うなドン 南の楽園にょろり旅

著者 :
  • 講談社
3.60
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062168014

作品紹介・あらすじ

ニホンウナギの産卵場を突き止めた塚本教授率いる東大研究チーム。次のミッションは、「世界中のウナギすべて」を集め、その進化の道筋を解明すること。しかし、これまで地球上に生息するウナギ全18種類の採集に成功した者はいない。少ない予算を極限まで切り詰め、前人未踏の自然科学の頂きをめざす。脳みそを揺さぶるような感動を求めて、いざ自然界の奥地へ。

感想・レビュー・書評

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  • 熱いなあ。まったくこの人たちほんとに東大のセンセーなの?「アフリカにょろり旅」よりさらにパワーアップした感じ。ウナギを追い求めてのトンデモ旅に大笑いしながら、そのほとばしる情熱に圧倒された。

    「アフリカ~」では、まるで辺境探検のようなビンボー旅行の様子が綴られていたが、今回はタヒチが舞台のものがメインとなっている。どこまでも青い海、爽やかな風に椰子の木が揺れ、オシャレな人々がバカンスを楽しむ地上の楽園タヒチ。でもここでも著者、塚本教授、俊の三人組は、汗とホコリにまみれ、レンタカーをぶっ壊したり、飲まず食わずで野宿する羽目になったり、ひたすら目指すウナギを追いかけるのである。

    著者青山さんは地方私立大学出身だそうで、「自分の人生とは完璧なまでに無縁だと思っていた」東大の研究室に、縁あって(もちろん猛勉強もして)院生として所属することになる。そのいきさつが最初の章「高く跳べ にょろり旅TAKE1」に書かれているのだが、そのユニークな経歴と個性に、なるほどこういう人だからこういうことができるのねと、妙に納得した。

    青山さんはとにかく、行動派というか武闘派というか、常に「おりゃー」とか「どりゃー」とか叫びながら突き進んでいる感じだ。自分で名付けて「うなぎバカ」。「長靴とタモ網だけでできるような研究」がやりたくて、頭脳ではかなわない他の研究者より「高く跳ぶ」ことでこの世界の真実に迫っていこうとする。

    最初は博士号をとることが目的だったのだが、ウナギを追いかけるうちに研究自体の面白さに目覚めていく、その気持ちの変化について書かれている所がとてもよかった。研究とは、自分の手で、世界が秘めている姿を解き明かしていくことで、これほど心震えることはないだろう。そのことがよく伝わってくる。

    また、えらい先生なのに、まったくそれ風でなく、飄々ととぼけた感じの塚本教授が味わい深い。青山さん、後輩の俊さんとの旅はまさに珍道中。教授の人間味と、著者の教授に対する敬愛の思いが、このシリーズの心地よい通奏低音になっていると思う。

    教授の「仮説」によると、松尾芭蕉が「奥の細道」冒頭で書いていた「そぞろ神」っていうのは本当にいて、動物の旅の原初の形態は「あぁ、こんな生活もうイヤ!どこか誰も知らない土地に行ってみたい」という脱出行動だそうだ。青山さんは「私のそぞろ神は囁くどころか、いつも耳元で絶叫しているような気がする」と書いていた。

    タイトルは「うな丼」ではなく、「笑われようが何しようが毅然と胸を張っていこうじゃないか!」「ウナギ研究界のドン・キホーテになろうじゃないか!」という教授の言葉から。うーん、いいですねえ。

  • もう、だいすきです。
    疲れている時に読んだのでなんだか元気になりました。
    ひとつのことに熱中できるのってすてき。

  • 著者紹介を表紙裏から転載します。
    『1967年、横浜市生まれ。東京大学農学生命科学研究科、博士課程修了。その後、東京大学海洋研究所に所属し、塚本勝巳教授の下でウナギの研究に携わる。2006年には同研究所の手によって、日本のウナギの産卵場所がほぼ特定され、世界的な注目を集めた。2008年より海洋アライアンス連携分野特任准教授。2007年に「アフリカにょろり旅」で第23回講談社エッセイ賞を受賞。現在も、研究の傍らエッセイなどを執筆している。』

    私は「アフリカにょろり旅」は以前読みました。
    にょろり旅の時は著者はすでにウナギ研究にまい進していました。世界中のウナギ18種類全部の採集があと一歩に迫り、最後の1種「ラビアータ」採集の危険で面白い旅の記録でした。

    本書うなドンはにょろり旅に書かれていることより前の出来事がほとんどです。

    青山さんは、なぜウナギ研究をしようと思ったのか。
    青年海外協力隊員として南米で活動。そこで自分の知識や技術の限界を知り、もっと勉強したいと思った。でも、そういう面倒な人間を受け入れてくれる研究室はなく、協力隊の時の人脈で受け入れてくれたのが東大の塚本教授だったわけ。もちろん試験に受かるためには猛勉強をしたとのこと。
    そして塚本教授の悪魔のささやき?のおかげでそれまで関心もなかったのに「決めました。ぜひウナギやらせてください!」と、ウナギ進化の研究をすることにしてしまったのです。
    こういうのに魅せられて捕まる人っているんだなあ、私なら絶対に遠慮したい誘惑に・・・・。
    ウナギの知識がなかった青山さんはまたもや猛勉強をしたようですが、ずっとやってきたわけでもないので付け焼刃状態で、たった一人でフィールドワークへ。よく生きて日本に帰ってきたなあ。しかもそのおかげでウナギにどっぷりつかって。

