すばらしい人間部品産業

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制作 : 福岡 伸一 
  • 講談社 (2011年4月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (450ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062162876

すばらしい人間部品産業の感想・レビュー・書評

  • 『すばらしい人間部品産業』というタイトルの『すばらしい』は、かのハクスリーの『すばらしい新世界』と同じ意味を持っている。

    現代は、利潤と効率の時代だ。
    血液、臓器、胎児、卵子、精子、人間の身体はパーツ化され、それを”部品”として売り買いするばかりか、代理母として、その生殖機能までを売買しているのは周知の通り。パーツはさらに細かく分断され、はては遺伝子にまで商品化は及ぶ。
    自分のパーツを「売る」のは、その殆どが経済的に貧しい人々だ。
    彼らにとって臓器を売って得る金額は、一生涯に稼ぐ金額よりも大きい。
    世の中には子供を持つためには、金銭に糸目をつけないという人も多い。が、そこには強力な経済的な制約が生じる。
    そして、生殖ビジネスには常に優生学がつきまとう。

    我々はいつから自分たちの身体まで商品として扱いはじめるようになったのか?
    著者はその萌芽を、ガリレオとアダム・スミスに見出す。
    前世紀、科学は驚くほどの進歩を遂げた。研究者たちはモラルよりも自らの能力の証明を優先させたがった。
    そして科学と経済は強力なタッグを組んで邁進してきた。

    本来そこには、倫理観や社会道徳がなければいけなかったのに、私たちは立ち止まって考えるということをしてこなかった。
    このまま放置すれば、必ず未来はディストピアになるだろうと著者は警告する。
    だが、バイオテクノロジーの恩恵をどこまでは許容できて、どこからが許容できないという線を引くのは難しい。
    しかし、alll or notingではない。「無償供与と共感」という考え方に立ち戻ることで、私たちは人間の身体、命の尊厳を取り戻せるのではないかと著者はいう。

    本書は、前半かなりの部分を割いて、バイオテクノロジーと市場主義がもたらしたおぞましい人間部品産業の現実を明らかにする。これらは怖いものみたさ的な興味を引く。が、本書の趣旨は後半にこそある。
    問題提起のみに留まらずに、著者はそれを解決すべき具体的な施策まで言及しているのだ。

    ただ、人間の欲望というものは手強いものだ。
    この施策がアメリカで法案化されたとしても、人間部品産業の暴走は止まらないかもしれないな、などと思った。

  • 優生学と、医療の“進歩”が合わさると
    こんな世界になるのだろうか

    人間が主に畜産でしていることが、
    対人間でなされていく実態

    神の領域に踏み込む部分は、倫理とのバランスをとっていく必要があると感じた

  • es細胞やiPS細胞の利用や遺伝子組換え。
    現代分子生物学までの系譜がわかる。

  • 原著は1995年発刊なので、もう18年も前の本なのですが、血液や臓器売買、生殖ビジネス、遺伝子ビジネスなど、人間の人体が売買される状況について詳細に説明されている。価値を貨幣というモノサシでしか測れない人類の辿り着く先が暗示されているようにも思う。

  • 1 人体と部品のあいだ
    2 赤ちゃん製造工場
    3 遺伝子ビジネス
    4 人間部品産業との闘い

  • 代理出産、人工授精、臓器移植とエグい最先端医療の実態の紹介。
    それだけでも、読む価値がありますが、この本が秀逸なのは終章で、人体を商品化しようと、考える事が出来るようになった、歴史的背景を考察しているところです。
    欧米のこの手の本は、必ず歴史の中での位置づけを書き記します。いつも分厚いモノになるんですが、
    これに慣れると日本の新書は、もうね。

  • 難しかったけど、面白かったです。

  • 生命科学への警鐘一辺倒。
    その懸念はその通りで、立ち止まって進むべき境界を線引きする必要はあるのだろう。
    ただ、著者の懸念する方向、生命が物質と同じ扱いを受けた時、そこに問題はあるのかが、ピンと来ない自分がいる。道徳観の問題か?

  • いつの間にか、人間部品産業は、ずいぶん普及しているようです。さまざまな「産業」の例に、そんなことはやめとけよ、と思うものの、自分が当事者になれば、もしかしたらわからない。
    「技術」と「倫理」と「経済」のいったい誰が強いのか。「原子力ムラ」と同じような傾向を感じます。
    なかなかハードな本です。

  • 福岡氏と阿川氏の対談本「センス・オブ・ワンダーを探して」で少し取り上げられていたので読んでみた。

    何ら信仰は持ち合わせていないが、これはもはや「神の領域」ではないか?
    人間の尊厳、生命の尊厳というものはどこへ行ってしまったのか。もうこんなところまで科学技術が進んでしまっているという事実に驚愕、というより戦慄に近い。

