最果てアーケード

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著者 : 小川洋子
  • 講談社 (2012年6月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062176712

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最果てアーケードの感想・レビュー・書評

  • 知らない町や駅に降り立つと
    必ずといっていいほど商店街を探し
    コロッケなどの総菜を頬張りながら、
    猫の尻尾を追いかけながら
    町を散策する自分には
    まさにツボだった本(笑)

    想像力が一瞬にして広がる秀逸なタイトルと
    絵本作家である酒井駒子さんによる
    静謐さをたずさえた芳醇で美しい表紙のイラスト、
    『そこは世界で一番小さなアーケードだった』で始まる
    吸引力抜群の冒頭の一行からして
    否応なしに引き込まれた。


    その『世界の窪み』のような目立たないアーケードには
    使用済みの絵葉書、変わった動物の剥製、玩具の楽器、人形専用の帽子、化石、レース屋、義眼屋、ドアノブ専門店、シンプルなドーナツを一種類だけ売っている「輪っか屋」など
    「一体こんなもの、誰が買うの?」というレアでマニアックな商品を扱う店ばかりが集まっている。

    そんなアーケードだからこそ
    立ち寄る客もちょっと変わった人ばかりで…

    劇場で衣装係をしていた老女、
    あしながおじさんのイメージにピッタリの「紳士おじさん」、
    お金持ちを絵に描いたような「兎夫人」、重たい鞄をヨレヨレになりながら背負ってくる百科事典のセールスマン、黒いバイオリンケースを提げコウモリを研究する若者などなど。
    (ねっ、なんか変でしょ笑)


    物語は大家だった父を大きな火事で亡くした後もアーケードに住み続け
    様々なお店の配達を手伝う主人公の女性『私』が語る、
    様々な時代の様々なお客さんにまつわる
    切なくて優しい大人の寓話となっています。


    アーケードで買い物した人だけが利用でき、
    無料のホットレモネードと
    百冊ほどの本が常備された読書休憩室の発想は
    昭和な香りとあたたかな善意が感じられて
    なんかいいなぁ~って思ったし、
    オシャレでなくていいから
    こういう社交場がその町その町にあればなぁ~っと妄想が広がる(笑)

    アーケードにある様々なお店に来るお客さんの話なので
    読んでいるうちに自分がその商店街を歩いてる気分になり、
    次はどんな店が現れるんだろうと
    ワクワクしてくる。
    (しかし、そこは小川作品だけに
    死の影がそこら中に散らばっていて不穏な空気感も…)


    それにしても『永遠』を感じさせる瞬間が
    これほどある本を僕は知らない。

    心の中だけで上演されるお芝居のため、登場人物たちの衣装を縫っている衣装係のお婆さん。
    主人公が彼女のことを考えながら
    中庭で妄想するシーンの
    静謐で詩的でロマンチックなこと。

    他にも子犬のベベに聞かせるために
    声を出して百科事典を読むRちゃんと
    それをうっとりとして聞く主人公のシーン。

    アーケードの天井の偽ステンドグラスをすり抜けて地上に降り注ぐ幻想的な光に、
    主人公の少女が白い運動靴を浸して遊ぶシーン。

    あるいは、主人公の母が入院する療養所の雑用係の老人が
    40年間もの長い間、自分宛てに出した絵葉書の束を主人公に見せるシーン。

    ドアノブのためだけに存在する狭く真っ暗な暗闇に膝を抱え座り込み、
    主人公が薄まった自分を取り戻すシーン。

    主人公が亡くなった父の姿を重ね、アーケードに来るお客さんの後をつけ尾行をするシーン。


    限りある命の人間には
    必ず終わりがある。
    『永遠』を所有物として持つことは決してできない。

    でも僕らは本を読み、音楽を聴き、映画や美術を観ることで
    永遠に近づくことや
    永遠に続くと感じることはできる。

    『永遠』を感じるとき、
    人は満たされ、幸福感に包まれる。

    物語はラストのラストで
    ずっと感じていた違和感がストンと腑に落ち、
    『そうだったのか…!?』と
    すべての意味ありげなシーンが繋がっ... 続きを読む

