海賊とよばれた男 上

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著者 : 百田尚樹
  • 講談社 (2012年7月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062175647

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海賊とよばれた男 上の感想・レビュー・書評

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  • 出光興産・出光左三をモデルにした一代記であり、歴史経済小説である。

    国岡鐡造は貧しいながらも神戸で勉学に励み、その後国岡商店を立ち上げる。まだ、自動車も普及していなかった時代から、国際的な経済動向に目を向け、必ず石油の時代が来ると確信を持つ。彼は石油を販売することを通して、国民の暮らしを豊かにし、国に貢献したいと考えるようになった。しかしながら、石油製品の販売には利権が絡んでおり、なかなか思うようにはいかない・・・。


    上下巻のうち、上巻では終戦直後から、2年後にようやく石油の販売にこぎつけるまでと、生まれてから終戦までが描かれている。まるで山崎豊子の小説を読んでいるように、主人公には次から次へと無理難題が降りかかってくる。ただ、本作の主人公には私利私欲が見られず、周りにも自分が認め、育てた信頼のおける部下たちや、彼の人柄を理解しその生きざまに惚れる実力者たちが大勢いる。彼を目障りに思い、排除しようとする者たちも大勢いるが、理解者たちに救われる思いがする。

    先見の明があり、覚悟をもって一生の仕事を邁進する人が明治時代から戦後にかけての時代に輩出しているように思うが、それは混沌とした時代だから知見があり、知恵と知識を存分に生かし、胆力と気骨ある人を生み出したのか?

    いやいや、今の時代にも必ずそういう人たちはいる。
    時代の先端をまっすぐに進んでいく、進化形のすごい人がきっといる。まぁ、私が知るようになるのは後年小説になったときか、せいぜい「プロフェッショナル」にとりあげられたときだと思うけど・・・。

    あまりにもタフで、信念を貫いていける主人公にただただ感心するばかりで、存在が遠すぎる。けれど、その覚悟を少しだけでも自分なりに意識してみるかと思いつつも、早々に日々の生活に追われて忘れている。それでも、ちょっとだけ小さな器を広げられるように、車の運転中に人に譲ってみたりして・・・。

    P352で「永遠の0」の宮部さんが登場した。2人の人生が交錯した瞬間だった。 
    一瞬でありながらも、宮部さんの人柄を認める人がここにもいると知って、妙にうれしかった!

    下巻では、何が起こるのだろう?

  • この物語に登場する男たちは実在した。

    最初のページの真ん中に刻まれている。
    緊張した空気を纏いながら幕が上がる感じがした。

    20世紀の産業を興し、人を狂わせ、戦争の火種となった巨大エネルギー・石油。その石油を武器に変えて世界と闘った男…出光興産の創業者・出光佐三をモデルにしたノンフィクション・ノベルである。

    話が進むにつれ、これは本当にあった話なのか、こんな判断ができる経営者がいたのかと驚嘆がつづく。

    主人公を支える社員、資金援者、妻の人生も凄まじい。
    特に妻 ユキの覚悟に心が引っ張られた。

    国の在り方を問い、国民の在り方を問う。
    そして戦争への深い哀しみが刻まれている。

    途中にゼロ戦の話が挟まれる。
    (あーきっと出てくるだろうな)という名が刻まれていた。

    上巻を読み終え、物語を楽しむというより歴史を受け入れなくてはいけない気持ちを感じつつ、下巻を手にする。

  •  出光興産の創業者を、「国岡商店」の店主(社長)国岡てつぞう、として、その男らしい生き方を百田さんのよく調べ込む筆力で描く。いやあ、素敵だ。

     1945年、太平洋戦争の敗戦に伴い、満州の資源を全て失い、油を売ることもできず、(そもそも売る油がない),石統っていう会社からは排斥され・・・そんな状況の中、社員1000人誰一人も鶴首(クビ)にせず再生を目指して奮闘する国岡商店の社員たちの、かっこいいこと。
     会社にとって社員こそが財産、黄金の奴隷たる勿れっていうやつをモットーにして、自分の信念を貫くてつぞうさんの、かっこいいこと。
     あきらめるな、どうしてもだめなら、一緒に乞食をしよう、と、てつぞうを励ます日田重太郎のかっこいいこと。

     彼らの日々のたゆまぬ努力、探究心、日本を愛する心にしびれた。ちなみに「永遠の0」の宮部さんがちらっとこの作品にでてきたのもしびれた。泣けた。
     これは、まだ、上巻なんですよね。てつぞうさんすでに60歳・・・まだまだ働くのでしょうか?

