ふたつの月の物語

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 529
感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062178808

作品紹介・あらすじ

養護施設で育った美月と、育ての親を亡くしたばかりの月明は、中学二年生の夏休み、津田節子という富豪の別荘に、養子候補として招かれる。悲しみのにおいに満ちた別荘で、ふたりは手を取りあい、津田節子の思惑を探っていく。十四年前、ダムの底に沈んだ村、その村で行われていた魂呼びの神事、そして大口真神の存在。さまざまな謎を追ううちに、ふたりは、思いもかけない出生の秘密にたどりつく…。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。
    なかなかどうして悪くない。
    23:30に読み始めてスルスルと読み進み2:50に読み終わった。
    大口真神をアマゾンで検索して出てきたので購入した。
    この著者さんは本書が初めて。

    自身の出生を知らぬ主人公、ダムの底に水没した村、狼信仰。
    このキーワードで読む前から期待値は上がっていました。
    カバーイラストからシリアス、ダーク、ヘビィな印象を持っていたが読み始めると、あらら?案外ライトなのかしら、と思うほど軽快に話は進んでいく。ちょっぴり設定の糊付けがくどいなと感じる部分があるが、逆に言えば伏線や物語の設定を丁寧に説明してくれていたので(あれ?あの人はなんて発言していたっけ?)などとページを遡ることはなかった。
    二人の主人公が物語をグイグイと引っ張っていくので、緊張感のあるシーンがあっても電車の窓から見た景色みたいに過ぎ去って行きます。テンポが良いのでページをめくる手が止まらず読み終わってしまった。
    読んでて一番興奮したシーンは物語終盤にあります。ネタバレだから伏せますけど臨場感と雰囲気が良いです。説明したいけれどごめんなさい。書きたい感想がネタバレになってしまうからこれ以上書けない!
    あかりの服の文字には思わず吹き出しました。お気に入り。

    ビンとラベルから重厚な味を想像していたが、いざ飲んでみたらスッキリ飲みやすい、このお酒なかなかどうして悪くないじゃない、そんな読後感を体験しました。

  • 評価3.5ですが.5が出来ないので…。

    片方は孤児院で、もう片方は血の繋がらないお爺さんのもとで育った「4月生まれで本当の親を知らず、月の標を持つ」二人の少女の話。

    寄り道なく進んでいくシンプルさがとても良いです、ダレることなく読了まで一直線でした。
    はにかみながらポップコーンの匂いをまとい、慎重派のみづきの手を取るあかり。凸凹コンビは王道だけれど可愛らしい。

    途中「ああ、子供が生贄になる因習村系で何やかんや二人が生還する話か〜」と気分が少し下がりそうでしたが良い意味で裏切られました。あかりとみづきは別荘に返され津田のお婆さんが三年前に亡くなった孫と運命を共にする…。津田のお婆さんにとっては後悔が晴れる展開だったでしょう。

    ただやはりそれ以外のことが頭を過ぎります。あの日自分を迎えに来るために、恋人とその祖母が土砂崩れに巻き込まれたと知った婚約者の傷は一つ多くなり。
    やっと血の繋がった家族を見つけたあかりとみづきの二人の真夏の冒険譚は泡と消え他人に逆戻り。
    遺言により再会はするでしょうが、あの恐る恐る手を伸ばすような、過去の綻びを一つ一つ共に解くようなあのカナカナの鳴く夏の日々は戻らないのでしょう。

    せっかくみづきが力強く約束した「わたしが見つける」も結局遺言により再会が濃厚そうです。

    自分たちの手で過去を紐解くのと、手紙で通告されるのでは感情も全く違うと思い切なくなります。どうかリセットされても、二人があの湖の別荘で再び自分たちの手で謎を解き真実に辿り着く時間が与えられますようにと願って止みません。

    最後の「愛をこめて」も、それを言うのはやっぱりずるいんじゃないかな。「感謝をこめて」なら分かるのですが。結果的に、おそらく記憶が残っていないとは言え二人はまた家族になるはずだった人を失ったのですから少し身勝手に思ってしまいました。

  •  養護施設で育ったみづきと、親代わりの住職を亡くしたあかり。接点の無い2人に里子の話が持ち上がり、夏の間、里親の別荘で過ごすことに。突然現れた里親候補、別荘のそばに広がるダム湖に沈んだ村、2人の少女の出生を結ぶものは?

