ルーズヴェルト・ゲーム

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (450ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062173766

作品紹介・あらすじ

「一番おもしろい試合は、8対7だ」野球を愛したルーズヴェルト大統領は、そう語った。監督に見捨てられ、主力選手をも失ったかつての名門、青島製作所野球部。創部以来の危機に、野球部長の三上が招いたのは、挫折を経験したひとりの男だった。一方、社長に抜擢されて間もない細川は、折しもの不況に立ち向かうため、聖域なきリストラを命じる。廃部か存続か。繁栄か衰退か。人生を賭した男達の戦いがここに始まる。

感想・レビュー・書評

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  • 米国発の金融不況の伝播で、急激な景気悪化が日本にもたらされた。
    その煽りを受けた青島製作所は、業績悪化のため大胆なリストラと人員削減を余儀なくされる。
    白水銀行からの融資も受けられず、ギリギリのラインを踏みとどまっている、緊迫した状態が続いていた。

    その渦中で、青島製作所野球部も存続の危機にあった。
    業績不振な今、青島製作所は年間3億円もの資金を野球部に費やすことは出来ないとし、野球部廃部を訴える声が社内から挙がる。

    ————-

    ミツワ電器というライバルの出現、株主総会での決議など大きな山場をいくつも越えて、物語の盛り上がりは次第に熱を帯びてくる。

    バラバラだった社内の空気も、みな一丸となって野球の試合を応援する中で、団結力とそれに伴うパワーを得られていった。

    その後の青島製作所は、カメラのイメージセンサーを発明し、業績は回復の兆しが見え始める。

    野球部の廃部は避けられなかったが、また新たな形で再スタートが決まり、新天地での活躍が期待されることとなった。


    最後はハッピーエンドで、サッパリした気持ちで読み終えた。
    スポーツは身も心も爽やかにしてくれるから好きだ。
    また時間をあけて読み返したいと思う。

  • 2014.9.6 再読

    2年前に読んでいたけれど、おもしろかった!という感想を持っているくらいで、かなり曖昧になっていた。
    スカッとするとても好きな話だったと思うのだけど、詳細を忘れてしまっていた。

    で、TVを観ていると覚えているところもありつつ、「えっ、こんなエピソードあったっけ?」となり、再読。

    やはり、TVはかなり盛り沢山な脚本になってましたねぇ。
    小説の方は、これでも十分メリハリも効いて、ハラハラドキドキ、そして最後にスカッとしてほんとにおもしろいんですけど、TVとなると1話1話に大きな山場がもっと必要なのね。キャラクター造詣も白黒が強調されていたし・・・。

    経営危機の中で会社の存亡をかけて、自社の進むべき道を見出そうともがく、青島製作所社長、細川。
    会長の青島が創部した野球部も経営再建に向けてコストダウンが叫ばれる中、存続が危うくなっている。

    細川はプレッシャーの中で決断を迫られながらも、会社の置かれている状況を的確に把握しようと努め、安易な妥協を許さない。また苦しい時間を過ごす中で、自社製品の開発や営業に携わる部下たちの苦労や努力を知るにつけ、自らの考え方にも変化が出てくる。鋭利なコンサル的企業経営者からものづくりに関わるすべての人の情熱を認めることの出来るよりたくましいリーダーへと成長していく。

    野球を愛するプレーヤーだけでなく、野球部を応援する人、野球に励まされる人多くの人たちを巻き込んだ野球部の逆転劇が青島製作所のそれと同時に展開されていく。

    自社の利だけを求めて経営統合を迫るミツワ電器社長が、裏で糸を引いて青島製作所の臨時株主総会を開催させる。会長青島が経営統合しない理由を問われて答える言葉の中に
    「ビジネスは、人間関係と同じです。相手を尊重する気持ちのないところに、真の友情は育たない。」(P370)

    池井戸さんの小説を読む多くの読者が、
    ああこんな人のもとで働きたい
    自分もこのように誠意を持って、自分にできる精一杯の仕事で相手の期待に報いたい
    互いを信頼し支えあいながら、知恵と工夫を寄せ合って解決策を提案したい
    と願うのではないか。

    長時間過ごす職場だからこそ、給料を貰えさえすればいいなどと割り切るのも、少々辛い。
    人に大切にされ、人を大切にする仕事場。
    経営強化の一環として使われるビジネス用語の『コミュニケーション』ではなく、もともと人が持っている基本的な欲求として人間関係が保たれる職場を求めているのでしょう。

    この話はフィクションだからね、などとあきらめないでおこうと思う。1対1の関係の延長線上に必ず心の奥がほっと熱くなる人の集まりが存在する。

    また、池井戸さんに励まされて本を閉じた。

  • ノーサイドゲームの野球版?
    いやこっちの方が先だから逆か
    読み始めはそんな感じでした

    結論から言えば読み終わりもそんな感じでしたw
    だけど面白かったな!
    そもそも野球好きなんでこっちの方がぜんぜん面白かったな!