  • この本を挟んで、
    坂本龍馬と中岡慎太郎が
    談笑している画が浮かんだ。

    豪快に笑いながら龍馬が言う。
    「いいか、中岡。この海賊、実はな…
     ワシなんじゃよ♪」

  • 「これは"0(ゼロ)"に連なる物語」、なんて見出しが似合いそうな。
    エビカツでお世話になっている方からお借りして、夢中で読んでしまいました。

    全てを失った夏、0を継いだ春、乾坤一擲の秋、そしてつないでいく冬、
    四季になぞらえての展開も、時代の流れとリンクしていて、入りやすく。

    そして、石油という"エネルギー資源"の大切さと呪縛、戦略性をあらためて。
    けだし、先の大東亜戦争は「資源戦争」であったのだと、実感。

    その資源問題は戦後になっても変わらずに、むしろ加速していきます。
    そして今再び、資源戦争の兆候も見え隠れし始めてもいますね。。

    これを念頭に、尖閣や竹島を読み解くに、単純な領土ではなく「資源」をキーワードにすると、
    それぞれが突っかかって来る理由も見えてくるのではないかと。

    そういった意味ではもう「戦後」ではないのでしょう。

    個人的には、人や食料も含めての、広義の資源を対象とした、
    「覇権と独占、そして収奪」という戦前の帝国主義が復権しつつあるとみています。

    閑話休題。

    さて肝心の本編ですが、出光興産の創始者「出光佐三氏」をモデルとしており、
    形式は架空の人物名でありながらも、日章丸事件はそのまま使われています。

    経済小説に分類されるとのことですが、歴史物語として読んでも面白い。
    途中、"0(ゼロ)"を感じることができるのもまた、なかなかに。

    "筋"を通すとはこういうことか、国を、人を愛するとはこういうことか、
    戦後、日本がどこかに置き忘れてきてしまった「価値観」がこれでもかと迫ってきます。

    信念を貫くに、相手を問わず、諦めることなく、天地に恥じることなく、
    そういった日本人の失われつつある心性を感じながら、読み進めました。

    そして、そんな出光氏(劇中は国岡氏)を偲んで一つの歌が残されています。

     国のため ひとよつらぬき 尽くしたる
           きみまた去りぬ さびしと思ふ

              (出光佐三逝く 三月七日 昭和天皇御製)

    この一事を見るだけでも、本当に日本を国を愛していたのだなと、実感できました。

    こういった逸話こそ、歴史教育の中で伝えられていくべきと思うのですが、
    不思議と戦後の話は省略されることが多いのではないでしょうか。

    これは、GHQの赤い部分の意向が強く働いた結果とも言われていて、
    それらが戦後に日教組や自治労との形をとって、侵食し続けている証左なんでしょう。

    確かに汎用的な評価が難しいとの側面はありますが、、
    現在を生きる者にとって、卑近の歴史こそ大事とも思います。

    それをしてこその、学問であり教育だよなぁと、あらためて実感です。
    ん、生涯学習との切口で、立ち向かってみようと感じた、そんな一冊。

  • 新年早々、気持ちを奮い立たせてくれる1冊でした。
    余韻がすごい。そして、これが史実に基づいていることが何よりすごい。人間の尊さや日本人としての誇りに胸が震えます。

    「出光興産」の創始者、出光佐三が本書主人公のモデルです。
    名前くらいしか知らなかった出光興産ですが、当時は「出勤簿なし、馘首なし、定年なし、家族も面倒見る」という、ただの理想論にも思えるものを、信念を持って有言実行した驚くべき会社でした。

    人道主義と企業の利益追求は相容れないものに感じるのですが、一切の妥協をせず、結果的にはどちらも手に入れている。それは、目先の利益ではなく、10年先20年先のことに目を向ける経営感覚や、戦時中は無償で国に尽くす愛国精神に見られる世のため人のために尽くすという精神が土台にあるからでしょうね。