  • 世界で一番小さなアーケードには不思議な店がたくさんある。レース屋、輪っか屋、紙店、ドアノブ屋、勲章店…どれも皆が普段気に留めないような些細な小さな物だけれど、心の隙間を埋めるために買いにくる人は絶えない。
    主人公の少女も最後には心の隙間を埋める事ができて、無事父の元に行けたのだろうか。雰囲気的に吉田篤弘さんの世界観に似た感じがしたが、どの話も死に直面する内容があったので、しんみりする内容であった。

    吉田篤弘さんと言えば、文中に百科事典を売りにくる人が出てきて、これはもしや「針がとぶ」とリンクしているのか!?と思ったが真相は分からず…。

  • 長さはほんの十数メートル、その先は中庭で行き止まり。
    誰も気づかずに通りすぎてしまいそうな、世界の窪みのようなアーケード。
    店に並ぶのは、中古の端切れレース、動物や虫の義眼、使用済みの絵葉書、ドアノブ、勲章など「誰がこんなものを買うのか」と首をかしげるようなものばかり。アーケードのオーナーをしていた父の死後、そこで配達係として働く「私」が語り出す物語。

    どこか死の香りがまとわりつくような小川作品特有の文体はそのまま、犬のベベが「ブラフマン」のように愛くるしく我々を歓迎してくれる。

    遺髪で織られる繊細なレース、亡くなった娘の代わりに百科事典を読破する父、輪っか屋さんの恋の結末・・・メモリアル・ジュエリーのようなお話たち。

    日本で喪服といえば「黒」、喪の装いも当然「黒」、であるがこの黒=喪の由来とされるのがヴィクトリア女王。夫アルバート公を亡き後、全身黒の装いで故人を偲んだそうだ。彼女が装身具として愛用したジェットは、イギリスを中心にヨーロッパで大流行し、現在でも多くの国で正式な「モーニングジュエリー Mourning Jewelry」(喪に服する期間に身につけられる装身具)とされている。

    そう言えば、ベベやブラフマンの漆黒の瞳はどこかジェットを連想させる。

    また彼女は夫の遺髪を忍ばせたロケットも身につけていたらしい。
    髪は肉体が朽ちても残る。物理的にも呪術的にも強さを持つ。かの夏目漱石も『こころ』で、「先生」にこう語らせている。
    「気を付けないといけない。恋は罪悪なんだから。私の所では満足が得られない代りに危険もないが、――君、黒い長い髪で縛られた時の心持を知っていますか」(上・十三)

    現在では遺灰からメモリアルダイヤを作ることが出来る。遺骨中に含まれる炭素に高温高圧をかけて生み出されるダイヤは薄い青みを帯びているそうだ。

    ブルーダイヤの原石のように、鈍く光る故人の思い出の欠片たち、、、時を止めたアーケードにはそんなものが詰まっている。

  • 「この世界では、し、ではじまる物事が一番多いの。
    し、が世界の多くの部分を背負ってるの」

    病気であっけなく召されてしまうRちゃんが百科事典を見ながら語った
    この言葉に象徴されるように、死の気配に満ちた、美しい物語です。

    時のはざまに浮かんでいるような、世界で一番小さなアーケード。
    その中に並ぶのは、使い古しのレースだけを扱うレース屋、義眼屋、
    たった一種類のドーナツだけを売る「輪っか屋」、ノブが壁一面に並ぶノブ屋など
    どこか浮世離れした、不思議な店ばかり。

    もちろんピカピカの新品もあるのだけれど、
    そんな新品の商品よりも遥かに敬意を払って恭しく並べられている、
    持ち主より長生きしてしまったモノたちの描写が、ため息が出るほど美しい。

    死を禍々しいものとして遠ざけず、
    喪われゆくものの尊さ、美しさを抱きしめるように生きている人たちだからこそ
    犬のべべが年老いるまでの長い歳月、飼い主である大家の娘の「私」の存在を
    受け容れ、温かく見守ることができたのでしょうか。

