内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力

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  • / ISBN・EAN: 9784062178594

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  • 『内向型人間の時代――社会を変える静かな人の力』(講談社 2013)


    原題:Quiet: The Power of Introverts in a World That can’t Stop Talking (2012)
    著者:Susan Cain(1968-) 弁護士、ライター
    訳者:古草秀子(翻訳家)

    ※2015年に文庫化。
     →『内向型人間のすごい力 静かな人が世界を変える』 (講談社+α文庫)



    【目次】
    はじめに――内向型と外向型 対照的な二つの性格について [003-023]
    目次 [024-029]

    パートI 外向型が理想とされる社会
    第01章 “誰からも好かれる人”の隆盛 外向型はいかにして文化的理想になったのか 
    セールスマンの誕生 034
    他人に見られる自分を意識する時代 036
    劣等感というコンプレックス 041
    外向性は成功を、内向性は悲惨な結末をもたらす? 045
    外向性を賞賛する歴史 048
    なぜ人格より性格重視に変わったのか 050

    第02章 カリスマ的リーダーシップという神話 「性格の文化」の一〇〇年後 
    自己啓発カリスマのセミナーにて 054
    発揚性気質 058
    ハーバード・ビジネススクールとリーダーシップ神話 061
    五五%しか自信がなくても確信を持って話せ! 063
    リーダーは雄弁でなければならないのか 069
    内向型でも有能なリーダーたち 072
    内向型リーダーと外向型リーダー 077
    陰と陽、補完し合う内向型と外向型 081
    ソーシャルメディアの普及で内向型もアピールできる時代 085

    第03章 共同作業が創造性を殺すとき 新集団思考の登場と単独作業のパワー 
    彼らはつねに単独で行動する 089
    創造性に富むのは内向型 093
    「新集団思考」がつみとる創造性の芽 094
    孤独なほうが「集中的実践」が可能になる 101
    オープンオフィスは生産性を阻害する? 106
    ブレインストーミング神話の崩壊 110
    集団であることのプレッシャー 114
    多様化された職場空間がもたらす恩恵 118

    パートII 持って生まれた性質は、あなたの本質か? 
    第04章 性格は運命づけられているのか? 天性、育ち、そして「ランの花」仮説 
    一〇年ほど前の私 124
    内向型か外向型かを分けるもの 126
    高反応な子供と低反応な子供 130
    生まれつきか育ちか 133
    なぜ人前で話すのは怖いのか 136
    遺伝子と環境 139
    高反応であるということ 142

    第05章 気質を超えて 自由意志の役割(そして、内向型の人間がスピーチをするには) 
    生まれ持った気質は消えない 147
    そのとき脳内で起こっていること 150
    人間は「最適な」レベルの刺激を求めている 153
    自分の「スイートスポット」をさがそう 158
    自分を伸ばす方法 161

    第06章 フランクリンは政治家、エレノアは良心の人 なぜ“クール”が過大評価されるのか 
    似つかわしくない組み合わせ 166
    「とても敏感な人」とは 170
    内気な若い女性がファーストレディに 177
    敏感さと良心 179
    クールな人と顔を赤らめる人 181
    進化のトレードオフ理論 185
    臆病と大胆、遅いと速い 189
    内向型のアル・ゴアはどうやったか 191
    内向性と外向性のバランス 193

    第07章 ウォール街が大損し、バフェットがもうかったわけ 内向型と外向型の考え方(そしてドーパミンの働き)の違い 
    報酬に対する感度が強すぎると 198
    外向型は経済的にも政治的にも報酬を求める 202
    金融危機をもたらしたのは押しの強い外向型 207
    内向型のほうがすぐれているわけ 211
    「フロー」の状態になる内向型 216
    経済危機でも成果をあげる内向型の投資家たち 222

    パートIII すべての文化が外向型を理想としているのか?
    第08章 ソフトパワー 外向型優位社会に生きるアジア系アメリカ人 
    なぜアジア系は授業で積極的に発言しないのか 228
    性格タイプに見る西洋と東洋の文化的相違点 234
    劣等感を抱く内向型 240
    自分をうまく表現できないと過小評価されるアメリカ 244
    ガンジーの内気さから生まれた「抑制」という財産 249
    静かなるねばり強さもソフトパワーの実例 252

