アニーのかさ

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制作 : 武富 博子 
  • 講談社 (2010年7月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062163798

アニーのかさの感想・レビュー・書評

  • 大好きなお兄ちゃんを亡くしてから、毎日、けがをしないよう、病気にならないよう気をつけることだけでせいいっぱいになってしまったアニー。両親も、そんなアニーを気にかけてはいるけれど、じつは自分たちもまだ愛する息子の死を乗り越えられずにいる。そんなアニーの心をほぐしてくれたのは、近所に越してきた老婦人、フィンチさんだった。
    死というテーマを扱いながらも、ユーモアとやさしさにあふれ、重苦しい感じはぜんぜんない。アニーの心情や、毎日の生活がこまやかに描かれていて、自然にすっと心に入ってくる作品。

  • 長靴をはいて、傘をひろげた表紙のイラストに、雨の話かな?と思いつつ読みはじめると、「かさ」は、比喩なのだった。

    カバーの袖には、こう刷ってある。
    「アニー、おまえ、
     前はおもしろいやつだったのにさ
     …今じゃ、気をつけてばっかりだな」

    安全であることを気をつけて気をつけて気をつけているアニーは10歳。前なら、メープル坂を自転車で下るのも、風をきって坂を下った真ん中あたりでブレーキをかけはじめ、それでリピーさんのお店の駐輪場にすべりこんでいた。今はそんなことはしない。坂の上で自転車を降りて、押さえながら歩いて坂を下る。肘当て、膝当て、ヘルメット、足首にはテーピングと安全装備も完璧だ。

    ママには「心配しすぎだ」と言われるけれど、気をつけてないといけないことはいくらでもある。みんなが危ない!と思うような大きな危険はもちろん、ふつうの人が気にもとめないような危険にも注意を怠ってはいけない。

    お隣のハーパーさんの家で、アニーは自分に必要な本を見つけた。『病気予防のすべてがわかる』!病気にならないためにどうすればいいか、病気になったときにどうすればいいかが書いてある。完璧だ。

    ▼…心配しなきゃいけないことがいっぱいある。…いつも安全でいられて悪いことが起こらないようにするには、どんな危険があるのか、それをどうやってふせぐのか、全部知っておかないといけない。準備しておかないと。そうするしかないんだ。(p.35)

    アニーのお兄ちゃんは5ヶ月前に亡くなった。お兄ちゃんが胸が痛いというのを、お医者さんはアイスホッケーのパックが当たったからですよと説明した。でも、お兄ちゃんの胸が痛かったのはものすごく珍しい心臓の病気だった。お兄ちゃんは2日後に死んでしまった。

    アニーが心配ばかりして、安全を手にいれようとして、『病気予防のすべてがわかる』を読みふけったりするようになったのは、それから。ママはアニーのことを心配するけれど、ママとパパだって、お兄ちゃんが死んでからというもの、どうかしてる。アニーはこう言わずにいられない。「ふたりとも、ちゃんと、わたしのママとパパでいてよ。お兄ちゃんが死んじゃっても、ふたりとも、まだわたしのママとパパなんだよ」(p.157)

    学校の先生や近所の人や友だちに〈お兄ちゃんが死んじゃってかわいそう〉の目つきで見られるのもいやだ。たいていの人が、悲しそうな、心配そうな、ちょっぴりかわいそうっていうのが混じっている目つきでアニーを見る。親友のレベッカとは仲違いしてしまうし、どこにも自分の気持ちのもっていきようがないアニー。

    レベッカと「幽霊屋敷」と呼んでいたお向かいの家に越してきたフィンチさんと知りあって、そこで少しずつ自分の気持ちを話す。フィンチさんがいれてくれた「腕のすり傷茶」を飲みながら、お互いのことを少しずつ話した。お兄ちゃんが死んじゃったことも、お兄ちゃんとの楽しかった思い出も。フィンチさんが読んでみるといいわよとアニーに貸してくれたのは『シャーロットのおくりもの』。

    フィンチさんとまたお茶を飲んだとき、2人でトランプしながら、アニーはお兄ちゃんとよくいっしょにしてた「ブリトーゲーム」のことを語る。フィンチさんはげらげら笑いころげて、アニーの話を聞き、私もここはおかしくて大笑いした。

    フィンチさんは、こう言った。「アニー、そろそろ、かさを閉じてもいいんじゃないかしら」(p.188)。家の中で、フィンチさんが何を言い出したのかアニーには分からなかった。