    終盤、人間の商品化を文明の変革を追いながら考察、自由市場主義によって労働や土地が商品化されたことで、加速度的に進んできたという視点は非常に興味深かった。

    いずれにしろ、規制や倫理面での判断基準が確立されていないのに、どんどん技術面だけが進んでいっている、既成事実だけが出来上がっているというのが現状のようだ。
    取り返しがつかない事態になってしまう前に(ひょっとしたらもう取り返しがつかないのかもしれない、と思うと恐ろしいが)、一刻も早く何らかの基準を確立させることが急務なのだろう。

    なんとなくある偏りを感じないではないが、非常に示唆に富む良書であった。

    余談。
    病気の子どもを救うために妊娠するという話、映画「私の中のあなた」を思い出しちゃったなあ…。

  • そのうち、どこか利用価値のある体だと、死ねない時代がきそうだ。
    脳死っていわれても、ほんとに意識とか無いんだろうか・・

  • 近代からの機械論的思考と自由市場主義は、現代に至って「人体の商品化」-血液、臓器、生殖系、そして遺伝子-に及ぶまでになった。
    このアイロニーに満ちた反語的タイトル「The Human Body Shop」ー本書は、世界を席巻しなお肥大化しつづける、血液や臓器にはじまり、ヒトの肉体のあらゆる要素を商品化させてきた医療ビジネスへ、根底的問いを放つ警告の書だ。

    Part.1 人体と部品のあいだ
    1.血は商品か
    2.臓器移植ビジネス
    3.胎児マーケット
    Part.2 赤ちゃん製造工場
    4.赤子産業
    5.生命の種
    6.卵子の値段
    7.胚は人間といえるだろうか?
    8.出産機械の誕生
    9.パーフェクト・ベビー
    Part.3 遺伝子ビジネス
    10.遺伝子をデザインする
    11.他人に差をつける薬
    12.人間の遺伝子操作
    13.機械化された動物
    14.生命に特許を
    15.人間性の独占
    16.クローンウシをあなたの手に
    Part.4 人間部品産業との闘い
    17.移動機械と神の見えざる手
    18.機械論的な「からだ」
    19.人間モーター
    20.貪欲主義
    21.悪魔の工場
    22.岐路に立つ
    23.「からだ」についての思考改革

  • 小説の中だけと思っていた臓器売買や遺伝子、細胞、果ては胎児まで、経済活動に組み込もうという怖い内容。
    倫理的にどうだとか、宗教的にどうだと言っても、現実に特許という枠組みで金儲けの一手段となりつつある(もうなってる?)ことが目の前に現れそう。

    人間を、部品に分解できるわけがないのに、それが現実になっていることは知らなければならないし、身内がそれで助かるならそれにすがりたいとも思うだろうし。複雑な気分である。

  • 本書ぜんたいが、「人間は部品のよせあつめではない」という主張に沿っているので、そこに賛同できる人には最高の本だろうとおもう。しかし……訳者のせいか「もう牛を食べても安全か」と言い放った(数量的な議論ではなく、二分法で語る)福岡伸一にかんじたうさんくささと同様のものも感じる。たしかに、命を商売にしてはならないと思うが、生命科学研究は仙人によって担われているわけでもあるまい。二分法の罠にはめられないよう、注意して読む必要があると感じる。

  • 人間の命について深く考えさせられました。馬鹿とハサミは使いようといいますが、テクノロジーの使い道は、いろんな視点で考えないといけないと改めて思い知りました。

  • 「私の問題意識はこの本から始まった」 福岡伸一

    ★臓器や組織の効率的な売買のために、胎児の生体解剖が行われている?
    ★凍結されたままの胚(受精卵)に、人権や遺産相続権はあるのか?
    ★ある調査で、「生まれる子供が肥満体とわかれば中絶したい」と答えた人が11%
    ★ヒトの遺伝子をもつように改良された「動物」に次々と特許が与えられる
    ★「背が高くなるように」と、毎日ヒト成長ホルモンを注射する少年
    ★クローン技術によって生まれた生物には、なぜ「異常体」が多いのか?

    血液、臓器から、胎児、遺伝子、はては新種生物やクローン人間までもが効率的に生産され、市場で売買される時代。その萌芽はすでに半世紀前から始まっていた……。
    人間部品産業(ヒューマンボディショップ)のリアルな実態に警告を発した歴史的名著に、新エピソードを加筆した改訂&決定版! 福岡ハカセの“原点”が名訳とともに甦る。

    人間は「人間部品の商品化」に答えを出せるのだろうか?