    人さらいの時計がついに止まったとき、
    静謐な場所へとつながるノブ屋のストーブの前で、旅立ちの近いべべはまどろみ
    「私」はようやくデートに間に合って、お父さんとグラタンを食べている。きっと。

  • 「何かの拍子にできた世界の窪み」のような小さなアーケードが舞台。
    そのアーケードにある少し変わったお店とその店主たち、そしてそこを訪れるやはり少し変わったお客さんたちを、配達係を勤める「私」が静かに見守っている。
    とても静かで穏やかで、どうしようもなく寂しい物語。


    「私」の視点で語られるアーケードの物語は、どれもすごく愛おしい。
    愛犬ベベの愛らしさ、お父さんの優しさに涙が出そうになる。
    とても魅力的な場所なのだけど、永遠に存在するわけではない。
    そんなつい目をそらして忘れたくなることを、ずっと突きつけられている。
    だから愛おしいし、寂しいんだと思う。

  • 童話のようなぼんやり靄のかかった向こうにあるようなお話でした。
    世界の果てにあるような寂れた小さなアーケードで生まれ育った少女と、そこで生活を営む店主たちの交流が描かれています。

    母を幼い時に病気で失い、16歳の時に火事で父を失った私。
    レースや義眼や手紙やドアノブや勲章や、どこに需要があるのかわからないようなお店。
    着る人のいない舞台衣装を作りつづける衣装係さん、百科事典を読み続ける少女、兎の眼を探す夫人、ドーナツの格好をする元体操選手、自分に手紙を書きづつける雑用係、ライオンのドアノブがついた小さな窪み、遺髪専門のレース編み師、動くところを見ると人さらいに連れて行かれるという時計。

    そこに流れる時間は現実と違う速度で、すべての輪郭が曖昧で、ぼんやりとした印象しか残らない。
    でも、その残像がゆっくり心の奥に沈殿していくような感じがありました。
    色彩も音もゆっくり失われていくような。
    悲しいな。

  • なんだか、ひっそりとした商店街の雰囲気がすごく好みでした。どことなく死の匂いが漂っているのですが、不快ではなく心地よいのです。閉じた世界なのですけども、最後は出口に辿り着いたのかな。水面にうつる世界を覗き見しているような不思議な読後感でした。すべてを知った上でもう一度再読してみたい物語。

  • 上質。

    アーケード大家の娘の一人称で、
    家族や店主や客について書かれた短編から構成。

    きっとどこにでもあるけど、選ばれた人しかたどり着けないアーケード。

    「死」の存在感が強い。

    どこからが生きててどこまでが死んでるのか…

    わたしの読解力では一度で理解できなかったので、再読しなきゃ
    でも、はっきりさせる必要はないのかもしれない、とも思う。

    「想い」とか「記憶」とかについて語るなら、死んでいようが生きていようがどちらでも構わない、ような気もする。

    遺髪レース…すごい。
    ほんとうにあるんかなぁ

  • 読んでいると、物語の視点である少女がいま何歳で、何者であるかがわからなくなる。生死さえも曖昧としていたけれど、少女の五感だけは瑞々しく研ぎ澄まされていて、こういったアンバランスさが好きだったりする。

  • 誰も気に留めない、ひっそりとしたアーケード街の物語。レース屋、義眼屋、ドーナツ屋、紙店シスター、ドアノブ専門店、勲章屋…どのお店にも日々の物語があり、扱う品にも人の思いがつまっている。語り手は長い間アーケード街に住み、お店の配達係を引き受けている少女。どのお話にも人や物を慈しむ心があって、哀しみや死の予感があります。少しずつわかってくる少女の過去と今。全体的にアーケード街のレトロな雰囲気(ぼんやりとしたセピアな感じ)もあいまって、もの悲しさが漂っていますが、読んでいてなぜか心地よく、心が癒されていきました。小川さんの優しい文章に包まれている気持ちよさというか…。また、他の作品でも感じましたが「誰も気にとめない」人や物にそっと寄り添って温めてくれる優しさが小川さんの物語にはある気がして、心の底から幸せを感じれるのかなと思いました。静かな気持ちでまた浸りにいきたい世界でした。