    パートIV 愛すること、働くこと
    第09章 外向的にふるまったほうがいいとき
    性格特性は存在するのか 258
    内向型なのに外向型? 262
    あなたのセルフモニタリング度をチェックする 266
    偽外向型でいることの害 271
    自分と「自由特性協定」を結ぶ 276
    自分の回復のための場所を確保する 280

    第10章 コミュニケーション・ギャップ
    逆のタイプの人とのつきあい方
    内向型と外向型がつきあうには 283
    内向型が反社会的であるという誤解 286
    内向型と外向型の敬意の示し方は異なる 290
    それぞれの違いを認識する 294
    内向型が苦手なシチュエーション 299
    必ずしも外向型がセールスに向いているわけではない 301

    第11章 内向型の特性を磨く方法 静かな子供をどうしたら開花させられるか 
    内向型の子供を受け入れられる親、受け入れられない親 306
    何を求めているのかを知ることから 309
    内向型の子供の心を理解する 312
    恐怖や不安は自分で制御できるようになる 314
    学校は不自然な環境 319
    内向型の子供に理想の教育環境とは 325
    才能や興味を育む 330
    あなたがつまずいたところに、あなたの宝物がある 334

    終章 不思議の国 338

    献辞に代えて 342
    「内向性・外向性」「内向型・外向型」という言葉について [345-347]
    訳者あとがき(二〇一三年四月 古草秀子) [348-349]

  • 「独創性や洞察力ではなく言語能力が評価の基盤になっています。上手にしゃべれて、注目を集められる人間でなくてはならないのです」ブレインストーミング神話の崩壊・・・集団が大きくなるとパフォーマンスは悪くなる

  • ずっと学校生活で辛い思いをしてきたし、サッカーの試合で熱狂的になれないし、そんな自分に劣等感を抱いて生きてきたんやけど、この本を読んで納得。
    でもこの本を読む人で、外向型の人は少ないだろう。そして、外向型は内向型のことを理解できずに「暗い・変な人」って目で見続けるんだろう。内向型に向いていることがあるとは書かれているけど、変われるなら変わりたいし、ニセ外向型にでも良いからなりたい。
    納得はしたけど、絶望から抜け出すことはできないと思い知り、暗い気持ちになった。

  • まずは人を内向型と外向型に分けることが新鮮だった。そして改めて自か分は内向型であることを理解し、この外向型隆盛の世の中で生きにくさを感じていた理由が腑に落ちた。内向型人間は、ゆっくり考え、一人で作業に没頭するときに幸せを覚え、それがゆえに芸術的で創造的なことを生み出す可能性を秘めている。またこれは生まれ持った気質であり、後天的には変えられない。集団の中で外向的に振舞っているので、ストレスが溜まるのだ。自分が生きる中で感じていた違和感を整理してくれ、また生き抜くためのアドバイスもあり、すっきりさせてくれた。

  • 誰からも好かれる外向型の人物が注目されますが、思慮深い内向型の人たちもちゃんと活躍しています。
    自信をもって行きましょう。
    という本。

  • 外向型の人間が特に重視されるアメリカの社会に抗して、内向型人間の意義と重要性を説く本。とても面白い。人口の3分の1から2分の1くらいはいるとされる(p.325)内向型人間に勇気を与えてくれる。また、内向型人間の活かし方を述べているだけではなくて、外向型人間と内向型人間が上手く付き合う方法であるとか、子どもが内向的であった場合にいかに伸ばしていくのかという教育法についても書かれている。

    著者の見るところでは、アメリカは元々、外向型人間が重視される社会だ。それはアメリカという国がヨーロッパの貴族階層に対抗するように形作られたから。内向型人間が重視するような教養や慎重さ、熟慮といった特性に対して行動を重んじたのが初期のアメリカ指導層だった(p.48f)。これが一般にも拡大したのは20世紀になってからと見られている。20世紀になってアメリカは、自分がどうあるかを重んじる「人格の文化」から、他人からどう見られるかを重んじる「性格の文化」へ移行したのだ(p.37)。象徴的なのは心理学者アドラーの「劣等感」という言葉で、これが性格の文化へ移行するなかでの社会的不安に心理学的な概念を与えた(p.44)。

