醜聞の作法 (100周年書き下ろし)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062166829

作品紹介・あらすじ

さる侯爵が、美しい養女ジュリーを、放蕩三昧の金持ちV***氏に輿入れさせようと企んだ。ところが、ジュリーには結婚を誓い合った若者がいる。彼女を我が子同然に可愛がり育ててきた侯爵夫人は、この縁談に胸を痛め、パリのみならずフランス全土で流行していた訴訟の手管を使う奸計を巡らせた。すなわち、誹謗文を流布させ、悪評を流して醜聞を炎上させるのだ。この醜聞の代筆屋として白羽の矢が立ったのは、腕は良いがうだつの上がらない弁護士、ルフォンだった。哀れルフォンの命運やいかに-。猛火に包まれたゴシップが、パリを駆けめぐる。『ミノタウロス』の著者が奏でる、エッジの効いた諷刺小説。

感想・レビュー・書評

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  • いやー、面白かった。
    映画か舞台を見ているようで。
    フランス革命前後であろうパリが目に浮かんでくる。
    貴族のきらびやかな衣装から、平民たちの生活、はたまた修道院の尼僧の清らかさまで。

    この時代、市井の人達の噂話の情報源はパンフレットだった。
    これを利用し、公爵夫人は養女と好色爺の縁談を壊すことを計画する。
    公爵夫人と謎の仲介者の間のやりとりが書簡形式で展開されると同時に、パンフレットが覚え書きとして織り込まれる構成が見事。

    養女の運命は一体どうなるのか。
    執筆者ルフォンに降りかかる災難はどうなるのか。
    あっちでハラハラ、こっちでドキドキ。

    ただ全部読み終えてみると狐につままれたような気分。
    一体どこまでが現実でどこまでが嘘なのか。
    誰と誰が実在していたのか・・・。
    これもまあ面白いところではあるけれど。

    他のレビューでも指摘されるように、翻訳文を読んでるような錯覚に陥った。
    なんとなく小田島さんのシェイクスピアのような。
    ある意味、オリジナルでここまで書けるってすごい。
    佐藤亜紀さん、他にも読んでみよう。

  • 富と権力を振りかざすある好色爺との縁談の計画を知った養女ジュリー。強引に話を進めようとする侯爵を横目に、彼女の育ての親である侯爵夫人は、ジュリーの真の婚約者とともに縁談を壊すため、ある計画を立てる。それは『醜聞』を流すこと。小さく始まった醜聞(ゴシップ)は人と人の間で囁かれ、次第に巨大化し、街全体を覆っていく。

    18世紀末フランス版Twitter。現代でもある小さなトピックがインターネットを通して世界中に発信されることを考えると、当時の話という一言では片付けられない怖さと面白さがある。
    醜聞を計画する者、執筆する者、広める者、面白おかしく囃し立てる者、踊らされる者、そして当事者たち。喜劇のようなストーリーは主に書簡のやりとりで進み最初は少し読みにくさを感じたが、各々の思惑が絡み合い始めた中盤くらいから先が気になり止まらなくなった。最後はすっきりする落としどころ。

  • エロ爺いとの縁談を壊すためかかれたフィクションにパリ中が熱狂し……。大満足。侯爵の養女の恋に夢中になり、"醜聞"に一喜一憂するパリ市民の姿にニヤニヤするうち、それが現代の自分たちと相似形であることに気付かされる。軽快な物語に隠された辛辣な皮肉で人間の本質をえぐり出す傑作。

  • 流石のおもしろさ!
    SNSの時代になっても、人間は人間のままだ。

    これまでに読んだ佐藤亜紀作品の中では一番テンポ良く読めた。思いがけず一気読みしちゃいました。いや、「させられちゃいました」と感じるおもしろさでした(^^)

  • オスカーワイルドの短編風。佐藤亜紀の達者ぶりが際立つ。最後のおちは…蛇足な気がしないでもないが華やかさは増したので、これはこれで。

  • 文学

  • 2010-12-23

  • 手紙文とパンフレットの文書で全て構成されているのが面白い。
    意外な展開も興味を引き、一気に読めた。
    ただ、ちょっと最後が失速した感じが…。
    書き過ぎては面白くないからとあっさりまとめたのだと思うけれど、個人的にはもう少し丁寧に書いて欲しかった。
    フランス、書簡小説というとどうしても「危険な関係」を思い浮かべてしまうので、比べてしまってね…。

  • 小洒落てる!中世フランスが舞台。「いつの世も、人は醜聞(ゴシップ)がないと生きてゆけない。」人の口に戸は立てられないよね、わかる。

  •  よく出来た物語。

     貴族文化真っ盛りのパリで、逃亡してきた友だち(故人)の娘をあずかった公爵夫人がおった。預かった娘はみるみるうつくしく成長し、クラヴサン(という鍵盤楽器があるらしい)の先生と恋に堕ちる。
     んだけれども、公爵の友だちの金貸し(ヒヒオヤジ)がこの娘をものにしたがる。当然娘はウンと言わない、公爵は金貸しとの結婚を承諾するまで、娘を修道院に閉じ込めるが――さてどうなる、と、事実関係はこんなところかしら。これを、公爵夫人と、語り手である「私」との書簡のやりとりを中心に書いている、わけです。

     三時間くらいあれば読めちゃうくらい流暢な文章。なので、ちゃんと読みこめば「ああ、面白かった」以上のものはあるんじゃないかなぁとは思うのです。そもそもこの「私」は誰なんだ? という疑問が残ったのです。
     がしかし、ある事件の構造があって、その事件をどこからの光で照らすのか、とまぁ、設計図通りに組み立ててあって、ああ、設計図がしっかりしてるんだなぁ、面白いなぁ、と思って満足すればそれでおしまいな気もします。

     現在の日本の世相に重ねるもよし、パリの貴族的な雰囲気を楽しむもよし。
     なんかこう、試すすがめつしながら読むもんでもないのかなぁと思ったりしました。

     娯楽作品です。

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著者プロフィール

1962年、新潟に生まれる。1991年『バルタザールの遍歴』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。2002年『天使』で芸術選奨新人賞を、2007年刊行『ミノタウロス』は吉川英治文学新人賞を受賞した。著書に『鏡の影』『モンティニーの狼男爵』『雲雀』『激しく、速やかな死』『醜聞の作法』『金の仔牛』『吸血鬼』などがある。

「2022年 『吸血鬼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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