  • 全編を通してただよう「死」の気配に
    読みながら息ができないくらい追いつめられた。

    そうか、「し」は「死」か。
    この世の中はしで始まるものに満ちている。

    それを受け入れるには心の準備が必要だとおもった。
    今の私にはちと重い。

  • 連載コミック「最果てアーケード」の原作として書き下ろされた連作短編集。
    世界で一番小さなアーケードを舞台として大家であった亡き父の娘が少女の頃から配達人となった現在に至るまでを語っていきます。
    それぞれの話の店主や登場人物は個性的ですが中には事情があってハッとさせられる物語も含まれています。
    小川さんにかかると本当に物語は変幻自在に操られます。
    解明されないようなこともあるのでしょうが、それも含めて小川ワールドなのでしょう。
    でも一貫しているところはやはり“愛しさ”と“優しさ”が詰め込まれているところでしょうね。
    印象に残った話はRちゃんの百科事典の話、輪っか屋さんと元オリンピック選手との話、そしてラストの父との映画を観る約束の話あたりでしょうか。

    正直評価の分かれる作品だとは思います。それは小川洋子というトップブランドと言っても過言ではない作家に対する“面白くて、そして良かって当然”という読者の先入観がもたらされているからだと思います。
    個人的にはよっぽど読解力のある人はともかく、じっくり何回か噛みしめて読み込んでいく作品なのだと思いますが、本好きは次々読まなくてはいけないので(笑)なかなかそれができませんよね。

  • ん~~~・・・・・小川さんらしい、静謐な物語。好きではあるけど、ちょっと哀しい・・・かな。でも、また読みたいけど。

  • ゆったりとした時間の流れる、優しくて穏やかな空気の中に、どこかで暗い死の影が付き纏う。非現実的なのに妙にリアルで、現実と死の世界の境界線がぼんやりしてきて、自分がどこにいるのか分からなくなるような、不思議な感覚。

  •  町の大半が焼ける火災で、唯一残ったアーケード。町の再開発でできた新しい建物のかげに忘れられたように位置する小さな店には、数こそ少なかったが、店主の思いを組むように様々なお客がやってくる。
     大家の娘で、アーケードの店の商品の配達係をする女性と、変わった商品を扱う店、そこに足を運ぶ人々のやさしい物語。

     使い古された様々なレースを扱う「レース屋」、剥製づくりに使う様々な義眼をそろえた「義眼屋」、生地の詰まったシンプルなドーナツだけを売る「輪っか屋」、アーケードで一番の長老ノブさんが店主の「ドアノブ屋」など、怪しげな魅力に満ちた店の数々。読んでいくうちに、いつの間にかそこに足を運んだような錯覚をしてしまうほどの、情景描写。小川洋子さんの魅力たっぷりの世界観です。酒井駒子さんの表紙もいい。
     モチーフは秀逸ですが、ノスタルジックな空気に満ちているので、小川洋子さんを初めて読む方にもおすすめ。
     少しずつ、味わって読んでほしい作品です。