    そしてウナギ全種類採集のにょろり旅が始まりました。マレーシア、インドネシア、そして南国の楽園タヒチ!塚本教授、青山さん、後輩の渡邊俊さんの3人で。(渡邊俊さんは、その後のアフリカにょろり旅でも一緒でした。)
    タヒチでの採集がこんなに大変だったとは驚きです。南国の楽園という観光地のため物価は高く、観光に来ている外国人は自然保護意識が高くて、ウナギ採集を環境破壊と同等に厳しく見る。現地の人は、何やってんだか・・・くらいにしか見ないのに。観光客に見つからないように行動しつつ、極貧生活。またまた3人とも、よく生きて日本へ・・・。

    フィールドワークをやる研究者って本当にすごいなあと、感心しました。

    地震以後本を読んでも、いつもだったらきっと面白かったり感動したりしたはずのものが頭の中を素通りして行きました。
    ちょっと本に申し訳なかったな、でも仕方ない。
    被災された方々が、前途多難ながらも少しずつ前進している様子を遠くから見ているだけですが、そんな時にちゃんと頭に入ってくる本に出会えました。
    震災とは全く関係がない本ですが、生きる力にあふれていて気持ち良い本、そして生きる力がみなぎっている人たちでした。すごく面白かったです。

  • うなぎはどこで生まれ、どんな旅をして我々のもとへやってくるのか。
    未だにはっきりとしたことがわかっていないという。
    その謎を追いかける研究者たちの、真面目で阿呆なドキュメンタリー。

    真面目な目的があってやっていることだが、やり方は破天荒でバカっぽい。
    苦しくて面倒なことばかりなんだろうが、面白いんだろうなあ。

  • ウナギ研究で世界的に知られる東大研究チームの青山先生。日本人が長年恋焦がれる?「ウナギ」の最後の種を求め、南の楽園であるタヒチへ弟子とともに旅立つ!
    ウナギライバルの出現、絶食による体調不良。次々に先生に襲い掛かるトラブルに、あたかも自分がウナギを求めて旅しているようなスリル感、ワクワク感を味わえる。

  • 「アフリカにょろり旅」のレッツゴー三匹ふたたび。ニホンウナギの産卵場所を見つけた塚本博士をリーダーにいただく、世界的なウナギ研究者たちをお笑い珍道中扱いするのは失礼極まりないが、でもどうしてもにやにやしてしまう、三人の珍道中なのだった。完全にまじなので、そこが面白い。

    でもぼくは思うのだが、真面目で几帳面な研究と珍道中は、相反するものではなく、ひとつのカードの裏表なのではないか。その両面があるから、研究も仕事も面白いのではないか。これでいいのだし、こうでなければいけない、とへらへらしながらぼくは思ったのだった。

    著者の青山潤は、JAMSTECの高井研と絶対気が合うと思う。あるいは大げんかをするか、どっちかだな。

  • タヒチに関する本を探していたら、どういうわけか、このウナギ研究者奮闘記のいうな本書に巡り合った。
    うなぎ採りにはもちろんなんの興味もなかったのだけど、タヒチ島の情報が何か得れるかも、と思って読み進めて行くと、なんとも軽快で豪快で臨場感溢れるストーリーが大変面白く、一気に読んでしまった。すごい研究者がいるものだ、と無性に嬉しい気分になってしまった。

  • 面白かったです。

  • ウナギの全種 コレクションに挑み
    前作ではアフリカにいったが
    これは インドネシアやタヒチに採集に行ったときに模様を面白おかしく書いたノンフィクション。

    種同定がおわったウナギを足でけったり
    レンタカーをこわしても黙って返したり
    たくさんウナギをつっても 目的のウナギでないと ぞんざいに扱ったり
    ラマダンの最中の村に入って公衆の面前で水をがぶのみしたり

    読んでいて とても不快に感じることが多かった。
    野生生物の採集は大変なことだと思うが、研究者としてもう少し民度を上げてほしいと思った。DNAだけでなく餌環境や温度、個体群のサイズ分布
    などいくらでも調べることはあるだろうに、狭量である。

    またタヒチにいない種類がニューカレドニアやフィジーにいたということは
    種の拡散がどうなったかどう説明できるのか研究のこと書いてほしかった。
    生き物に対する愛をもっと書いてほしかった。貴重な体験という素材を活かしきれてなくて残念。

    ところどころたとえ話などを効果的に用いてあり、また熱帯の雰囲気や疲労感の記述など、文章力は評価できる。 

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著者プロフィール

海洋生命科学者、東京大学教授
1967年、横浜市生まれ。大学卒業後、ボリビアで己の無力を思い知り、再び学問の道へ。以降、ウナギ研究の最前線で奮戦するとともに、エッセイでも評価を得る。

「2014年 『「学問」はこんなにおもしろい! 憲法・経済・商い・ウナギ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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