峠うどん物語(上)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 745
感想 : 120
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062169974

作品紹介・あらすじ

中学二年生のよっちゃんは、祖父母が営むうどん屋『峠うどん』を手伝っていた。『峠うどん』のお手伝いが、わたしは好きだ。どこが。どんなふうに。自分でも知りたいから、こんなに必死に、汗だくになってバス停まで走っているのだ。おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん。そして『峠うどん』の暖簾をくぐるたくさんの人たちが教えてくれる、命についてのこと-。

感想・レビュー・書評

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  • 今一番好きな作家 重松 清氏の「峠うどん物語を読みました。
    中学2年生の女の子が高校受験が終わるまで、斎場の前にある祖父母が営むうどん屋さんでアルバイト。
    斎場をでてきて、立ち寄る人々の物語。
    「人生」、「命」をテーマにした重松氏らしい作品。
    老若男女 みんなにお勧めの一冊です。

  • お葬式を同窓会の材料にする者、どこか憎めない悪人……。彼らをゆるすわけではないけれど、切り捨てずに気持ちを想像してしまい、悩む義理などないのに悩んでしまう。温かい気持ちが灯っているのだ。私も悩む人間で在りつづけたい。知りあえないまま別れが来てしまったとき、愚かでも繋がろうとしたい。主人公がミヤちゃんに誤解したように、誰かを冷たいと思ってしまうことは私自身これからも多くあるだろう。でも深く知ろうとして、伝わったかわからずとも、伝えようと挑みつづけると決めた。重松はやはり大切なことを、上巻だけで教えてくれた。


    ■タイトル ★★☆☆☆
    きれいにはまとまっている。うどんの話って、と興味は惹くかも。でも母が借りてきたのだが、私だったら重松清でなければ手に取っていなかったと思う。「峠」というのはお葬式などとかけているのかもしれないが、昇華がされずよくわからなかった。

    ■書き出し(序章) ★★☆☆☆
      おじいちゃんがお店の屋号を『峠うどん』に変えたのは、十四年前――わたしが生まれた年のことだった。
    ・タイトルの提示、地(舞台)、人(主人公の年齢と性別、祖父=祖母の連想)
    インパクトこそないが、この文のあとにつづく序章によって、斎場の前にあるうどん屋。つまり「またお越しください」が言えない店。というおもしろい設定が説明口調にならず、わかりやすく伝えられている。
    しかしこの序章は書き下ろしのようなので、本来は第一章を評価すべきか。

    ■書き出し(第一章) ★★★★☆
      おばあちゃんは挨拶もそこそこに本題を切り出した。よけいな前置きの嫌いな、せっかちなひとだ。
    ・人(おばあちゃん=主人公・孫の連想、祖母の性格)
    お通夜があるから手伝ってほしい、「けっこう来るかも」、中学に入学してすぐにお店の手伝いを……。インパクトは大きいし、斎場などという言葉が出てきていても、主人公の年が近いので私などの若い人にも読みやすいと思う。

    ■登場人物 ★★★★★
    一話一話で、故人および故人にまつわる人(峠うどんに来るお客さんがメインなので、故人と遠い人が多い)が出てくるので人物は多い。
    しかしさすが重松といおうか、一人ひとりの気持ちをきちんと描写している。でも一話につき取りあげるゲストは少なく、全話を通して主人公(淑子/よっちゃん)およびおじいちゃん、おばあちゃんはいつも登場。このおじいちゃん、おばあちゃんがまたいいキャラ。

  • 祖父母が市営斎場前に峠うどん屋を経営、両親は小学校の教師、主人公の中学生淑子(よっちゃん)の5人が織りなす小物語集。受験をソロソロ意識しなければならない大事な時期に祖父母っ子のよっちゃんが峠うどん屋を手伝っていく中で、斎場帰りのお客さんと接することで学校では学ぶことはできない「死」「人間の機微」を学ぶ。ほのぼのするし、ぽろっと涙する物語。「第三章おくる言葉」が泣けて笑えた。

  • 「大事な話ってものは、たいてい辛気臭いものだと思うけどね、私は」
    「……淑子にはもっと大事なものがあるんだよ、中学三年生なんだから。人が死んだとか、霊柩車がどうだとか、そんなものどうでもいいじゃないか。今は学校の勉強をしっかりやる時期なんだからな」
    「ひとの生き死にってのは、一生モノの勉強だよ」
    ぴしゃりと言った。「そんなことわからないで、あんたよく学校の先生なんかやってるね」−みごとに決まった。

    淑子の祖父母は峠の斎場の前でうどん屋をしている淑子はそれを小さい頃からよく手伝っている。父母はいい顔をしない。峠うどん屋はホントは職人肌のおじいちゃんがつくる飛び切り美味しいうどん屋なんだけど、お客はみんな斎場に来た人ばかりだ。それも、亡くなった人の近親者じゃない、けれどもそのまま帰るには心が落ち着かない人たちばかり、「辛気臭い人たち」ばかりだ。それでも職人肌のおじいちゃんは黙々とうどんを打ち、世話好きのおばあちゃんは気を使い、時々忙しいときに手伝う淑子はそれとなく「一生モノの勉強」をするというわけである。

    上巻では第四章の「トクさんの花道」がよかった。30年前に別れた妻が認知症で、死ぬ前になってトクさんのことしか言わなくなって会いたがっているという。トクさんは斎場の霊柩車の運転手をずーとしていた。けれども決してトクさんは会おうとしない。その理由が最後になってわかる。全く職人肌の男っていうのは、寡黙である。

    霊柩車の車というは上のキンキラを外すと例外なくリンカーンだったり、ベンツだったり、高級車ばかりだ。だから利用するのはとてつもなく高い。これは単なる外見のこだわりだとばっかり思っていた。けれども、そうじゃない。トクさんが丁寧に車を運転するテレビ特番の「職人グランプリ」で優勝したように、中の棺を決して動かさないで運ぶにはやっぱり外車じゃないとダメなんだと納得したのでありました。「最後の最後ぐらいは、すごい車に乗るんだよ」というわけだ。

  • 久しぶりの重松さん。とりあえず上巻。やはりうまい。感動ポイントを見透かされてる感が毎回はなじらむのだが、それを覚悟して読んで、そして面白かった。下巻はそのうちに。

  • 命の終わりを見届ける、そっと自分の中でお別れを告げる為、市営斎場に訪れた人をうどん屋『峠のうどん』の人々が温かく迎え入れる。

  • 重松さんらしい話ですね。峠のうどん屋の前に市民斎場ができて…主人公は中学生の女の子。

  • よしこちゃんとおばあちゃんのしみじみとした話、下巻が楽しみ!

  • うどん屋の前の葬儀場が出来てしまった。それ以来うどん屋は葬儀前後の客が来る場所になって、黙々とうどんを作る主人とおかみ、アルバイトの女子中学生から見た、葬儀に関係する人々の物語。重松節健在!

  • 斎場の前のうどん屋が舞台、中学生の女の子が主人公、そして重松清ときたら、大体の内容は想像できる。
    でもやっぱこの人の本読むと、涙腺ゆるんじゃうんだよなあ。

    重松さんって子どもが主役の話がいくつもあるけど、脇に出てくる大人たちが優しくて、ちょっと情けなくて、いい味出してる。
    (「疾走」みたいな例外はあるけど)

    下巻も一気に読んでしまえそうです。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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