  • 失ったもの、決して戻ってこないもののうつくしさを、この人以上に描ける人がいるだろうか。
    謙虚で、儚くて、そして愛しいものたち。

  • ひさしぶりに読み終えたあとなにもできなくなってしまった。「この世界は「し」で始まるものごとが一番多い」。つまりはそういうことなのでしょう。ひとつめの話を読んだ時点でひたひたと痛みの予感が押し寄せてくるのに次の話に進まざるを得ない。赤いレースが儚い。
    登場人物の誰もが職業や役割による呼び名だったりそっけのないイニシャルだったりする中で飼い犬のべべだけが名前らしい名前を持っている。始めはひっそりと、後半は明確につきまとう死の香りが居心地悪いようで落ち着くようで困惑してしまう。きっと死生観をはっきり持った書き手なのだと思う(たいへん私的で申し訳ないのだけれど、ひとりっこでずいぶん早くに父を亡くしている身としては初めて読む小川作品がこれというのは何の因果だ、みたいな気持ちで、正直しんどくなりながらも夢中になって読み終えた。息苦しさを感じたけれど、同時にこれは悲劇ではないのだという説得力もあった)。
    とても緻密に、丁寧に積み立てられた連作短編なので、素直に読んでいけば物語の全貌を予測することはできるだろう。レース屋の話で幕を開け、アーケードの中の世界がすこしずつ見えてきて、終盤で再び舞台がレース屋に戻ったところではじめて核心に触れる構成は規則を感じさせるようでうつくしい。
    レースの模様、ドーナツの穴、ドアノブの向こうの暗がり。そこには不在が不在として存在していて、「世界の窪み」であるアーケードに包まれている。「し」で始まるものごとが一番多い。死は終わりなんかではなくて、誰かが欠けたそのあとも世界は平気な顔で続いていく。なにもなくなるわけじゃない。
    こういうしんとした小説には見合わないものすごく乱暴なまとめかたをしてしまうと、「もの」は死なないのだ。だから髪で編まれたレースは生と切り離されて飾られるのだし、新鮮なトマトは潰れてもおいしいし、誰かの書いた絵葉書は残るし、百科事典にはRちゃんとお父さんの痕跡が刻まれている。
    こんなにも饒舌に詳細に小さなものを慈しみながら小説を書けるひとだから、小川さんは死と生なんて軽々と飛び越えてしまうのかもしれない、と思った。なつかしいような、さびしいような、だけど居心地のいい、読んでいて無性に泣きたくなるような小説だった。題名にそっと添えられたレースがすてき。

  • 小川洋子さんの作品は、何処か仄暗くて淋しい空気感がある。それは、陰鬱とは違って、温かさのある哀しい静けさで、誰の胸にもある、心の中の小さな隙間を思わせる。
    独りで居ると自由でホッとするけど、ある瞬間に悲しみが満ちると言うのと、いつも沢山の人に囲まれて賑やかだけど、誰にも気持ちを分かち合えない冷たい心の澱を抱える事の違いみたいな。
    小川さんの物語はどちらかと言うと前者で、だから私は共感出来るのかなぁと。
    誰にも気付かれない様な、寂れた小さなアーケード、商店街でささやかな店を営むひとたちの、ちょっと変わった物語。語り部に隠された悲しい秘密。不穏な予感を感じながらも、決して虚しさだけでは無い、微かな暖かさ。
    小さな物語が、胸に降りてくる。

  • こないだプレゼントとしてもらった小説。

    不思議なアーケード街の物語。
    レース屋さん、勲章屋さん、義眼屋さん、ドアノブ屋さん、輪っか屋(ドーナツ屋)さんetc
    寂れた最果てのアーケードに、何かを喪った人々が、必要なものを買い求めに現れる。
    主人公の“少女”の視点で物語は進んでいく。傍らにはいつも犬の“ベベ”を連れて。

    形式としては短編の連作というつくりなのだけど、時系列が行ったり来たりするところが少し謎解き風でもあって、最終章を読んだときにすとんと腑に落ちた。
    そして酒井駒子さんの絵が大好きな身としては、表紙を見ただけでテンションがあがった(笑)
    この表紙の意味も、読んでいけばわかる。

    少女、アーケードの人々、客として訪れる人々、すべての人たちに孤独が流れているような雰囲気。ファンタジックで物悲しい。
    読み終えて、私が買いに行きたいものってなんだろう、としばし考えた。
    過去に戻れないことはわかってるし戻りたい願望もそんなにないけれど、「これをし忘れてしまった」と思うことはいくつかあって、欲しいのはきっと、それにまつわる何か。

