海賊とよばれた男 上

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062175647

感想・レビュー・書評

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  • 終戦直後から始まり、主人公「国岡鐵造」の生い立ちから終戦までが綴られる上巻。

    これほど人を魅了し、そして引き付けられる人が果たしているのだろうか。利害を無視し、人の為国の為に働ける人が今の日本にどれほどいるだろう。

    と同時に事実を元にした物語とはいえ次々と色んな事件が起こり、彼に平和な穏やかな時間がどれほどあったのだろうと思わせるほどの怒涛の前半。
    その苦難も彼が家族と称する店員や出会った人々によって乗り越えていける逞しさが羨ましい。

    作中筆者の「永遠の0」の宮部さんが出てくるのがちょっと嬉しかったりした。さて下巻へ。

  • 久しぶりに手にとった小説は、本屋大賞受賞作。
    読み応えのある伝記風物語でした。

    主人公の国岡鐡造のモデルは、出光興産創業者の出光佐三(いでみつさぞう)氏。
    この人物がすごい。
    まれに見る清廉潔白・豪胆磊落な人で、会う人の心に鮮烈な印象を残していきます。

    物語は終戦を告げる玉音放送シーンから始まり、まずは戦後の混乱の中、なんとか会社を守ろうと奔走する国岡氏の努力が描かれます。
    経済が壊滅し、全く仕事を失った状態ながら、社員を一人も解雇することなく、しかも汚れた手を使うことなく、生き残りをかける様子に驚かされます。
    どう考えても不可能なこと。
    しかし、それを可能にしてしまう彼の凄さ。

    それは、学生時代から一貫して貫いてきた自分の信念を、社内にも浸透させ、社員が一体となって地を這うような頑張りを重ねるためにできることだとわかってきます。
    周りの驚嘆を呼ぶ彼と社員の結束力。
    それは一朝一夕でできたものではないと、読み進むことにわかってきます。

    英断即決、そして実行力のある国岡は、利権をもくろむ相手にとっては邪魔な存在。
    さまざまな妨害に遭いながらも、その信念を曲げることはありません。

    何度も大きな反対勢力に呑まれて倒産の危機を迎えながらも、決して信念を曲げることはない彼の姿勢と生き方に惚れ込んだ人が、彼に手を差し伸べることで、国岡商店は生き延びていきます。
    営利目的の商売人であっても、やはり最後に生きるのはその人間性。
    商人でありながらも自分たちだけの儲けを目指さない彼の仕事ぶりは、部外者の私から見ても驚嘆に値するやり方です。

    彼の前には憎らしいほどの利権主義の敵が立ちはだかりますが、彼に惚れ込んだ人々もまた集まってきます。
    そうした人々もまた魅力的。
    敗戦後の焼け野原の中から、立ち上がって今の日本を作ってくれた当時の人々の凄さには恐れ入りますが、物語にして読んでみると、一人ひとりにドラマがあり、さまざまな葛藤があり、考えて決断して歯を食いしばりながら日本を立て直してきたこ

    とがさらによくわかります。

    読み始めてまだ20ページも行かないうちから、すでに涙をこらえていました。
    敗戦の悲しさや哀れさというよりも、ゼロからの再建に自らを捧げる人々に胸打たれたからです。
    物資も食料も不足し、誰もが明日の不安を抱えていた頃に、前を見据えて進み続けた人がいた、その心の強さに圧倒されます。

    後半は、彼の子供時代から会社を興す辺りまで。
    決して恵まれた道を歩いてきたわけではなく、実家が夜逃げをして一家離散の憂き目にあったり、小さな個人商店に就職したりと、苦労に苦労の連続だったながらも、常に自分の頭で考え、先を見通して、どんな位の高い人の前でも臆さずに堂々と自

    分の主義を述べることで、彼の道は開かれていきます。

    こういった人に自分も出会いたいものですが、利益損失に左右される商業の世界で、ここまで公正さを貫ける人は果たしているのだろうかと思います。
    なんだか『プロジェクトX』を見ているような気にもなります。

    日本は、和を尊ぶ国で、つまり和を乱すとのけ者にされてしまう風土がある国。
    アメリカには村八分はないが、苛烈な人種差別がある国。
    本文中の、この簡潔な対比が印象的でした。