    ▼「雨が降ると、かさをさすでしょう? ぬれないようにね」
     「でもね、たとえば、長いこと外を歩いていて、雨にぬれないように、ずっとかさをかかげているとするでしょう? そのとき、... 続きを読む

  • 10歳の少女のお話です。
    お兄さんが死んでしまって、とても体に注意を払うようになったアニー。
    お兄さんの突然の死からいつ怪我してもいつ死んでもおかしくはないと
    思い始めたアニーは、家で読書ばかり。

    近所のおばさん、引っ越してきたおばあさん、両親、そして親友に支えられて
    少しずつ心の傘を閉じて太陽を浴びようとするアニーの成長に注目です!

  • 突然の病気で、兄を失った10歳のアニーは、自分も病気や怪我で急に死んでしまうかもしれないと、何をするにも万全の準備を整えるようになった。自転車に乗るのにも、重装備。難しい病気の本を読み、ビタミン剤を欠かさない。息子を急に失ったことで、両親もアニーを気には欠けているが、真剣に向き合う事ができない。
    そんな中、しばらく空き家でアニーと親友のレベッカが幽霊屋敷と呼んでいる家に、フィンチさんというおばあさんが引っ越してきた。フィンチさんは、アニーの状況を理解し、徐々にアニーの心を解きほぐしていく。

    「かさ」というのは、アニーが兄の死を機に自分をガードしている心の問題の象徴なのだが、そういう比喩的な表現を10歳くらいの子どもがすんなり理解できるものであろうか。ストーリー全体は、とても良い感じで、フィンチさんの対応にっ感心してしまうが、「かさ」のくだりが、ちょっ難しいような気がする。

  • 大好きな兄を失ったアニーは、病気の心配ばかり。親友とも仲違いしちゃうし、両親も悲しみに沈んでいる。テーマ的には児童書として重いが、とてもあたたかい空気感に救われる。

  •  突然の病で兄を亡くしたアニーは、自分は病気ではないかと心配ばかりするようになっていた。近所に引っ越してきたフィンチさんは、アニーに言う。「アニー、そろそろ、かさを閉じてもいいんじゃないかしら」
     病気の本を熱心に読んでいるアニーにフィンチさんが手渡す本。同じ本がついこの前読んだ本の中にも出てきた。こういう偶然もある…。

  • お兄ちゃんが死んだことで、10歳の元気な女の子アニーの生活は変わってしまった。アニー自身は病気が心配で気をつけてばかりいるようになり(そのせいで、必要もないのに身体じゅう絆創膏だらけ)、パパやママはアニーをかまってくれなくなった。
    悲しい現実に沈む家族が、まわりの人たちのさり気ない優しさによって、少しずつ自分を取り戻していく。
    アニーが「かさを閉じる」きっかけを作ってくれた新しい隣人のおばあさんをはじめ、登場人物のキャラクターが個性的かつ魅力的。
    じんわりと楽しい気分になってくる本。

  • 整理できないココロ
    たんたんと過ぎていく月日
    独りもがくアニー。

    不思議と、どのシーンでも明るく柔らかな光が射しこんでいる印象を受けた。夜や部屋の薄暗さにも穏やかさを感じる。

  • アニーは、明るい10歳の女の子。

    でも、仲の良かったお兄ちゃんを
    急な病気で亡くしてから、
    病気やケガやあらゆることに「気をつけて」ばかりいるように。

    子どもを亡くした両親も、
    それぞれ大きな穴を抱え、以前とは違う。

    アニーは、現実をわかってはいても
    しっかりとは受け止め、向き合えないまま、
    親友ともぎくしゃくしてしまい・・・


    「ぬれることばかり心配して、ずっと傘をさしていたら、
     晴れても、気がつかないし、おひさまにあたれない」

    読み終わったあとに、
    胸がさーっと晴れるようなインパクトはないけれど、
    アニーの境遇を体験していない人たちにも、
    ゆっくりと、わかりやすく、メッセージを伝えていると思う。
    とても応用のきく、こころに持っていたい、メッセージ。

    アニーは、勇気があるね。

    高学年から読める内容で、
    この、ちょぴりおとなっぽい装丁も、すてき。

    武富さんの翻訳、最新作。

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アニーのかさの作品紹介

わたしのかさ、ちょっと閉じてきたかもしれない…心にかさをさしているあなたへ贈る物語。大好きな兄を亡くした少女アニーの心模様を、あたたかいまなざしで綴る全米話題の感動作。

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