    よく池井戸潤さんの作品群は勧善懲悪ばかりと言われてるようだがはっきり言って…勧善懲悪大好きだ
    まだまだ読んでない池井戸作品が沢山ある
    幸せだ

  • 半沢ブームに乗っかって、前から気になっていた作品を読了。
    「倍返しだ!」とはいきませんが、変わらずの池井戸テイストです。

    舞台は企業野球チームを持つ中堅電子部品会社。

    リーマンショックに端を発した景気悪化により、客先の減産や競合会社との価格勝負で徐々に追い込まれていく青島製作所。

    業績悪化で資金繰りが厳しくなる中、巻き返すことはできるのか、
    野球部の存続はどうなるのか・・・。

    自分の会社も同じように企業チームを持った製造業。
    リーマンショック後には同様に厳しい話があったのを思い出します。
    こういう企業チームって数字では表せないものを持ってるんですよね。

    ストーリーは明快かつ爽快。
    清清しい人はとことん清清しく、曲がった人は最後まで曲がって、ぎゃふん。
    それぞれに信念があり、良くも悪くもこれがビジネスマンだなぁ。

    かのルーズヴェルトが野球で一番面白いのは8対7の試合だと言ったことから付いた、「ルーズヴェルト・ゲーム」。

    7対0からの逆転劇。楽しませていただきました!

  • 野球でも池井戸潤。スカットさせてくれます。青島製作所の社会人野球チームと青島製作所自身の経営問題、合併問題が並行して描かれています。池井戸さんの作品なので銀行も出てくるけど、珍しく非常に少な目。今回、敵は銀行ではなくミツワ電気。野球の場面ばかりではないのですが、青島製作所自身も企業合併に対するルースヴェルトゲームを戦います。又「企業は誰のものなのか」という事も臨時株主総会の場面で考えさせられました。最後は意外な事に、、、

    • HNGSKさん
      フッタさん>>読みましたか読みましたか!!ありがとうございます。池井戸さんって、銀行以外でも勧善懲悪が書けるのかーって、私は思いました。野球...
      フッタさん>>読みましたか読みましたか!!ありがとうございます。池井戸さんって、銀行以外でも勧善懲悪が書けるのかーって、私は思いました。野球で、いちばん面白いスコアは8対9.なるほどなるほど。
      あんなゲームを見せられたら、女社長さんの心が動くのも分かる気がしました。
      2013/08/19
  •  7対8のルーズヴェルト・ゲーム。
    流れが行ったり来たりすることが多そうな試合です。

     野球部はコストか?野球が特に好きでもない人にとっては、
    午前中で仕事を切り上げて練習に打ち込む社員に対して
    良い印象は抱きにくいかもしれません。

     利益以外の価値をいくつか持っている方が楽しそうだけど、
    社員の解雇にまで踏み切らざるを得ない時には判断が難しそうです。

     城戸志眞さんかっこよかった。

     著者の作品は(全部読んだわけじゃないけど)、ラストが
    希望が持てるので途中どうなるか分からないところもあるけど
    安心して楽しめます。
     

    • honno-遊民さん
      池井戸潤の小説は、文庫帯にもあるように「すべての働く人への応援歌」です。どれを読んでも読後爽快で次を読みたくなります。
      池井戸潤の小説は、文庫帯にもあるように「すべての働く人への応援歌」です。どれを読んでも読後爽快で次を読みたくなります。
      2012/12/28
  • 中堅メーカー・青島製作所と大手ミツワ電器と企業が出てきて、何となく「下町ロケット」を思い出しラストが読めるが、青島製作所野球部も登場してきて面白さ倍増だった。
    しかし、最初は、肩書きの社長、専務、部長や選手等、登場人物が多すぎて、途中までこの人は、どちらの企業だっけ?と悩むも忘れる程引き込まれた。
    野球好きな自分にとって、手に取るように楽しめたし、「やったね!」凄い凄いと野球に反感もっていた者も夢中にさせてくれる程、一緒になって応援していた♪本当に面白かった~。

  •  企業+野球。青島製作所という、一企業を舞台に、経営者が、野球部が、必死に戦う。そんなん、かっこいいに決まってる。はまるに決まってる。
     野球の試合だけじゃなくて、会社経営のなかでも危機に陥り、7対0くらい負けがこんでるところであわやの大逆転。さすがは、池井戸作品。すったもんだありながらも、主人公は必ずハッピーになる、このスタンスは崩れなかった。読んでて、スカッとした。
      今回も、 Human is money. いっぱい勉強させてもらいました!!