    太平洋戦争は、実は石油をめぐる闘いだったと、この作品を読んでわかりました。
    自国で石油が採れない日本と、油田があるアメリカとでは、はじめから勝敗が決まりきっていたようなところはありますが、引くに引けない状態となっていたのでしょう。
    石油の奪い合いにより起こったような戦争。
    日本は、戦争のことでまだ曖昧にぼかしている点が多く、国民に正確に伝えていないと感じました。

    実戦とは軍対軍の戦いだと思っていましたが、この戦争でアメリカは日本の工業生産力をそぐために、軍艦ではなく南方から資源を運ぶ輸送船を狙ったと知って、震えました。
    大東亜戦争で戦没した、武器を持たぬ一般の船員、漁民は6万人を超えたそうです。
    さらに敗戦した時、日本の備蓄石油はほぼゼロに等しく、これ以上戦う力はどこにもなかったとのこと。
    情報戦によりわかっていたことだろうになぜアメリカは原爆を落としたのか、と思います。

    太平洋戦争の原爆、東関東大震災の原発事故、どちらもそれのために、さらに国民が苦しめられた負の災害。
    逆境の時には絶望してしまうのが人の常ですが、逆境だからこそ不屈の意志で立ち上がらなくては、という国岡の生き方に励まされ、奮い立たされる人は、今でも多いことでしょう。

    国同士の戦いが終了した後も、石油の権利をめぐっての闘いは続きます。
    後編はさらにそうした流れが激化することと思われます。
    魅力的な人物像に当時の状況がよく分かる時代考察。後編も楽しみです。

  • 本を買った後、直ぐ読むのが勿体無くて、いつまでも楽しみにとって置いた。今日、とうとうページを捲り、一気に上巻読破。間違い無く傑作。面白い。

    歴史の傑物を追うのは、こうも面白いものか。また、対極に描かれる日本人として恥ずべき利権に塗れた組織人。侍たちと、利権派。石油を軸に、これらを取り巻く歴史が綴られる。戦争勃発。下巻はどうなることか。

  • 素晴らしい作品。著者がこの人じゃなければ満点。その意味で非常に悔しい。

  • 黄金の奴隷たるなかれ!
    日本人のプライドを持って生きようと痛感。

  • 主人公以外、実名でかかれており、実際にこういった考えで、この台詞、やりとりがあったのかと、ノンフィクションを読んでいるように思えてしまう。
    探偵ナイトスクープの構成作家さんだけあって、脚本を読んでいるようにスラスラ読めてしまった。
    こんな方がどん底の日本の戦後から、高度成長を支えてくれたおかげで今の日本があることに、ただただ頭の下がる思いです。

  • 出光佐三の物語であるが、百田さんはどこからこのような話を見つけてきたのだろう? 過去に小説になっていなかったのが不思議なぐらいの物語である。

  • おもしろいし、すらすら読める。このまま下巻に突入。第一次世界大戦以降の日本の動向とともに、石炭・石油といったエネルギーがいかにこれまでの様々な戦争・紛争にかかわってきたかがよくわかる。

    主人公の国岡は出光がモデルで、出光が宗像出身ということは知っていたが、赤間だったというのはこの本で初めて知った。自分と同じ小学校に行っていたというのを知って、俄然親近感が沸いたりもした。

  • 出光興産創業者をモデルにした小説。

    主人公・国岡鐵造が、敗戦に伴って満州の資源を全て失い石油を売ることもできないところからお話は始まります。
    鐵造はそんな状況の中でも、人間尊重の信念で社員ひとりたりともクビにせず、圧力にも負けずに立ち向かっていきます。
    そんな鐡造の姿に彼に関わる多くの人間が共感し手をさしのべてくれ、幾多の苦難を乗り越え、日本の石油産業を築いていく、というドキュメンタリーのような小説でした。

    鐵造が倒れる度に立ち上がって問題に四つに組み、乗り越えていく過程が実にわくわくし、かつ心洗われるほど感動的。

    時代の荒波に耐え、現在の日本を作り上げていった人々のお話は敬虔な気持ちにさせられます。

    でも、鐵造は凄いなあとは思うものの、何だか凄すぎちゃって、自分に引き寄せて考え、私も頑張ろう!とは思えなかったわ~。

  • 面白くて一気に読めた。出光という会社に着いて、友人を通してしか知らなかったが、好感があがった。

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著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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