ロップのふしぎな髪かざり

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062170055

作品紹介・あらすじ

アーモンド島にすむ精霊の女の子ロップはある日、海にうかぶボートの中で眠っていた人間の男の子、バハルを見つける。ジンは気にいった人間にとりついて、その魂をわけてもらうことで一人前になれるため、ロップの父はその男の子にとりついてみるようロップにすすめるのですが…。人間に憧れる精霊の少女ロップとジンの島に流れ着いた人間の少年バハル、そして二人を見守る楽しいジンの仲間たち…。五感で楽しむ珠玉のファンタジー。

感想・レビュー・書評

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  • (No.12-92) 児童書です。「ヘンダワネのタネの物語」が良かったので、もう一冊読んでみました。

    『ジンだけが住んでいるジンの島には灯台がある。それを守っているのはジンの少女・ロップのお父さん。灯される明かりで助けられているのに、人間はジンを恐れこの島には近寄らない。
    お父さんの側で海を見張っていたロップは漂っているボートを見つけた。中には人間の男の子がたおれていた。本当はジンの島には人間を連れてくることはできない。でもジンがその人間にとりつけば別。そしてとりつく優先権は見つけたジンのもの。つまりロップに権利がある。
    ロップとお父さんは人間の男の子バハルを助けたが、ロップはバハルがジンを恐いのならとりつくのはしたくないと思う。』

    面白い設定の話でした。いわゆる憑依とは違って、人間にジンがとりつくと辛さを軽減し心に平安をもたらす。ジンは人間の濃さに触れ、喜びを感じる。ということのようです。でも人間は普通だとやはりジンが怖いのです。理解できない存在に感じられるから。
    ところが人間は心が弱るとジンに頼る。元気な時にはとりつかれるのを恐がり、弱った時にはジンに身を任せたくなるらしいのです。

    ジンからは、命が輝いて見える人間の濃さの描写が素敵でとっても暖かい話でした。
    読後感がとても良かったです。

    私は今まで知らなかったのですが、素敵な物語を書く方で、ノンフィクション作品が多くあるようです。
    もっと読んでみようと思います。

  • とてもかわいらしく、ほんわりすてきなおはなしだった。
    表紙の絵も雰囲気があって好き。
    とくにロップの家の中の挿絵がなんとなく好き。

    人間は濃いっとゆーのが
    なんのことかと思ったのだけれど、
    なるほどそーゆーことか、と。
    となるとジン自体はあまり感情として浮き沈みのない生き物なのかな。
    最初とりつくってゆーのがバハルと一緒でイマイチどーゆーことなのか
    よく分からなかったのだが、読んでいくうちに、そーゆー感じなのかあっと。
    だが人間が充実したら追い出されるって、うん、ホントなんかちょっと
    ジンにとっては寂しくないのかな?
    だってイチバン幸せなときの気持ちは一緒に味わえないってことだよね?
    まあ、その凝縮した魂が炎の羽や希望の星となるわけだから、
    それでジンは十分幸せ気分になれるってことなのかなあ。
    どうやらジンって1人にずっととりついてるんじゃなくて、
    気に入ったらまたとりつけるみたいだけど、となるとロップは今度はどんな人間にとりつくのかしら?
    あ、あと人間嫌いのジンとかいないのかな?
    ずっととりつかないってのもアリなのかしら??
    にしてもサミミさんの食堂はメッチャおいしそうなものいっぱいでいいなあ。

  • 優しさに溢れていてとても良い作品だった。

    異国情緒を感じる名前の響き(ギリシャ、トルコ辺り…?)も、物語に奥行きを与えていて楽しかった。

  • 人間にとりつく精霊、ジンの島に流れ着いた男の子とジンの女の子のお話。
    ギリシャとかローマとかトルコとかその辺?が舞台。
    とても良かった。

    このお話の中のジンは、アラジンのジンではなく京極堂の妖怪や「飢餓浄土」のジンと同じ解釈。(飢餓浄土はそもそも同じものだけど)
    曖昧な不安や言葉に出来ない恐怖、どうしようもないことに形を与えて、どうにか収めるための装置としての異形。

    雰囲気はムーミンシリーズに似ている。
    ロップたちの家が塔だとか、絵の丸みに通じるものがあるとか、その辺のせいかと最初は思った。
    本当に似ているのは、異物の受けいれ方。
    ジンは人間より感情が薄いという性質のせいもあるかもしれないけれど、ジンたちは人間も変化も困惑しつつ受けいれる。
    雰囲気も登場人物もみんな優しい。そしてしなやかに力強い。


    雰囲気や書き方はまったく違うけれど、バハルの置かれた状況は「海にはワニがいる」http://booklog.jp/asin/4152092378 に近そうだ。

  • ジンと呼ばれる精霊たちは人間にとり付き、その人の弱った心に寄り添うかわりに
    その人間の特技や特徴をもらってエネルギーにしている。

    主人公のロップは、まだ一度も人間にとり付いたことがなかったが、
    ある日海で遭難している少年を発見し、彼にとり付くことを決めた。
    まだとり付く方法を教わっていなかったロップは、少年をジンの島に連れ帰り、
    介抱し始めた。

    毎夜うなされる少年を心配したロップは、彼の胸に現れた穴に見入ると、
    その中に吸い込まれた。
    その中でロップが目にしたものは、最愛の母親と引き離された少年の辛く苦しい思いだった。

    ロップは少年の苦しみをなくしてあげたいと、母親を探す手伝いをする決心をした。

  • ページを繰って文字を追っているはずなのに色とりどりの映像が目の前で結ばれていくような踊るようなお話。楽しい。「魂の一部をもらう」と言われるとかなりこわいのに、不思議というか魔法のアイテムになると思うとウキウキしてきます。希望の星、私もほしい。

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著者プロフィール

新藤悦子 1961年愛知県豊橋市生まれ。津田塾大学国際関係学科卒業。トルコなど中近東に関する著作に、『羊飼いの口笛が聴こえる』(朝日新聞社)『チャドルの下から見たホメイニの国』(新潮社)『トルコ風の旅』(東京書籍)などがある。児童書作家としても活躍、『いのちの木のあるところ』『さばくのジン』(「こどものとも」2017年3月号/以上福音館書店)『青いチューリップ』(日本児童文学者協会新人賞受賞/講談社)『アリババの猫がきいている』(ポプラ社)など多数。「たくさんのふしぎ」ではほかに、『ギョレメ村でじゅうたんを織る』(1993年9月号)がある。

「2023年 『トルコのゼーラおばあさん、メッカへ行く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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