シューマンの指 (100周年書き下ろし)

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著者 : 奥泉光
  • 講談社 (2010年7月23日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062163446

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シューマンの指 (100周年書き下ろし)の感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。前半は芸術的な感性が高潔に描かれ、奥泉さんの文章力の確かさがあらためて再確認できる素晴らしい描写の連続であったと思う。中盤からなにやら怪しげな雰囲気が醸し出され、またいつもの奥泉さんの悪い癖(苦笑)が出てくるのかと思い、不安を抱えながら読み進めた。物語は破綻しかけてはまた持ち直す、幻想に傾きかけてはまた現実へ戻る、を繰り返しながら進んでいく。行き着く先はまだ見えない。でもそれはいつものこと。過度な期待をせずに読む。とは、奥泉さんの本を手にとるときにいつもあらかじめ考えることなのです。
    でも、驚いたのは、最後に辿り着いた先だった。
    まさかこう来るとは思わなかったのです。これはきっと何も書くべきではないと思うので書きません。ただ、僕が勝手に考えていた奥泉さんの結末のつけ方とは違っていた。それに驚いたのです。こういうふうにも書けるのか、と。

    さも奥泉さんのことを知ったかぶりで書きましたが、許してください。勝手な思い込みです。でもやはり奥泉さんの描写力はすさまじいですね。音楽のことなんて、しかもクラシックのことなんてこれっぽっちも知らない僕がシューマンにのめりこみそうです。ブクログでの評点は低いようですが、これは傑作だと思います。素晴らしい!!

  • 音大を中退して医者となった主人公「私」が、友人「鹿内堅一郎」からの手紙をきっかけに、かつて憧れ慕って止まなかった後輩天才ピアニスト「永峯修人」について記す回顧録形式のミステリー。
    『ダヴィッド同盟』を結成して音楽談義に花を咲かせた甘酸っぱい高校生活、耳にした3回の修人の演奏、音大受験などのエピソードに、シューマンの楽曲解説を交えながら話は進む。序盤から事件の存在はちらつかせるものの、夜の学校プールでの女子学生殺人事件が起きて本筋が進みだすのは作品の中盤から。後半は急速に展開し、事件の真相が二転三転する形で幕を閉じる。
    『演奏なんかしなくたって音楽はもうすでにある。演奏はむしろ音楽を破壊し台無しにする』という、全般に亘って語られる修人の音楽理論は、伏線とも考えられるが、そうでなくても興味深い。
    萩尾望都の少女漫画を文章で読むような、鮮やかで美しい禁断の香が至る所に感じられる作品。トロイメライとクライスレリアーナ以外はシューマンをよく知らなかったので、楽曲名が出るたびにYoutubeで検索して聴きながら読み進める楽しみがあった。作品前半で修人の弾くシューマンのコンツェルトを旋律に沿って解説するくだりから、曲が脳内再生されてのめりこむように惹きこまれ、読後には作品自体がひとつの音楽だったような印象が残った。
    結末部分はあまりにも「二転三転」を狙い過ぎてあざとい気もした。たまにお目にかかる主人公犯人のミステリーというのは大抵納得がいかないが、作品全体がシューマンの人生とかけあわさって精神的不安定感をもって進むので違和感はなかった。
    しかしすっかり修人に心惹かれていた一読者として、作中人物が実在しないは当然としても、小説の中にすら存在していなかったという結末がどれほどショックであることか・・・。(2011.07)

  • 多彩な表現や豊富な語彙で音楽を綴る、筆の力がとても印象的でした。
    若き天才ピアニストの口から語られるシューマンについての講義。
    語り手が手記に綴る、曲そのものや演奏についての熱のこもった描写。
    実際に音楽を聴きたくてたまらなくなり、YouTubeでピアノ演奏を検索しつつ読み進めました。

    ただ、ミステリーとしては個人的にはしっくりこなかった…というのが本音。(レビューでも賛否両論あるようす。)
    音楽の印象が強かったことと、結末がなんとも言えない消化不良だったからだと思います。
    後半の愛憎渦巻く、ねとねとした空気にもなじめず、前半に比べるとページの進みが遅くなりがちでした。

  • まるでシューマン教徒のシューマン礼賛書のようだ。シューマンを聞かないとレビューが書けないと思い、図書館でCDを借りてきた。そこまでして私がこの本の書いてある内容を知りたいと思わせた分、この本の勝ち。
    批評の羅列がすごい。よく聞き込んでいるな、と思う。ただ、音の印象による音楽の文章表現がおおくて、具体性にかけると思われる。演奏家同士の批評、感想であれば楽譜の詳細についてもっと触れたほうがよりより現実的なのではないかと思う。シューマン教伝道師と生徒の会話で終わっている。
    オチはちょっとがっかり。もう少し別の着陸点を見つけてほしかった。

