満月ケチャップライス

著者 :
  • 講談社
3.39
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本棚登録 : 384
感想 : 82
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062180122

作品紹介・あらすじ

-あれ以上においしくて元気の出る食べ物は、きっと、この世に存在しない。ある朝、中学一年生の進也は、妹の亜由美に起こされた。台所を見に行くと、知らない男の人が体育坐りで眠っている。夜の仕事をしている母が連れて帰ってきた人らしい。進也はあまり気にせず、いつものように目玉焼きを作りはじめると…「あ、そろそろ水を入れた方が、いいんじゃないですか?」3人家族と謎の男チキさんの、忘れられない物語が始まる。

感想・レビュー・書評

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  •  図書館より
     母親と兄と妹の三人家族の家に突如転がり込んできたモヒカン男。その髪型から”チキさん”と呼ばれるようになった彼は兄妹とも打ち解けていくのだが…

     朱川さんの小説らしい優しさの感じられる一冊だと思います。
     子の兄妹、兄の達也は小さい頃妹と公園に行ったとき、ほんの少し達也が目を離したすきに、妹の亜由美は足を怪我し右足が不自由になります。
    その後両親が離婚、亜由美は足が不自由なため友達と気軽に遊びに行くのが難しく、達也は自責の念を感じています。
    そうした二人がチキさんの優しさによって救われて、そしてだんだんと本当の家族以上に強い結びつきができていく様子は、読んでいる自分の心も温かくしてくれるような気がします。

     作中の”チキさん”が作る料理の描写も良くて、チキさんたち三人で料理している描写がこの本では何よりのお気に入り。
    チキさんの人柄はもちろんのこと、この温かそうな料理の数々が自分の心にぐっと来たのだと思います。

     そんなチキさんの優しさの理由が話が進むごとに明らかになっていくのですが、これが何とも切ない…。
    それだけに余計にこの不思議な関係性がずっと続いてほしいと読んでいて思わずにいられませんでした。

     終盤が実在の事件と絡めて描かれていたのですが、その展開が性急で練りこみ不足に感じたのがちょっと惜しく感じてしまったのですが、
    朱川作品の優しさの部分をとても感じることのできた小説だったと思います。

  • この物語の魅力はいつのまにか進也の家にやってきた実は超能力者の「チキさん」。低学年くらいまで、僕が思うヒーローは絶対的強者だった。高学年になると、「普段弱くても実はヒーロー」それもカッコイイと思うようになった。チキさんのように。ただ、途中からあの実在のカルト集団の比重が増えてきて、中学生の視点を懐かしみたかった僕としては複雑な読後感。

  • 突然家に現れたチキさんと、僕と妹の亜由美と母の数ヶ月間の物語。チキさんの作る料理が美味しそう。少し幸せになったかと思えばすぐ問題が出てきて、頁をめくる手が止まらなかった。性的虐待や覚醒剤、オウム真理教が出てくるのでただのほんわか物語ではない。最後は悲しくフェードアウトするような感じで、ハッピーエンドであってほしかったなぁと思ってしまう。

  • 朱川湊人さん、忘れた頃に読みたくなる。もちろん本気で忘れてたわけではないが。

    これは割と感動できる家族の絆の物語。といっても中学生の僕と、夜の仕事をしている母と、右足が不自由な小学生の妹の3人暮らしをしているところに、母の店の客?恋人?関係性が曖昧なモヒカンの男が転がり込んでくる一風変わった家族?妹はすんなりチキさんと呼んで懐き、僕もすぐにチキさんのことが好きになった。そんな家族+モヒカンの4人でのほっこり生活が始まった。そこに元父親の登場やらある教団の存在、そしてチキさんの過去で幸せな時間が崩れる。

    料理シーンがほっこり温かい。そしてどの料理も美味しそう!