    長いものに巻かれない、自分の正義を曲げない、なんてことをすれば、敵も多いだろうと思いきや、予想を超える敵の山。「もうダメだろう」という山場がそれはもうたくさんあるのに、その度に天の采配か全て乗り越えてきた。すべての始まりは「人」であり、窮地に陥った時に手を差し伸べてくれるのも「人」であった。
    「ありえない」と思うようなことが逃げ出さずに戦い続けることで次々に達成されていく様は本当に圧巻ですね。

    和を尊ぶ日本だからこそ、出る杭は打たれやすかったんでしょうね。どれほど日本のことを思っていようと、なかなか伝えるということは難しい。
    それでも、明治の人らしい、さっぱりとした気骨のある人物像は会えばきっと多くの人が魅了されたんでしょうね。

    堺屋さんの解説がついているのもよかったです。
    本書には敵のように描かれている人たちにもそれぞれの正義があったことが添えられています。
    これだけの大作を半年で書き上げた著者の百田さんですが、3ヶ月間に3回も倒れながらも没頭して書き上げた1冊ということもすごい。右とか左とかじゃなくて、日本人にこんな素晴らしい人がいたんだということを誇りに思える人でありたいと思いました。

  • 私の住む街もほんの少し名前が登場するので読んでみた。
    やっぱり歴史を作っていく人には、
    それなりの支援者がいるのだな。
    日田がいなければ、国岡もあんなに大きくなっていただろうか。

    難しい言葉も多いから読み流す感じで、完全に理解しながら読んでるかはあやふやだけど、
    戦争の酷さを改めて感じたし、
    沢山の船が攻撃され海に沈んでいったのかと思うと悲しくなった。

    これからが山場、下巻も心して読もう。

  • 読んでよかった1冊です。
    社員を家族の様に愛し、また社員からも愛された男の話。

    読んでいてページをめくるごとに目頭が熱くなってきた。

    人を真剣に愛するからこそ、周りの人達もこの人の為な頑張れる。
    そう思わせるオーラが読んでいてヒシヒシと伝わってきました。

    「会社がなくなったら、君たちと一緒に乞食をしよう。」この言葉にグッときた。

    この人となら一緒に乞食をしても楽しいだろうな。それくらい惹きつけられた。

    何があってもこの本は残しておきます。

  • 待ちに待った百田尚樹の新作!

    国岡鐵造。すごい男が居たものだ。戦後の動乱期、ひとりの馘首もならん…日本企業の経営者に聞かせたい言葉だ。社員を人財と考え、自己の利益よりも国益を優先させる姿勢は真の経営者だ。

    今の日本企業は、企業の存続のためにリストラと資産処分と企業の切り売りしか行ってないように見える。グローバルという流行りの言葉を使って、安価な労賃ばかりに目を向けた海外生産だけの戦略で、単に日本国内のものづくり文化を空洞化させているようだ。

    真のグローバリズムとは鐵造の経営姿勢を言うのではないだろうか。

    もともと日本は資源の乏しい国。先人達は知恵と努力で、ものづくり立国を創り上げて来た。鐵造もそんな先人のひとり。

    さて、下巻はどのように展開するのか楽しみだ。

    そして、零のサプライズプレゼント…うまい!

  • 1人の人生にスポットを当てるだけでなく、俯瞰で書かれている部分が多いので、今まであの戦争について書かれたものに触れた中で、一番わかりやすかった気がする。ぼんやりしていた点が国岡鐵造の人生に沿って線に繋がった。
    そして、日本にこんな侍はもういないよなぁ、と。即断即決、意志を貫く強さ、怯まず正々堂々と意見を述べる強さ、利権にとらわれない奉仕の精神。
    そんな人には今まで一度も会ったことはないし、これからの人生で出会うことなどあるだろうか。
    そんな胆力を身に付ける環境も発揮する場も、私の周りには無いが。

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海賊とよばれた男 上の作品紹介

1945年8月15日、異端の石油会社『国岡商店』を率いる国岡鐵造は、海外資産はもちろんなにもかもを失い、残ったのは借金のみ。そのうえ石油会社大手から排斥され売る油もない。しかし『国岡商店』は、社員ひとりたりと馘首せず、旧海軍の残油集めなどで糊口をしのぎながらも、たくましく再生していく。
20世紀の産業を興し、国を誤らせ、人を狂わせ、戦争の火種となった巨大エネルギー・石油。その石油を武器に変えて世界と闘った男とは何者なのか――
『永遠の0』の百田尚樹が初めて挑んだ、実在の人物をモデルにした本格ノンフィクションノベル!

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