  •   奥泉光「シューマンの指」(講談社 2010)は、シューマン生誕200周年を
    記念して書き下ろされた小説で、全編シューマンの音楽が流れていると言え
    るほどだ。シューマン好きはもちろん、音楽の好きな人にも、またミステリー
    ファンにも好まれる仕掛けがある。

  • シューマンのピアノソナタを聴きながらのレビューです。
    面白かったぁ〜。
    読み終えてから、読み返しを何度もしてしまいました。
    ラストにえっ?えっ?えっ?と展開していきます。
    まさに帯に書かれた通りの、衝撃のラストです。
    この本を読んでから、シューマンの虜ですww
    思い悩み、迫ってくる、そして煽る感じの曲調。
    ぜひ本を読みながら、登場する曲を一緒に聴いてください。
    より、楽しめること間違いなしです!

  • 「演奏なんかしなくったって音楽はもうすでにある。演奏はむしろ音楽を破壊し台無しにする」
    なるほどと思った。作曲者が描いた世界感を描くためには、演奏者という第三者を介することなく、作曲家と観客が楽譜をとおして1対1で対話をすることのほうがいいのかもしれない。途中までは、ミステリーというより音楽小説という新しいジャンルかと思わせるくらいの出来です。
    最終章のどんでん返しも、見事です。

  • 友達に薦めて貰った本。
    これは…これは凄かった…最後まで読んで全てが変わる、圧倒的な展開だった。

    ピアノの鍵盤を模した表紙に、リアルな血が描かれていて、天才ピアニストが怪我をする(ないし転落人生)的なストーリーかな。と想像して読み始めた。
    文章が非常に堅く、純文学のようでなかなか読み難い。
    更には主人公がウダウダしていて、回想(本編)になかなか入らないので冒頭は本当にとっつき難かった。

    回想に入って修人という天才ピアニストが絡んでくるあたりからはなんとか読めるようになる。
    私がハマっていくまでは時間が掛ったのだが、この堅い文章で徹底的に女性の容姿を貶しているところにツボってしまった。こんなに酷い表現があるだろうかと笑

    ピアノの話も専門的で、曲を知らないと分からないのだが、天才が語る音楽観というのは読んでいて面白かった。
    そうこうしてる間に、殺人という驚きの事態へと物語は転換していく。
    これは天才ピアニストだけに焦点を当てたものじゃないんだな、と理解しつつも、一体どういった結末になるのか?ページをめくる指が踊るようになる。

    そして主人公が朧げな記憶から引っ張りだす結末に、そう落ち着くのかと納得しかけた。
    この後に続く妹からの手紙が衝撃的で、全てをひっくり返される。しかしこれで全てにおいて納得が出来るようで、ただただ脱帽する。
    一体この感情をなんと呼んだらいいのかも分からない。
    ただ圧倒された。最初で辞めなくて良かった。
    個人的に、こんなのあり?というどんでん返しはいくつか読んできていて、酷いと思うのが多かったが、この作品はそんな「裏切られた」と感じるのではなく、納得させられた。

    いわゆるどんでん返しやミステリと紹介されると、読めないだろうなと思う。
    これは音楽の話だ。1人のピアニストの話だから。

    ラストを知った上で再度読みたいが、時間を明けて再読しようと思う。

  • この本なぜミステリ(しかもどんでん返しあり)として宣伝したのか?
    作者が挑戦したのは音楽を言葉で書くこと、これに尽きると思う。
    確かに事件が起きるから、ミステリ要素がなくもない。
    だがいわゆるミステリ、推理小説と違って謎解きの過程を楽しむ作りにはなっていない。
    ただ物語の中に謎があり、最後にその回答が慎ましく提示される。
    ミステリと宣伝され、そのつもりで読むと「音楽の描写はすごかったけど、肝心のミステリはいまいち」となりかねない。
    このすれ違いはもったいない。

  • 友人の天才ピアノ少年について主人公がひたすら語る。中盤まで事件が起こらないので、本当にミステリなのか疑いながら読む。クラシック音楽の知識がないので、知っていればよりたのしめるのかなぁ、と思いながら。
    いよいよ事件が起きる夜。主人公は友人の弾くピアノに魅了されるが、その描写が非常に美しく、読者もその世界にぐっと引き込まれる。終盤に怒涛の展開が待っているが、まさに狐につままれたような幻想的なミステリだった。

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シューマンの指 (100周年書き下ろし)の作品紹介

シューマンに憑かれた天才美少年ピアニスト、永嶺修人。彼に焦がれる音大受験生の「私」。卒業式の夜、彼らが通う高校で女子生徒が殺害された。現場に居合わせた修人はその後、指にピアニストとして致命的な怪我を負い、事件は未解決のまま30年の年月が流れる。そんなある日「私」の元に修人が外国でシューマンを弾いていたという「ありえない」噂が伝わる。修人の指に、いったいなにが起きたのか。鮮やかな手さばきで奏でる"書き下ろし"長篇小説。

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