていたよりずっとストーリーやプロットがよく考えられており、やっぱり小説ってエンターテイメントだな、というのが読後の最初の印象。

    与えられたテーマも、時代を捉えたものだが経済小説のようでもあり、社会風刺のような面もあって、村上龍のようでもあるなとも思った(村上龍の小説もちゃんと読んだことはないが)。

    そういえば、島田雅彦はくだんのピープルで、村上龍の小説はどうしても目を通してしまうといっていたような気がする。

  • 野々宮の死で結末を迎えるが、野々宮の秘書・鉄幹の「あなたはただ父殺しをしたかっただけなんじゃないですか?」という言葉が印象的だった。

    養父のような存在であった池尻を殺してしまったあたりから崩れて、転落はすごい早さだった。

    早くに亡くした母親のこと、母のことを助けもせず自殺をした父親のこと、野々宮という男を形成しているものは肉親への強烈な思いだったのかな。

    エリカが真性のマザコンだと野々宮を評していたけど、少年のまま止まってしまったような人だったのかな。エリカが野々宮に惹かれたところって、結局のところ母性本能的なそんなものかなと感じた。

  • 金に殺された両親のため国に復讐する。
    偽札500億を中国で印刷、左翼的なユートピア思想の宗教団体を通じて、日本に流通させ、ハイパーインフレとスタグフレーション、日本売りを行う。
    トンデモ話なところも多々あり。
    超絶技巧を持った印刷工、並外れた目を持つフクロウ、人目を惹く美人刑事。
    キャラを立てたはずが、あまり活躍の場がないまま退場。
    錨を抱いて海に放り込まれた男。思いを遂げたのか?警察に捕まったほうが良かったのでは。何がしたかったのか分からなかった。

  • 通貨の信用をテーマにしていておもしろいが特に残る物はない。$$通貨信用不安を巡る混乱や政府内銀行内の混乱などはほとんど触れられておらず物足りない。$$また唐突に米国が信用不安になっていたという状況に設定がなっていたり説明無く状況が変わっていたりする。

  • ホームレスの足元にある日突然100万円の入った袋が置かれる。散髪し、服を買い、寿司を食べ、人生の再起を誓う彼だったが、散髪屋の男の友人に襲われ、お金を奪われてしまう。

    ホームレスからお金を奪った散髪屋一味はキャバクラで散財する。そのお金は、当日に店を辞めることになっていたキャバクラ嬢に渡される。

    キャバ嬢は夜行で実家に帰る。実家の借金の返済がこれで出来ると安心していたが、銀行で驚愕の事実を知らされる。

    お金は贋金だった。

    作った本人ですら騙されるほどの完璧な贋金は日本経済を揺るがし、スーパーインフラを引き起こす。その引き金となった野々宮の元には警察からスパイが送り込まれようとしていた。

    最後に野々宮は海に沈められてしまう訳ですが、彼もかわいそうな人ですよね。お金で本物の愛情は買えないのだと思いたいです。

  • あっさり読める。高校生がお金の意味を考えるのにはいいかも。今、村上春樹の1Q84読んでいるけど、こうしたユートピアみたいなな社会主義共同体というのは資本主義に駆逐される運命なのかしら。

  • 読み始めると止まらない面白さがあった。しかしそのわくわくも後半はなんとなく尻すぼみな感じがしてしまう。全体の感想としては面白かった、と言ってもいいけど物足りなさも残る作品でした。

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著者プロフィール

作家

「2018年 『現代作家アーカイヴ3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

島田雅彦の作品

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