- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062177061
作品紹介・あらすじ
名も知らぬ木々で覆われた、森のように静かな家で暮らす、佐藤さんとその息子・大学生のまりも君。そこへ転がり込んできた、佐藤さんの恋人の美里。理解されない孤独をそれぞれに抱える3人は、どこか寄り添うように、「森の家」での奇妙な共同生活を続けるのだが――。小説すばる新人賞・泉鏡花賞ダブル受賞の異才が描く、ちょっと普通じゃない、「家族」のカタチ。
感想・レビュー・書評
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まるで森のように木々が生い茂っている家で共同生活をしている、佐藤さんと恋人の美里と佐藤さんの大学生の息子まりも君。
佐藤さんが美里とまりも君に何も言わず、突然いなくなるところから話が始まります。
全体的には暗い感じのする話だけど、人間の持つ暗さや狡さと言ったものがリアルに表現されていて、千早さん上手いなぁと思いました。
最初から期待というものがなければ、人はある程度は求めずに生きられるもの。人を打ち砕くのは現実そのものではなく、現実と期待との落差なのだと思う、という一文がすごく心に残りました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ご本人書かれているとおり、不健康な感じ。
緑に包まれた古い家に集まる3人。
かかえるものがあるけれど、けして踏み込まない。
踏み込むと壊れることがわかっているからか。
読み終えて。
表紙絵にある深い青の湖、それは閑散とした駅、湖から道東なのだろうか、と思ったけれど、ちょっと違うかな。ザンビアでもないだろうし。大麻でもない。
うーん、ザンビアの森なのだろうか。。。
暗い湖が印象的。
グミがでてきた。そうね、グミは鳥もあまり食べないかも。だから高めの樹にびっしり付いたまま。見た目はお菓子っぽいというかむしろゼリービーンズそのものだけど、かなりおいしくない。
わかる人にはわかるかもしれない。大麻の森には自生していた。
確かに、熱が出たときは不健康な夢を、そういつも同じ夢を見た気がする。
でも、そんなことは若かったころだったかもしれない。
みりさん、佐藤さんは戻ったかなあ。
もう若くないんだからね。お二人の幸せをお祈りします。 -
千早茜さんの人と人が上手く関わり合えない感じを
独特な空気感で作り上げる言葉の数々。
とても複雑で気怠い。
他人がめんどくさいけど、1番めんどくさいのは自分で・・・。
孤独で寂しさに慣れているのに
何かを求めてしまうような。。
何も求めないはずが、何かが欲しくてたまらない。
そんな聡平さん、まりも君、みり。
最後の聡平さんが怖かった!!
何かに囚われたままの3人。
ずっと3人のモヤモヤ感を感じる作品。
それが、とても分かるようで分からない感じ。
この千早茜さんが描く空気感が好きです。
絡み合うけど絡み合えない。
溺れているのに沈まない。
そんな・・・感じ。
千早茜さんの作品を、まだまだ読みたい!! -
20歳の息子のいる恋人と暮らし始めたみり。
ある日、恋人佐藤は、行き先を告げることなく、突然姿を消した。
互いの距離感を上手く測れず、家族としての関係も希薄な3人。
それぞれの生育環境が独特で、守ってもらえる子供であることを諦め、他人に期待しないようになった男性2人は、なるべくしてなった感じがありました。
恵まれていた訳ではなくとも、唯一感情を露に出来るみりが、2人と共に関係性を変えることになるだろうと期待出来る終わり方に、少しの明るい未来を感じました。
生い立ちなど、子供時代の経験が人の一生を左右する。
子供にとって周りの大人の責任は重大だと感じずにはいられません。 -
血が繋がっていなくても、血が繋がっていても、家族は家族になれる。でも、家族って何だろう。
一緒に暮らしていれば家族。そういう感覚は確かにある。血の繋がりのない他人と一緒に暮らしていた時、それは確かに家族のようだった。では、一緒に暮らしていない血の繋がりのある人は、家族ではなくなっていくのだろうか。
人と人との繋がりは、簡単に切れるかどうか。多分、切れる。とても簡単に。人と人との繋がりは本来そんなに確かなものではないから、容易に切れないように、また容易に切れないと自分も他人も錯覚させるように、「家族」とか、「友達」とか、言葉を当てはめて繋がりを少しでも強固なものにしようとするのだろう。でも、そんな言葉を無くしてしまえば、そんな言葉に縛られる必要はないのだと気付いてしまえば、それはとても簡単に崩れ去ってしまう。
繋ぎ止めたいと思うならば、そういう意思があるならば、まさにその意思でもって自ら繋ぎ止めるべきなのだ。美里がそうしたように。人との距離に迷ってそう出来ないなら、それまでのこと。どうしても家族が必要なわけではない。「パレード」に参加しない生き方だって、ちゃんとある。参加したいと思うか思わないか。ただ、それだけのことだ。
『魚神』から千早茜のことを追ってきて、思う。不遜な物言いかもしれないけれど、千早茜の感性は私にとてもよく似ている。 -
『からまる』よりも更に深く深ーく沈んでいく感じ。
思わず繰り返し読んだ。
人と必要以上に関わりを持ちたくない三人。
父と、血の繋がりが不明な息子と、父の恋人。
三人それぞれの視点から語られる三つの話は、各々の内にある「さびしさ」に気付かせて、変化していく。
家族小説と呼ぶには、いびつ。
作中にある「血のつながり」というテーマが「血のつながりのない?」三人に立ちはだかる。
爽快感のないストーリーだが、しかし在って欲しい形へと「変化」して、良かった。
千早茜の作品にはいつも水をはらんでいる気がする。それは時代や内容では変わらずに。
静かに、静かに、人の思いをなぞりながら……そこに漂う停滞と孤独を否応なしに感じさせられる。
でも。嫌じゃなかった。
うーん。味わったな。 -
息子と思われる子と同居する父、そして、その人と付き合っている、自分の母親と噛み合わない娘。お互いに他人との距離感がうまく掴めないもの同士が一緒に生活し、そして男性が出ていくことで改めて自分を見つめ直す。
そんな3人がそれぞれの視点から物語が紡がれる。
3人それぞれの視点から見たときに、特にみりさんの印象がみんな違っていて、なかなか実像が掴めず、最初はなんだこの人はと思ったけど、徐々にある意味持ってる強さに惹かれていった。
掴みどころのない佐藤さん。周りの捉え方の闇の具合がなんだか面白かった。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/58339
”自分には何かが欠けている気がする”
そんな気持ちを抱えた3人が一緒に住んでいた。しかしある日突然、1人が姿を消して…。
「家族」をテーマにした小説です。
千早茜さんの作品、どれから読もうか迷ったらこれを読んでみてください。