- Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062172578
作品紹介・あらすじ
老舗旅館の長男、中学校二年生の逸夫は、自分が"普通"で退屈なことを嘆いていた。同級生の敦子は両親が離婚、級友からいじめを受け、誰より"普通"を欲していた。文化祭をきっかけに、二人は言葉を交わすようになる。「タイムカプセルの手紙、いっしょに取り替えない?」敦子の頼みが、逸夫の世界を急に色付け始める。だが、少女には秘めた決意があった。逸夫の家族が抱える、湖に沈んだ秘密とは。大切な人たちの中で、少年には何ができるのか。
感想・レビュー・書評
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ここ何作かと同じく、悲しく切なく静かな物語だ。辛い運命を生きる登場人物達の姿に胸が痛くなる。初期の頃のようなあっと言わせる仕掛けはないが、深く引き込まれて読んだ。
本当に端正な文章で、よどみがない。直木賞作家にこういう言い方はなかろうが、うまいなあと思う。
どの作品からだったか、かすかではあるけれど明らかに救いのある結末が待っているようになって、ずいぶん読みやすくなった。わたしはこの路線が好きだ。だまされる快感のあるお話もまた読んでみたい気がするけれど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
かつて自分の住んでいた町がダムの底に沈んでしまったら。
嘘をついてきたいくばぁちゃんはホッとした気分だったに違いないけれど、そうでなければ寂しい気持ちになるんじゃないのかな。
いくばぁちゃんの幼い頃のつらい気持ちが、孫逸夫の同級生敦子の気持ちと共鳴したに違いない。そういうことは肌で感じるものなんだろう。
いくばぁちゃん、逸夫、敦子の3人でダムで行った儀式は意味があったと思う。この儀式のおかげでダムの底へつらい気持ちを葬り新しい気分でやり直すことができたのだから。 -
普通な少年、普通でありたかった少女と哀しい過去を持つ祖母の3人の心理描写が本当に丁寧に描かれていて読み応えがあった。終章で物語の伏線が見事に回収され、救いと希望のあるラストは読後感もいい。帯のコピーに嘘はない素敵な作品だった。
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人生は悲しくて切ない。それでも しっかり生きている。
格好わるくても生きていく。 -
逸夫がんばれ、がんばれ!ってずっと願いながら読み続けた。
人は人によって傷つけられるけど、
浮上するきっかけとなるのは、
やっぱり人との関わりなんだよなあ
って思う。
笑子さんや敦子が乗り越えることができたのは
もちろん本人の強さだろうけどね。
よかった。
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水の中に沈んだ村
学校で、家で行き場をなくしてしまった
女子中学生
普通という事への葛藤
思いが重なっていく。隠されてた秘密。
うーん!!道尾さんの世界。面白い!