  • 人間の体を構成するもの一つ一つに値がつく。人間の命は重いとする一方で、保険における限度額が設定されていたり、精子や卵子、血液、臓器に対しても、一定の値段で売買することが可能となっている。これにより、結果として助からなかった命が助かることになった。それは大変魅力的であり、望ましいことだと言えよう。その一方で技術の進歩、医学の進歩と学問の分野が開拓されていけばいくほど、今度は商業的な部分と結びついていくことになるのは避けられない。確かに、この体は自分にとってのものに相違ない。がしかし、あらかじめ定められたマーケットの相場に合わせて、それを流動させることは少しさみしい気もする。自分にとってこの体とは何か?と立ち止まり、考えさせてもらえる一冊である。

  • 知っている以上にバイオテクノロジーは進化していて、そのことにわたしたちはあまりに無自覚だと気づかせてくれる本。人間の身体が市場原理に基づいたいま、共感の原理に舵を伐ろうと提案する。ここの部分は西洋キリスト教に密接した論の展開なので、やや説得力に欠けると思う向きもあるかも(要するに、ここで立ち止まらないとまずいぞってことなんだけど)。
    『すばらしい新世界』を先に読むことをお薦めする。

  • 機械産業で勝利を収めた二十世紀を「物理学の時代」とするなら、二一世紀は「生物学の時代」であるそうだ。「胎児組織を実験用マウスに移植」、「代理母をめぐって違憲訴訟」、「実験室で異常動物誕生」、「エイズウィルスをマウス遺伝子に導入」、「政府が遺伝子配列に特許申請」など、さまざまな問題をはらんだ見出しが紙面を賑わす。人間部品産業とも呼ばれる昨今のこの実態。本書はその全体像を浮かび上がらせ、その是非を問うた一冊である。

    そのタイトルから誤解される向きもあるかもしれないが、本書は生命の商品化を礼賛する類の本ではない。この邦題も、オルダス・ハクスリーの反ユートピア小説「すばらしい新世界」になぞらえて付けられものである。一九九二年に出版された歴史的名著に、新エピソードが追加された改訂版。二十年近くを経て改訂版を出す著者の、終わりなき思想戦である。

    ◆本書の目次
    Part1 人体と部品のあいだ
    1 血は商品か
    2 臓器移植ビジネス
    3 胎児マーケット

    Part2 赤ちゃん製造工場
    4 赤子産業
    5 生命の種
    6 卵子の値段
    7 胚は人間といえるだろうか?
    8 出産機械の誕生
    9 パーフェクト・ベビー

    Part3 遺伝子ビジネス
    10 遺伝子をデザインする
    11 他人に差をつける薬
    12 人間の遺伝子操作
    13 機械化された動物
    14 生命に特許を
    15 人間性の独占
    16 クローンウシをあなたの手に

    Part4 人間部品産業との闘い
    17 移動機械と神の見えざる手
    18 機械論的な「からだ」
    19 人間モーター
    20 貪欲主義
    21 悪魔の工場
    22 岐路に立つ
    23 「からだ」についての思考改革

    Part3までのおどろおどろしい人間部品産業の実態の数々、血液の商品化にはじまり、世界中で行われている臓器売買、公然と横行する精子・卵子の売買、代理母契約、胎児・赤ちゃんの商品化、生体試料の販売合戦、遺伝子・細胞などの特許化など枚挙にいとまがない。そして本書の本質は、そのレポートを受けた後のPart'W以降にある。すなわち、人間部品産業がどのような歴史的背景を経て成立されるようになったのかという考察である。

    著者はその原点にガリレオの名を挙げる。ガリレオの信念とは、自然界は、形而上学的な見方や精神論から解明できるものではなく、定量的な測定や厳密な数学的解析を通してのみ理解できるというものである。最終的には原子論へと至るガリレオの哲学は、人間の経験の全体像を、観測可能で、物質と運動のことばで説明できる、ごく限られた部分に置き換えた。こうして生命を解体し、機械論的な姿に整形し直された新しい科学のもと、デカルトによる動物の機械論的解釈、ラ・メトリーの人間機械論が結実し、人間部品産業が誕生する素地を生み出したということなのである。

    また、「神の見えざる手」に代表される自由競争主義、自由市場原理も、人間部品産業のもう一つのエンジンである。つまり個人が自らの欲望を何物にも妨げられるずに追求することによって、意識するしないにかかわらず、公共の利益を生み出すとされる考え方である。この言い分に則ると、人間部品が自由に取引されることによって、より多くの臓器がより安く供給され、需要のあるところに公平に分配されるということになるのだ。

    これらマイケル・サンデルの「Justice」にも出てきそうなジレンマを生み出すお題に対して、著者のスタンスは明解である。それは、商品の定義が、売買を目的として生産された部品であるということにある。人間自身を形成するものや、人間の労働は、決して売買を目的として生産されたものではないということな... 続きを読む

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