- Amazon.co.jp ・本 (546ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062180269
作品紹介・あらすじ
若者に人気の町・幸福寺にある本屋さん「アロワナ書店」。地域密着型のこの書店で、三代目・ハッコウは名前ばかりの店長となった。その頃、ハッコウのいとこの昼田は、六本木ヒルズのIT企業に勤めていた。店内でぶらぶらするだけのハッコウと、店から距離をおいて会社勤めをする昼田だったが、書店の危機に際し、二人でゆっくり立ち上がる。
感想・レビュー・書評
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脇役として役割を全うしたいと考えている主人公、昼田くんは自分はこういう人間だと決めたがっていると感じた。
自分は何も期待していないんだとか、自分は穏やかに日々を過ごせればいいんだとか、そんなようなことを信じ込もうとしているんだと思った。
だから昼田くんの語りには「こうありたい」「こう考えたい」という願望がたくさん混ざっていて、途中少しいらっとしてしまったりした。
それはきっと私にもそういうところがあるからだ。
昼田くんにとって怖いのは自分が無価値だと感じることなのだと思う。
だからハッコウが自分以外の人と交流することにイライラするし、好きな人には好きと言えないし、銀次を受け入れてしまった。
でも自分は達観しているんだと思いたがっていることで苦しんでいるんじゃないか。
昼田くんにとっての家族、社会、町、仕事、書店、未来、過去、他人、自分のことが、昼田くんの言葉で語られている。
日々の揺れもそのままに。
彼の理想も混ぜたまま。
言葉にしない思考の混沌がかなり再現されていると思った。
当たり前のことだけど、他人の思考はしっくりしない。
だから居心地が悪かった。
見たくない自分が少し混じっていたことも理由の一つかもしれない。
読み終わってから表紙の写真がアロワナ書店になっていることに気付いた。
ブックカバーがとても可愛い。
私もアロワナ書店で本を買いたくなった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2015年に上下の文庫本で購入。積読本でした。
多分名古屋に住んでた時に購入した記憶です。苦笑
約8年の時を経て、読みました。
昔、大好き過ぎて大事に取っておいた「指先からソーダ」
ナオコーラさんのエッセイ。
もったいなくて取っておいたけど、
読んだ時には感じ方が変わってしまった気がして、
読みたい時に読めばよかったと後悔したことがあり。
今回の本も同じだったらどうしようと、少し不安でした。
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働くことは「役割」を果たすことだと思っていた。
でも、それだけじゃないのかもしれない。
家族じゃない人と、
家族のように
繋がれるだろうか。
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共に生きることは、小さな関係にとどまることじゃない。
「町の本屋さん」のオレにできることはなんだろう。
オレはこの街が好きだ。
この街でずっと生きていこう。
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家族、仕事、生活、繋がり、血縁、愛。
社会、政治、街、書店。
すごく狭い話のようで、遠くて掴めないような。
町の本屋さんの行く末。
大震災、政権交代。
ふわっとしているようで、地に足をつける。
文化を繋いでいくこと。
昼田はハッコウの両親に育てられる。
昼田は、父親を知らない。
アロワナ書店を舞台に、
家族や繋がり、生きていくことについて描かれている。
とかいうと、
全く魅力的じゃないし、
なんて言うか、
あらすじでは書き表せないんだと思うのです。苦笑
絶妙なんです。
所々の会話や文のなかに、
きゅっと胸をつかれるような言葉があったり、
なぜか泣きたくなるような気持ちがあったり。
日常のなかの時間や高ぶりのなかで、
暗転するようにバッサリ途切れて、
別の日、みたいな物語の展開も良いのです。
あ、ここから先の会話気になるのに…!と思うけど、
日常のトーンに戻るから、
あの展開は幻?と思っていると、
淡々と葛藤が語られるから、
あ、夢じゃなかったのか、と思ったり。苦笑
アロワナの七不思議とか。笑
うーん、なんか言葉にしにくい。苦笑
私の中に、昔の私が残ってたことがわかった一冊です。
それが嬉しくて。ちょっと悲しかったりもして。
ナオコーラさんの本に救われた気がするんです。
読書ってすごいなあ、と思わせてくれた一冊です。 -
表紙と舞台が本屋さんであることに惹かれて山崎ナオコーラ作品を初めて手に取りました。最初は冗長に感じてしまったりもしたのですが、するすると物語に引き込まれていくとそれがたくさんの登場人物をふわりと描き上げ読み手に沁みこませていく手腕なのかなと思います。500頁以上に本当にたくさんのテーマが詰まっています。あまり好きでない言葉がいくつか使われていることは気になりましたが、それを差し引いてもこの独特の熱すぎないけれど一生懸命な優しい雰囲気とストーリーを楽しめました。読後改めて装丁の美しさに惚れ惚れしました。
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ドラマチックなところはなく、取り立てて強調される人物がいるわけでもなく、ちょっと風変わりではあるものの、わりとどうってことない話。だけど、ものすごい独特の空気感がある。家族をつくりたいんじゃない、社会をつくりたいんだ…っていうハッコウの言葉、それに共感する昼田、そういうのがいいな…。本屋さんのお仕事が色々描かれていて、それも面白い。何とも不思議な読了感の良さがあるなぁ。脱力しながら少し興奮。。
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26:ナオコーラさんの本は合う合わないが大きいけど、「この世は二人組ではできあがらない」以来の大当たり。よく「登場人物のモラトリアムっぷりと自分大好きな感じが見ていられない」みたいなレビューを見かけるけど、私は自分自身がモラトリアムどっぷりだし、自分大好きだし、波長が合うのかも。
シンプルな言葉で、はっとするようなことを表現したり、当たり前だと思っていたことが当たり前なんかじゃないと気づいたり。登場人物にとっての小さな、きらめく発見に彩られた日々は、ホワイトバランスを強めに補正したみたいにフワフワしていて眩しくて(こういうところが「地に足がついてない」と言われる所以?)、こそばゆい。
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山崎ナオコーラはいつもどうしようもないくらいの悲しみがほんの一瞬だけやってくるからそこが好きです
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町の本屋さんはほんとうに大変なんだと思う。
本屋のない町ってのがあるくらいだから。
そういや、昔は家の近所にも小さな本屋さんがあったのに、なくなってしまったなぁ。
大型本屋があちらこちらにできると、大量の本の前で悩んでみたいからどうしても大型書店に行ってしまったり。
現在のように田舎暮らしになると、本屋まで遠いし簡単なインターネットでの注文で済ませてしまう。
アロワナ書店のように個性的で居心地のいい本屋が近くにあれば通うのに……。
品揃えというより個性の時代かも!? -
どっかでみたことがあるような設定だな、と思っていたら、かつて通っていた書店が舞台となっていた。
所々、山場となるシーンがえらくあっさりと描かれており、「ゆるゆるとした」日常風景は内面描写も含め、しっかりと描かれている。
物語というより、随筆に近いかもしれない。
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#虹色の鱗浮かんで本の旅ふわっと決まる社会をつくる