    心にぽっかり空いた穴を埋めるために、人々は最果てアーケードを目指す。
    この世のどこかにありそうな気がしてしまう、不思議な物語でした。

  • 静かで、悲しくて、冷たくて、でもやっぱりほんのり暖かい。
    ちょうど今の季節みたいに、寒い部屋の片隅で火をゆらゆら揺らしているストーブにあたっているような、そんな感じ。



    読み終わった後に表紙を見ると、ジーンときます。

  • 小川洋子さんの描く世界は不思議過ぎるのに何故か溶け込める。
    完全に感情移入していたぶん映画館のエピソードは辛かったです。ずっとこのアーケードの世界観に浸っていたかったのに、もったいないくらいのスピードで読んでしまって少し後悔しています。

  • 何かを失った人々が、心にぽっかり空いた穴を埋める物を見つけられる場所。そんな不思議なアーケード街が、今回の物語の舞台です。

    小川先生が「世界のくぼみ」と表現した場所を訪れるのは、大切な何かを失った人達。そんな穴だらけの空間と人々の隙間をそっと埋めていく表現が、ただただ優しくも残酷です。

    アーケード街の配達人である「私」の目を通して語られる店主達とお客さんのやりとりがメインではありますが、随所に挟まれる「私」と「父」の記憶が胸に刺さります。思い出を丁寧に手繰っていく描写と、ただ「父が死んだ」という事実を述べただけの冒頭の対称性が、寂とした悲哀を際立たせているように感じました。

    …それにしても、店頭に並んでる品物を書き並べてるだけの箇所すら、丁寧に言葉を拾い集めたくなるのは何故なんだろうか…(°_°)不思議〜


    今回は印象深い登場人物達の造形のピックアップに留めてみました〜( ^ω^ )内容説明が…難しくてですね…←

    ◉衣装係さん…来る日も来る日も、誰に着られることもない舞台衣装をこしらえる老女。

    ◉百科事典少女…百科事典を順番よく、根気強く読んでいくRちゃんと、一人の紳士。

    ◉兎夫人…兎のラビトを溺愛する夫人。

    ◉輪っか屋…シンプルなドーナツ一種類のみを扱うドーナツ屋さんと、元オリンピック選手のポニーテールの女性。

    ◉紙店シスター…弟思いの紙店店主と、私のリーリー中の母と、病院の雑用係さんと。

    ◉ノブさん…ドアノブばかりを扱うその店には、一際立派なドアノブがある。そのノブを回した向こうにある暗がりの中へ。

    ◉勲章店の未亡人…表彰式と勲章をこよなく愛した店主と、その遺志を受け継ぐ妻。

    ◉遺髪レース…遺髪を美しいレースに編み上げる編み師。

    ◉人さらいの時計…「さようなら
    、お父さん」

    ◉フォークダンス発表会…ノブの向こうの暗がりに身を沈める私。止まった人さらいの時計。

  • 実はとても身近にあるのに、当たり前すぎて気が付かない。そんな取るに足らないような、でもなくては困るような小さなことに注目する小川洋子さんの観察力の鋭さと、丁寧で優しい視点が、読んでいてとても落ち着く。

  • 小さな小さなアーケードの個人の商店とそこに来るお客さんの話。

    ---------------------------------

    読み終わっても、もやっとした感覚が残って、アーケードのファンタジーな世界観にやられてしまったのかと思った。
    死んでしまったひとやそこを去った人々の思い出がとてもノスタルジックで、感傷的なもやもやにもやられてしまったようだった。

    語り手の”私”は亡くなっているのか?
    もしくはアーケード自体がパラレルワールド的な世界なのか?
    と勘ぐりながら読んだが、どちらも的外れだった。

    ファンタジーなものを純粋に楽しめる、透明な感覚が欲しい。

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最果てアーケードの作品紹介

ここは、世界でいちばん小さなアーケード――。
愛するものを失った人々が、想い出を買いにくる。
小川洋子が贈る、切なくも美しい記憶のかけらの物語

※本書は、「BE・LOVE」連載コミック「最果てアーケード」の原作として書き下ろされたものです。

最果てアーケードのKindle版

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