    外向型人間の重視はしたがって、特にアメリカに見られる文化だ。そしてそれなりの問題がある。著者は様々に、外向型人間ではうまくいかない例を出している。リーマン・ショックとエンロンの危機において、短期的利益とインセンティブからなる外向型人間の文化が寄与していることはよく言われることだ(p.207-211)。外向型で、雄弁で自己主張の強いリーダが有能とは限らない(p.69-77)。どんなリーダが良いかはメンバーによっても決まる。メンバーが受動的なら外向型リーダ、能動的なら内向型リーダがよい(あるいは、そうしたリーダのもとではメンバーは受動的・能動的に変わる)(p.78-81)。外向型リーダはその雄弁さで、重要な意見や問題点を覆い隠してしまう。外向性は創造性を阻害してしまう。創造はたいがい、孤独に行われるものだ。ブレインストーミングは(少なくとも直接に対面するものは)実は効果が薄いことが書かれている。アイデアは一人で発想するほうが出てくるのだ(p.110-114)。ブレインストーミングの論点についてはあまり納得しなかった。一人よりは内向型の二人か三人くらいの方がよい感覚がある。

    外向型と内向型の違いをもたらす脳科学的考察についても書かれている。内向型人間は扁桃体が発達していて、外部からの刺激に敏感に反応する。未知のものに対して大きな反応を見せる高反応の幼児は、実は内向型に育つことが多い(ジェローム・ケーガンの実験)。未知のものに興味を示すから外向型になるかと思いきや、快・不快を司る扁桃体が過敏に反応するため、未知の刺激(例えば知らない人)に用心深くなるのだという(p.126-133)。一方、外向型人間はドーパミンの分泌量が多く、脳の報酬系が敏感に働いている(p.203-205)。もちろんこうした事柄を論じるには、気質と性格を区別することが必要だ。なお、こうした周囲の刺激に敏感な人間がいる進化的意味は、敏感さそれ自体にではなく、それに伴うことが多い慎重な思慮深さにあると考えられている(p.186)。

    ともあれ、内向型人間は人との接触を恐れているわけではない。内向型は調和性や親和性といった点では外向型と変わらない。外向型人間から見れば内向型人間は付き合いにくい存在だろうが、それは付き合い方のタイプが違うだけなのだ。内向型人間は目新しさや過度の刺激に不安を感じる(p.315)。だから、未知のものの刺激が少ない環境では、内向型も開放的である。例えば、SNSへの投稿がそうだ。SNSは見知らぬ人と直接に対面しない。内向型のほうがSNSにおいて積極的だという話もある(p.87)。現代は、内向型がアピールできる時代でもある。

    未知なるものへの恐れや躊躇はもちろん、克服することができる。また、内向型人間が思わぬ積極性を発揮して、偽外向型に振る舞うことがある。それは、自分が興味を持ち、価値を置く、好きな事柄に対してだ。ブライアン・リトルの議論を引いて、これはCore Personal Projectと呼ばれている。要は、没頭できる領域を見つけよう、ということだ。だがそれは簡単なことではない。それ以外の領域において外向型のように振る舞わなければならない場合は、自分を回復する場所や事柄を確保しつつ行うことが内向型人間にとって大事だとされる(自由特性協定と呼ばれている)。外にいる間は頑張って外向型のように振る舞うが、用事が終わったらとっとと帰って家で寛ぐのよいということ(p.271-282)。

    外向型と内向型のどちらを重視するかは文化的な差異があり、外向型の重視は絶対的な真実ではない(p.240)。これは本書の鍵となる考えの一つだ。そのために、アメリカと中国の文化的差異が述べられている。これによると、アメリカは活動的、社交的な人間を重視し、中国は謙虚で利他的な人間を重視するという(p.236)。どうやら中国、韓国、日本を儒教圏の文化として、内向型を重視すると特徴付けているようだ。この評価に違和感を覚えるのは私だけではあるまい。アメリカ型ではないとはいえ、中国が内向型を重視する文化とはとても思えない。