     余談ですが、個人的には、沖原くんが泣くところ、3回とも、すごいかわいいなって思った。

    • フッタさん
      御紹介いただいた「ルーズベルトゲーム」読みました。一日で読み切ってしまうほどの面白さ。善・悪のはっきりした展開が、わかっているけどやめられな...
      御紹介いただいた「ルーズベルトゲーム」読みました。一日で読み切ってしまうほどの面白さ。善・悪のはっきりした展開が、わかっているけどやめられないです。読んで良かったです。有難うございました。
      2013/08/16
  • 現在、ドラマも放送中の作品。ドラマより先に読了。
    経営を立て直そうと躍起になる細川社長始め青島製作所の様々な社員たち。そして並行して野球部の奮闘する姿が描かれる。
    社会人野球は、私にとってはあまり馴染みがない存在。その意義を初めて知った。あくまでその会社の広告塔であり、企業イメージの向上には繋がるけど、勝ったから直接会社の利益になる、というわけではない、ということ。
    池井戸さんの作品は、そこまで沢山読んだ訳ではないけど、今回の作品は新鮮に感じた。お馴染みの企業小説ではあるんだけど、何といっても野球部の存在がホントに魅力的。ビジネス小説特有の堅苦しさを、良い意味で払拭している。お約束のライバル会社等との経営闘争がジリジリと繰り広げられる中、この野球部の一喜一憂する姿がストレートに心に響く。
    番頭的存在の笹井専務を筆頭に、リストラ計画の一部として野球部が廃部に追い込まれていくんだけど、後半の野球部の一人一人の頑張りによって、徐々に社員たちも一丸となっていく。良いな、と思った。同じ方向を向いてみんなで声を出しながら応援したら、絶対に団結力は高まる。ちょうど、W杯シーズンに日本が一つになるように。
    そして、登場人物がやたら多いのもお約束。社長、専務、総務部部長、野球部ピッチャー、ライバル会社社長、野球部マネージャー、青島製作所の株主・・・など、語り手も多く、正直途中で「この人誰だっけ?」となる時も。最初のページに、登場人物の簡単な説明を入れるのは池井戸さんの作品ではNGなのだろうか。思っている人は沢山いると思う。

    この先はドラマを見ている人はネタバレなので読まないでください。
    ドラマは、半澤直樹にも出ていた方々も多数出演。前回は半澤にこてんぱんにやられた人たちも、ここでかなりの好感度UPに繋がった人たちもいるだろう。大道監督も、悪役のような顔をしているが、今回はすごくカッコいい。
    しかし、何と言っても笹井専務役の江口洋介が良い。社歴の浅い細川が社長になり、内心細川に反撥心を感じている。途中、対立して裏切ることになるのでは・・・と、笹井専務の動向をはらはらしながら見守っていたが、そんな心配は無く、寧ろ終盤の彼の言葉は、この作品の中で一番涙を誘うシーンとも言える程。
    今後は原作との違いを楽しみながらドラマを観よう。

  • ルーズヴェルト・ゲームって何?と思いつつ読み始めたら、その謎はすぐに解けました。
    アメリカ大統領のフランクリン・ ルーズヴェルトは野球好きで知られていたらしい。
    その彼が一番面白いと言ったのが8対7の試合。
    それをルーズヴェルトゲームと言う。
    「青島製作所」と「野球部」はまさに8対7で9回裏を迎えたような状況にあった。
    その状況で、青島製作所と野球部は・・・

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著者プロフィール

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を、11年『下町ロケット』で第145回直木賞を、’20年に第2回野間出版文化賞を受賞。主な作品に、「半沢直樹」シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』『アルルカンと道化師』)、「下町ロケット」シリーズ(『下町ロケット』『ガウディ計画』『ゴースト』『ヤタガラス』)、『空飛ぶタイヤ』『七つの会議』『陸王』『アキラとあきら』『民王』『民王 シベリアの陰謀』『不祥事』『花咲舞が黙ってない』『ルーズヴェルト・ゲーム』『シャイロックの子供たち』『ノーサイド・ゲーム』『ハヤブサ消防団』などがある。

「2023年 『新装版 BT’63(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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