    「世の中で大事なのは、自分でご飯を作ったり、買い物に出掛けたり、人と楽しく話が出来るっていう事なんだよ。特別な力なんて、何の意味もない事さ。」

  • 朝起きたら、スナックで働く母親が連れ帰った、料理上手なモヒカン男がっっ!
    そのモヒカン男が言う『幸せな家っていうのは、いつもキレイなタオルと新鮮な卵がある』ってのが、本を読み進めるにあたって、主人公と共にじんわりと納得できる、優しいお話しでした。
    ただ、中盤から超能力が出てきたり、現実で起こった宗教事件が関係してたりでお話しが混在してきて、ラストがぼやけた印象があって、ちょっと残念な気持ちになってしまいました。。

  • 主人公の少年に、その周りを取り巻く暖かな人たちに、幸せになってほしい幸せになってほしい、と願いながら読み進めた。

    「人生は予想できないことの連続だ。」

    すらすらと読める割に、後に残ったのはじんわりと胸が痛むような哀しさ。

  • 中学生の進也は母と妹の亜由美と三人暮らし。ある朝目覚めると、チキさんと言うちょっととぼけた男を母が拾ってきていた。今までの男とは少し違うチキさんに、進也も亜由美も徐々に心をひらいていく。

    と、これだけ書くと非常にハートウォーミングな物語のようですが、亜由美は足が少し不自由だったり、亜由美の事故の原因は自分にあると進也は思い続けていたりと、少し悲しい部分も。
    だからこそ、他人であるチキさんのあたたかさが救いだったりするのですが、それもこれだけでは終わらない。チキさんは超能力者でした。

    はっきりではなくてもそうと分かる大事件のことが書かれていたので、その辺はちょっと余計だったかなあなんて思いました。

  • +++
    ―あれ以上においしくて元気の出る食べ物は、きっと、この世に存在しない。
    ある朝、中学一年生の進也は、妹の亜由美に起こされた。台所を見に行くと、知らない男の人が体育坐りで眠っている。夜の仕事をしている母が連れて帰ってきた人らしい。進也はあまり気にせず、いつものように目玉焼きを作りはじめると…「あ、そろそろ水を入れた方が、いいんじゃないですか?」
    3人家族と謎の男チキさんの、忘れられない物語が始まる。
    +++

    ある年齢以上の人ならだれでも一度は真似したことがあると思われる超能力のこととか、世の中を戦慄させるテロ事件を起こした宗教団体のことなどを織り込みながら、これほど切なく身近で、哀しくてしあわせにあふれている物語がほかにあるだろうか。人と人との出会いと心の結びつきの運命的な不思議さと、別れの理不尽さに涙を誘われる。チキさん・・・と思わずつぶやいてしまいそうになる一冊である。そして、チキさんの作ってくれるごはんが、簡単なのにどれもとてもとてもおいしそうで、素敵。

  • 腹減り系小説かと思ったらNIRVANA聴きたくなる系小説だった。朱川さんにしては全体的にとっちらかった印象?とは思ってしまったけど、チキさんと進也たちとのやりとりに漂う泣きたくなる空気はさすが。展開としては某団体絡まずに弟さん絡ませた方がわたし好みではあるけれど、そうしたらありきたりになるんだろうな。難しい。

  • タイトルからは想像出来ない読後のモヤモヤ感。実際の事件とシンクロしてるのも嫌な想像が膨らんでしまいゾワゾワした。チキさんはこの家族と出会って本当の意味で幸せだったのだろうか。

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著者プロフィール

朱川湊人
昭和38年1月7日生まれ。出版社勤務をへて著述業。平成14年「フクロウ男」でオール読物推理小説新人賞。15年「白い部屋で月の歌を」で日本ホラー小説大賞短編賞。17年大阪の少年を主人公にした短編集「花まんま」で直木賞を受賞。大阪出身。慶大卒。作品はほかに「都市伝説セピア」「さよならの空」「いっぺんさん」など多数。

「2021年 『時間色のリリィ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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