     図書館本。
     読んだことのある富安作品に比べ、ぐっと大人っぽい雰囲気を漂わせている。ただ、ダークテイストでも、やっぱり富安節なわけで。
     なかなか引き込まれるスタートを切り、謎また謎の展開で、ふとページを確認すると残りが3分の1も無い。えっ、これ収拾つくの?と思ったら、すごく平和な方向へ。今までのミステリアス、サスペンスフルな展開は何だったのか。私のようにホラーやサスペンスを期待すると、ガクッと来るので要注意(笑)。
     2人の秘める力も、過去を探るためのツールという扱いなのも残念。まあ、本の厚さからすれば、大冒険にならないのは想像がつくけど。
     里親の津田さんをもっと掘り下げてほしかったが、そうすると児童向けの範疇から逸れてしまうかなあ。

  • よくできた和製ファンタジー。

    二人が贄にされるのかと思ったが、節子さんはそこまで腹黒い人ではなかった。それやったらホラーだもんなあ。

    オオカミ信仰は関東に多く、『オオカミの護符』なんかも一時期ちょっと話題になったので、民俗学好きの富安さんならそういう本に刺激されて物語ができたのかなと思う。
    (参考文献が巻末にあればよかったのに。子どもは読めなくても、オオカミ信仰は富安さんの創作ではなく実際にあるということを知るきっかけになったのでは、と。)

    美月と月明のキャラクターをわかりやすく書きわけてあるので、子どもにもとても読みやすい。
    しかし、二人の特性が今一つ上手く活かされていないように感じた。もしかしてシリーズ化するつもりだったのかもしれないが。
    あと神様が親切すぎませんか。分かりやすいというか。神様の言葉としては。

    物語はサクサク進み、面白く、ちょっと不気味で切ない、そしてオチもしっかりある、子どもにすすめやすい本だと思う。

    酒井駒子の表紙も、いつもは「内容に合っているのか?単におしゃれっぽくて流行りのイラストレーターだから使っているのでは?」と疑問を持つことも多いのだが、今回はちょっとダークな内容と合っていると思う。月明が顔を隠しているのも想像が膨らんで良い。

  • 児童ファンタジーとして良くできていると思う。酒井駒子さんの挿し絵も雰囲気に合っていて良い。楽しく読めた。

  • 親のいない美月と月明は富豪の養子候補として湖畔の別荘に招かれ出会う。二人が富豪の思惑と自らの出生の秘密を探るうちに明らかになるのは…。
    (一般担当/カリカリ)

  • 双子、養子、別荘、沈んだ村、伝説。おもしろくないわけがない。出会うべき人にはちゃんと出会う。

  • 児童書ですがしっかりしたストーリーでしてが美月 月明の絆より母親との絆をもっと書いてほしかったです。

  • 読みやすく、引き込まれて、ぐんぐん読んで読み切った感じ。
    別れ別れで育った双子の女の子。里子として引き取られて出会ったダムに沈んだ村の側の山荘で、過去の出来事と出会う。その村には不思議な伝承と神事があった。14年前、そこで何があったのか?

    ただ、ラスト、もっとホラーがかるのかと思ったが、どこか平和でほんわかした展開となった。そこが物足りない、ということもあるだろうし、そこが良い、という人もいるかもしれない。
    いずれにせよ、もっと様々な展開も予想させる設定だっただけに、少しもったいない気もする。

  • 怖い。
    でも、好き。
    好きなのはきっと、富安さんの言葉のおかげなんだろうなあ。
    怖いだけにしない、お話のおかげなんだろうなぁ。

    ふたりの子たちがどうなってしまうのか、すごくドキドキした。富安陽子さん作品だからこそ、ドキドキしながらも安心して読めたし、すごく引きこまれた。

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著者プロフィール

1959年生まれ。1991年『クヌギ林のザワザワ荘』(あかね書房)で第24回日本児童文学者協会賞新人賞、第40回小学館文学賞を受賞、1997年「小さなスズナ姫」シリーズ(偕成社)で第15回新美南吉児童文学賞を受賞、2001年『空へつづく神話』(偕成社)で第48回産経児童出版文化賞を受賞、『盆まねき』(偕成社)により2011年第49回野間児童文芸賞、2012年第59回産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞、2021年『さくらの谷』(絵・松成真理子 偕成社)で第52回講談社絵本賞を受賞。絵本に「やまんばのむすめ まゆのおはなし」シリーズ(絵・降矢なな 福音館書店)、「オニのサラリーマン」シリーズ(絵・大島妙子 福音館書店)などがある。

「2023年 『そらうみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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