- Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062166485
作品紹介・あらすじ
不思議な男の子の声に導かれ、中央アジアの草原をさまよう「あなた」。歴史の奥に秘められた、人間を励ます叙事詩の意味を探る最新長篇。
感想・レビュー・書評
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素晴らしい。本文にも触れられているチャトウィンの『ソングライン』を髣髴とさせ、津島佑子オリジナルのソングラインが凌駕しているといっても過言ではない。キルギスから中国東北地方に伝わる口承文芸「夢の歌」は遥かマケドニア王アレクサンドロスまで鳴り響き、私達日本人の心のルーツにまで辿り着く。複雑な中央アジアの歴史を深く知らなくとも、著者の旅の道のりに相伴し、そっと耳を澄ませば「夢の歌」の中に長い時代の流れゆく民族の時の声が聞こえてくるだろう。この広がり繋がりゆく調べに身を委ねる至福、感慨無量の読後感に浸っている。
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キルギスの英雄抒情詩「マナスの歌」に歌われるマナスは、元気で暴れん坊の男の子。アイヌの英雄ポイヤウンベにも似ている。津島さんはそう思いながら、マナスの歌を求めてキルギスを旅する。それは津島さんの失った男の子であり、永遠に生き続ける新しい男の子でもある。
「だから、「夢の歌」をあなたは追いかけないわけにはいかない。忘れることだってできない。「夢の歌」の男の子たちこそが生き続け、あなたは一瞬一瞬死んでいく。」
現実のキルギス、中央アジアを旅するドキュメントに、夢の歌の中で生き続ける子供たちを重ねながら、旅はすすむ。
「私」そして「あなた」はその場に招かれるように旅をする。そこで出会う人たちが背負う歴史、暮らし、佇まいを肌で感じながら。
北方民族の昔話に惹かれて読み始めたけれど、ドキュメンタリの部分がほとんどだった。文字を持たない彼らとアイヌの人々の繋がりも、現代の暮らしの中から見つけ出すことは津島さんでも難しかったようだ。ロシア語を話す人も多い。
旅の終わりはイシククル湖だ。
「私」は水の中に体を委ねようとする。するとたくさんの子供たちの声を聞く。彼らは「あなた」を待っている。待っていることは、歌うことなのだという。
津島さんでなくては描けない世界の入口は、見つけにくくて彷徨うかもしれない。しかし、辛抱強く探して一度鍵を手にすれば、何度でも味わいたくなる。 -
トット、トット、タン、ト
キルギスの遊牧民族に伝わる口承「夢の歌」のリズムに導かれるように津島佑子さんが旅する中央アジア。
様々な人種が行き交い、争い、治めたその場所には様々な文化や宗教の足跡が残り、そしてそれは「夢の歌」の世界にも影響し、つながっていく。
今持って国境や現代政治に翻弄されながらも、美しい草原で誇り高く日々を暮らす人々がここにもいます。
嗚呼遥かなるやシルクロード。 -
かつてこの本に描かれている国に関わっていた身として、ひどく懐かしさにとらわれた。
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☆2.9
馴染みのない固有名詞(キルギス・ボズウィ・カシズ・マナス・サンジェラ等)に慣れなくて、内容がなかなか頭の中に入っていかないというか...。
叙事詩が中心で、その意味を探るため中央アジアの草原をさまよう「あなた」の物語。 -
素材自体は面白いんだけど・・・。
ずっと読み続けるのはツラかった。 -
司馬遼の『草原の記』を思い出させる作品だった。一見紀行文なのだが、人称が「わたし」であったり「あなた」であったりと視点がコロコロ変わり混乱する。大国中国やロシアに翻弄され、近代化の波にさらされるかの地(キルギスや内蒙古)に今にも消えてなくなりそうな口承文化のかけらを追うのだが、スケールの大きさにこちらの小さな頭がついていかなくなってしまった。机の前にちゃんと座り、メモなどとりながらじっくり読んだら味わい深い作品なんだろうなあと思いつつ、チャラ読みですいません。
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何とも眠たくなる物語?小説といえるかどうか微妙。時空を超えて、マナスの「夢の歌」のルーツを探す、紀行文のような文化人類学のような日記のような、、、とにかく退屈な時間を過ごした。
せめて写真があれば分かりやすかったと思う。