    本書の問題の一つは、この違和感にある。著者はあえて、外向型・内向型とは何かについて定義しようとしていない(p.345-347)。まさにそれがテーマの本なのに!これは概念的整合性がいつも気になってしまう私には歯痒いこと限りない。現代の性格心理学は、性格を主要5因子で判断する。神経症傾向(情緒不安定性)Neuroticism、外向性Extraversion、開放性Openness to Experience、調和性Agreeableness、勤勉性Conscentiousnessの5つだ。著者の言う内向型・外向型とはこの外向性で特徴付けられるのかというと、そうではない。それはこの5因子のいくつかの複合なのだ。にも関わらず、著者が引いてくる心理学的結果はこの5因子説を前提としていることもあるので、分かったようで分からない記述となってしまっている。例えば内気で声が小さく、自分を表現できないのを克服しようとする、ニー教授のセミナーの話があるが、これは内向型でなく内気の人の話である(p.244-249)。この本の拠って立つ理論的基盤は、実はとても脆弱であることに注意が必要だ。著者は学者でなくライターである。

    本書は外向型人間が重視される社会において、内向型がどう自己評価していけばよいのか、大きなヒントと勇気を与えてくれる。昨今は日本でもグローバリズムの名の下、外向型人間のみを評価するような向きがある。グローバルマッチョを巡る議論などはそうした流れにあるだろう。人口の半分(アメリカで半分というが、日本だと5分の4くらいの個人的感覚)を占めるという内向型人間が、そうした流れのなかで自分を見失わないために、とても大きな問題提起をしている本だ。

    「内向型と外向型は互いにうんざりさせられることもあるが、ソーンの実験はたがいが相手にどんな態度をとるべきかを教えてくれる。外向型は、中身のない話を軽蔑するように思える内向型が、じつはうちとけた気楽な話ができると知るべきだ。そして、自分がまじめな話ばかりしがちなのはよくないと思っている内向型は、他人からすれば、そういう話ができる有益な存在なのだと自覚するべきだ。」(p.303)

  • 内向型人間にとっては生きづらい世の中。明るくアクティブな外向型人間が理想とされるが、果たしてそうなのか、本書は疑問を投げかける。

    外向型人間だけのチームや社会はうまくいかないし、内向的の人ばかりでも同じ。それぞれ長所、短所があり、お互いが補完し合うことでより良い成果がもたらされる、と筆者は言う。

    多くの内向型の著名人のエピソードを知ることで、自分の内向的な性格に対して、劣等感を持たないようになれた。
    自分らしく生きることの大切さを再確認させてくれる良書であった。

  • タイトル通り、内向型と言われる人たちにフォーカスを当てた本。自分自身も間違いなく内向型だと思うので、いろいろ納得することたくさんあり。人それぞれの特徴を良く理解して、その人に合わせた関わりかたをしてあげたいね。

  • 読了

  • しばしコンプレックスと捉えられがちな「内向性」に対して、ポジティブな見解を与えている。

    コミュ症の人はリア充的な人に対してコンプレックスを抱いてしまうし、それを助長する社会や教育は確かに存在する。しかし、そうした社会や教育を否定し、それぞれの人間がお互いを理解しバランスを持って人間の特性を評価すべきとした。

    コミュ症の人間は、リア充の不得意な領域で輝けるということを、過去の偉人達も例証しながら論じている。

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著者プロフィール

プリンストン大学卒業、ハーバード大学ロースクール修了。ウォール街の弁護士を経て、ライターに転身。『ニューヨーク・タイムズ』『ウォールストリート・ジャーナル』紙、『アトランティック』誌などに寄稿するほか、企業や大学などでコミュニケーション・交渉術の講師を務める。TED2012の”The power of introverts”と題された講演は2500万回以上インターネットで視聴され、ビル・ゲイツお気に入りの講演の一つとして紹介されている。本書は1作目の著書で、すでに40言語に翻訳され、アメリカでミリオンセラーとなった。

「2020年 『内向型人間が無理せず幸せになる唯一の方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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